距離(ジャンル:恋愛)
距離
教室の昼休み、彼女が言った。
「あたし、年上が好きなんだよね。」
彼女の恋愛の話に僕が言い返す。
「待った!男的に自分の努力でどうにもならないことで断られるのは嫌。」
「どういうこと?」
「髪が薄い、それが嫌ならカツラとか方法がある。デブが嫌なら痩せるとかさ。だけど、身長、年齢、血液型は自分でどうにもできないでしょ。それで断られてもなぁ……。」
「血液型……まぁ、確かに。でも、こう、落ち着いた人っていうか……。」
「それ、年齢は関係ないだろ?だって、同じ十六才でも女性は結婚できるけど、男はできないじゃないか。つまり、年齢は関係ないってことだな。」
「そっか。」
素直な所が彼女のいいところだ。
「身長も遺伝が大きいしね。」
僕はそんなに大きくない両親を思い浮かべる。
「そうねぇ。じゃ、年上って思えるくらい落ち着いた人が好きっていうならいいの?」
「いいんじゃないか?役に立たないマンガなんか読まず、アニメもついていけない、ゲームは子供の遊びだろって言って、資格の本とか読んでいるような男。」
彼女が顔をしかめた。
「なんか、嫌な言い方。」
「じゃあ、そっちの考える落ち着いた男ってどんなのだよ?」
「うーん。ハンサムで、オシャレで、美味しいレストランとかお酒とか知ってて、話も楽しい?」
「まず、ハンサムは主観。しかもみんながハンサムって思う奴は、向こうが女を選ぶ権利があるの。オシャレってことは、服が個性的か高いかだろ?オシャレって自分で思うってことは服が好き、服が大量にあるか、ナルシストかどっちかだな。美味しいレストランを知ってるってことは他の誰とあっちこっち食べ歩いているってことか、高いかだろ?酒がうまいってことを知ってるってことはたくさん飲んでいる酒飲みか、高いかだろ?話が楽しいってことは、たくさんの練習をしているってことだよな?ほかの女と。」
僕は一気に言う。
「う。……じゃ、じゃあ、あんたの理想の女性は?」
「ん?男の理想はいつだって、清楚な大和撫子か、小悪魔的ナイスボディなフジコちゃんに決まってるだろ?」
僕はしれっという。
「う。せ、清楚に見えてもそうじゃない子もいるもん。ナイスバディだって下着とかで作れるもん!」
「あー。男の夢を壊すなー。」
「……ねぇ。個人的な理想の女性ってどんな人?」
「個人的に?そうだなぁ。ま、少なくとも、外見で判断しないでくれる人がいいな。そういうのは難しいけど、難しいのをさらりとこなせるのがいいかもねぇ。」
「ふーん。」
「あとは笑顔。」
「笑顔?」
「そう。人になつかなさそうな猫が自分にだけすり寄ってくる、みたいに、自分にだけ特別な笑顔をしてくれたら十分幸せだね。」
「単純!」
「男なんて、そんなもんですよー。」
僕はにっこり笑って腕時計を見る。
「さて、昼、終わり。教室戻ろうか。」
「うん。」
僕らは歩き出した。
※※ ※
彼女(笑顔?特別な笑顔ってどうすりゃあ、いいのよ?)
僕 (落ち着いた人ねぇ。盆栽やってる爺さんしか浮かばないけど、なぁ。)
彼女(清楚か、ナイスバディ……ナイスバディは無理だから清楚、清楚…って、どんなの?)
彼女はこっそり彼を見た。彼は、さくさく歩いて教室にも向かって歩く。
彼女(あたし、七月生まれだから年下なんだけどな。落ち着いた人って言い方がわかりにくいかな?なんて言えばいい?さわやかな……主観って言われそうだし。)
僕 (しかし、ナイスバディは下着で作れるのか。脱がせてみないとわからないってことか。そら、楽しみだな。)
※※ ※
「なに、笑ってるの?」
「うん?清楚な格好で、中身が小悪魔な感じが最高かなって。」
「もう!最低!」
バシッと彼女が僕の腕をたたく。結構痛い。
「男なんて、みんな、そうだよ。」
僕はまた、にっこり笑った。




