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5人で世界を渡ります。  作者: 亜莉種
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選択8 暑い時は暑いんです

少女の額から一粒の雫が落ちる。

しかしそれは地面に染みることなく落ちた途端にジューと音を立てて蒸発してしまった。

周りには炎が所々に燃え盛り、岩は火傷しそうな程に熱を帯びていた。

マグマがチラッと見え此処が火山である事を裏付けていた。

リズ一行はあれからまた歩き続けようやく火の山のふもとまでやって来た。

最初こそ木が生えていたが次第に空気も熱くなり植物も生えぬ岩だらけの道になっていた。

しかも、上に行くに連れ色も灰色から赤色に変わり凸凹だった道も熱に溶かされ平らな道が多くなった。

だが、大きな岩は溶けずそのままの形で残り道を塞いでいたためリズ一行はそれを避けながら進んでいた。


「あづいー」

「鎧着けてるからね」


暑いと言ったリズには確かに少しではあるが鎧が着いていてそれは周りの熱に同調して火傷程では無いが熱を帯びていた。

それは同じく鎧を着けてるニーチェにも言えたことで先程から一言も喋らず俯いていた。

リズの言葉を拾ったワッチは魔女であるため鎧を着けていない分少しは楽だった。


「ねぇ、こっちにもいるよ」


ノンの示す先にはナイがいた。

しかしニーチェと一緒で喋らずどうしたのかと顔を覗き込むと目が死んでいた。

鎧を着けて無いナイでも全身を包むようなローブを着ているためそれが熱を閉じ込め服の中は多分サウナ状態であろう。


「此処で引き返した方がいいかな」


ナイの様子に此処に居る事は危険だと判断したワッチは引き返す事を提案した。

確かに随分と登ったがまだ頂上は見えずただでさえ酸素が薄いのに燃えているせいでもっと薄くなっていた。

確かに危険だと思いワッチの提案に皆が賛同した。


「折角ドラゴンに逢えると思ったのにな」


そう言ったリズは近くにあった岩に飛び乗り大声でドラゴンーと叫ぶ。

それは辺りに響くだけで勿論返事があるわけがない。

何の収穫が無いまま帰るのかと思ったがそうでもない。

火の山に来てリズ一行には気付いた事が一つあった。

それは、さっきのリズの様に普通なら一つのジャンプで乗る事が不可能な岩に飛び乗ったり、この山を登る時も赤い土地に入る前まで誰も息切れを起こさなかった事だ。

これらを推測すると現実世界より身体能力が二倍以上になっている事を考えた方が自然だ。

そのお陰で長時間火の山にいることができた。


「まぁドラゴンは噂だったんだよ。帰ろう」



ノンがナイの背中を押して引き返して行く。

リズは頂上があるであろう方を名残惜しく見ると岩から降りようとした。

その時…


ドゴォォォォン


とても大きな音が聴こえると地面が揺れ、小さな石がカラカラと転がる。

全員が最初地震かと思ったが地響きは一定のリズムでどんどん近づいていた。

そしてそれは目の前にやって来た。


ドゴォォン


リズ達の前で最後の地響きが止まる。

辺り一面に灰色の砂埃が舞い上がりそのシルエットだけが見えた。

しかし、そのシルエットを見れば誰もがその場で固まるであろう。

煙が徐々に晴れて行き現れた巨大な口からは牙が見え、口の隙間から白い煙がフゥーと音を立て出ていた。

体は赤く羽を持ち足の黒い爪が地面にめり込み、後ろの尻尾が振り降ろされるとドンッと地面に食い込みその衝撃で岩が粉々になって宙に舞う。

その姿を見てさっきまでの暑さも何処かに飛んで行ってしまったかのようだ。

その金色に輝く瞳に睨まれ誰一人として動けず息さえ忘れていた。


煙の中から現れた

巨大な姿は炎より赤く

黄金は何を見る



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