7/81
おもい(ジャンル:ショートショート)
おもい
「ちょっとやめてよ!」
なにやら、洗面台のほうから叫び声がする。
しかし、僕はほっておく。最近のいつものことだ。
彼女は悲しそうに、その部屋から出てきた。
「重くなってた。」
その言葉に僕は嬉しくなる。
といっても、彼女にはそんなことは言わないけれど。
顔にも出さないように必死だ。
「いいじゃないか。」
「戻らなったらどうしよう?ずっとこのままなら?」
僕は彼女を抱きしめた。
「大丈夫、このままなんてことはないから。もしも太っても好きだよ。」
彼女はそれで落ち着いてきたのか、ほっと息をついた。
「知ってる、順調ってことよね。」
「そうだね。」
僕は大きくなった彼女のお腹をなでる。
「楽しみよね。」
「もちろん。」
僕はにっこりと、彼女に微笑んだ。