弱肉強食(ジャンル:ショートショート)
弱肉強食
「あー。にげてー、あー食べられたぁ。だめじゃんねぇ。」
テレビに向かって友人が嘆く。アフリカの撮影らしい。
「なにが?」
「シカがライオンに食べられちゃった。やっぱり肉食が強いんだろうなぁ。」
「いや?関係ないと思うよ。」
「なにが?」
「肉食が強いって話。」
「なんで?草食同士なら食べられないじゃん。」
私はため息をついた。
「草にだって限界ってもんがあるんだから、それが減ったら同然草食同士で草をめぐって争うわよ。」
「じゃあ、最強は草?」
私は首を振った。
「草だって、太陽と水分をめぐって根っこで争っているかもよ。こっそり絶滅しているのもあるんじゃない?人に発見されてないものあるだろうし、分類されていないのもあるだろうし。」
「じゃあ、最強はなに?」
「だから、最強も最弱もないの。食べたり、食べられたりしながらクルクル回るの。面倒なのはこっちよ。」
「こっち?」
「私たちは基本的には食べられたりしないでしょ。土地の面積的に火葬が多いから、草の栄養にさえなるかどうかもわからないし。」
「最強っていうより、邪魔者?」
「しかも、雑食。」
「役に立たないのに、それなりに力があるって、迷惑だね。」
「でしょ?」
私はゆっくりお茶を飲んだ。




