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フェイクとダウト(ジャンル:ショートショート)
フェイクとダウト
「ダウトって和製英語?」
「いや、普通に英語だけど?ダウト!」
「ああああ!」
友人が叫ぶ。カードをめくって、私が勝つ。
「ううう。嘘には向いていないのよ。」
「嘘はついてはいけません。」
私は友人が放り出したカードを片付けながら言った。彼女はこのゲームになぜか弱い。
「お前なんか嫌いだー。」
「だから、嘘はいけません。」
「嘘かー。あれ、フェイクは和製英語?」
「ちょっと、なんで急にフェイク?」
「あんなところに絵があるから。」
友人の指した方向を見る。
「あれはホンモノ。」
「ホンモノ?!高いの?」
友人が目を光らせる。
「父ちゃん、オリジナル。」
「ちょっと!嘘はダメってさっき言わなかった?」
「人にとってフェイクでも私には、オリジナルよ。父ちゃんの名前もあるしね。値段の問題じゃないのよ。」
「思い出の品かぁ。」
「ちょっと!人の父ちゃん、亡くなったみたいに言わないでよ。」
私は苦笑した。




