ドッペルゲンガー(ジャンル:オチありホラー?)
ドッペルゲンガー
彼女がホラー小説を読んでいる。
僕はホラーの怖さは全く理解できない。どうしてわざわざ怖いものを読まなくてはならないのか。怖いものは避けるべきだ、というのが信条だ。
「ドッペルゲンガーって知ってる?」
「知らん。」
正直な所、興味もない。
「あのね、自分とそっくりな人が、基本無言で自分と関係ある場所で歩いたり、動いたりしてるんだって。でね?自分がそれを見たら死ぬんだって。怖くない?」
「へぇ……。」
僕はぼんやりそれを聞きながら、考えていると、あるキャラクターが浮かんできた。
「それってさ、みっきぃ……。」
「言っちゃだめ!あれは、世界で一匹しかいないの!一体とかじゃないのよ?一匹だけなの!世界に散らばっていても、一匹なの!」
彼女の無言の圧力に負けた。
「わかったよ。じゃあ、鏡でも持ち歩くとかは?」
「鏡?」
「そう。見て死ぬのはこっちだけとは限らないんだろう?向こうにも自分の顔を見せたら消える可能性はあるんじゃないか?」
「私に言われば、ドッペルゲンガーより普段から鏡を外に向けて、外を歩く人の方が怖いんだけど。」
「僕に言わせれば、ドッペルゲンガーについて議論しているカップルはかなり奇妙だと思うけどね。」
彼女はゆっくりと本を置いた。
「確かに、そうかも。幻より本人のほうがいいもんね。」
どこがどういいのかはわからないが、彼女のキスに僕は気を取られて気が付かなかった。僕の後ろに大きな鏡があることに。