迷路(ジャンル:ショートショート)
迷路
「迷路に行ったなぁ……。」
酒の席とはいえ、友人の言葉に私は目を丸くする。
「なによ、急に。迷路って、あれでしょ?新聞とかに載っている線を繋ぐと絵が見えるっていうあれでしょ。」
「あれも迷路だけど、歩くほう!」
「そんなもんがいまどき、どこにあるのよ?」
「だから、行ったなぁ、って過去形にしたじゃない。」
「なんで今になって昔のことを思い出したのよ。しかも迷路!」
「行きたいなぁと思って。探したんだけど、あるのは小さい子供向けか、逆にショーみたいな、怖い迷宮とかなんだもん。」
「探したんだ。で、なんで迷宮?」
「あれってさ。迷っても、全部行き止まりってこと、ないんだよね。」
「逃げ道があるってこと?」
「ゴールがあるってこと!」
「ああ。」
私はため息をついた。
「あたしも、ゴールが欲しい。」
「そんなものはない!昇進にも結婚にも人生にもそんなものはない!まぁ、あるとしたらスポーツくらいかな?迷路抜けたら、次の迷路が待ってるもんよ。今日の企画でゴールが見えた。そしたら、次の企画が始まる。それを繰り返してるんだから、あきらめな。ほら、帰るよ。」
私は断言した。そして言い放つ。
「さっさと帰って明日の仕事に備えな!」




