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桜（その1：ジャンル：ショートショート）
桜（その1）
「きれいだねぇ。」
友人は言う。
「そう？」
私はそっけなく言う。花など、なんの役にも立たない。
「美しいねぇ。舞う姿が。」
友人が続ける。
「よかったねぇ。」
私は頷く。花など、なんの意味もない。
「来年も見れるかな？」
友人はぽつりと聞いた。
「見れない。」
「そうか。」
そうして、私は友人と別れた。
涙などなんの役にもたたない。
ここは南国。
桜などない。
ずっと常夏。
繰り返されるのは、暑い日々とたまのスコール。
一応、雨季と乾季があるそうだが。
そんな日々の中、ハガキが届いた。
「見せてあげたい。」
その一言。裏にはきれいな桜と笑う友人の顔。
再来年は桜の季節に帰ろう。
