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月と太陽(ジャンル:ショートショート)
月と太陽
「ねぇ!月のように美しいって褒めてる?」
友人がいきなり聞く。
「ありえなくない?女性を褒めるって普通は太陽だとか、花だとかにたとえない?」
「ナンパされたの?外国人に。」
私は冷ややかに、お茶を飲んだ。
「な、なんでよ。たしかに、ちょっと日本語が怪しかったけど。」
「じゃあ、暑い国の人だね。太陽は暑すぎるから、褒める時は月を使う。」
「そっか、褒めてたのか。」
友人は目をきらりとさせる。
「ところで、月は別に冷たくないからね。」
「え?」
「星の温度って知ってる?」
「あ、えーと、用を思い出したの!私は、これで!」
友人はそそくさと去っていく。私は、にやりと笑った。これで、しばらくは静かに過ごせそうだ。




