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強さ(ジャンル:ショートショート)

 強さ


「おばちゃんは、誰は強いと思う?」

「なんの話?」

「スーパーマン!」

「違うよ、レッドレンジャーだよ。」

「ええ?忍者だよ。」

子供たちは誰も私の問いには答えずに、ああでもない、こうでもないと議論している。私は困って、彼女の母親でもある友人の真希を見る。

「何の話?」

「なんかねー、幼稚園で誰が一番強いかって話らしいよ。」

「強いねー。それは、見た目的に?それか肉体的な話かな?精神的な話かな?金銭的な話かな?それとも強度的にかな?耐震的に?能力的なのも含まれるのか……。」

「いやいや、子供の話に現実を持ち出さないの。」

「わかってるけど、また抽象的な話だわ。強いって……。うーん。昔はやっぱりガキ大将が強くて、雷親父が強くて、先生やら政治家やらが強かったんでしょうねぇ。」

「そうねぇ。いまじゃ、モンスターペアレントやら、クレームモンスターやらが強いんでしょうねぇ。」

「うーん。それは強い、のか……。強さの定義から議論が必要かもね。ところで、真希がこの人、強いって思う人は?」

「隣のおばあちゃん。」

「おばあちゃん?」

「そーよ、健康なのに体が弱いって言いながら、娘さんに荷物を運ばせてるの。」

「いい、娘さんじゃん。」

「って、思わせたいの。」

「……はい?」

「隣のおばあちゃんはね、賢いのよ。空手師範なんだけど、体が弱いってふりしながら、若い人たちに甘えて、上手に利用しながら、なおかつ末の娘さんの評価も上げて、生きてるの。」

「マジ?」

「マジ。まぁねぇ、一人でお子さんを四人も育て上げたんだから、強くもなるわよ。」

「よ、四人?すごいね。旦那さんは?」

「最初の旦那さんは事故、次の旦那さんは病気で亡くなったんだって。まぁ、女性は弱くても母は強しよ。しかも、華道もできるし着付けも出来るし算盤だって早いのよ。」

「そらー、強いわ。最強クラス!」

「でしょ?で、彼女の分けてくれた漬物、もってくでしょ?美味しいのよ、これ!」

「もらうわ。」


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