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思い描く(ジャンル:ショートショート)
思い描く
「ねー。現実と子供のころに思い描いていた未来って違うと思わない?」
友人が急に言い出す。
「なんだ、急に。」
「これ。」
友人が差し出したハガキには、子供の写真。
「三人目が生まれました。いいじゃない、この少子化時代に三人なんてえらいわー。」
「そうじゃなくて。いや、それはそうなんだけど。あたしもさー。子供の一人くらいいる予定だったんだけどなぁ。」
「別に今からでも遅くないでしょ。」
それには答えず友人は聞いた。
「ねぇ。子供のころの将来の夢って何だった?」
「私?おばあちゃんになって縁側でお茶を飲む。」
「……子供のころ、思い描いていた未来、それ?」
「いいじゃない!日の当たる縁側でゆっくりお茶!何が悪いのよ。」
「いや。悪くないケド。」
「けど、なによ?」
「もうちょっと夢のある未来をさー。」
「どこに夢がないのよ!」
私と友人の話は続いた。
思い描く未来は違えど、思い描ける時間があるうちはやっぱり幸せなのだと思う。




