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それから。


あれから2人は少女捜索へ出て、難なくその任を達成した。彼女達は、保護施設にいると踏み、夜な夜なこっそりと連れ出したのだ。千李が例の術を使ったようで、しばらくすると、こちらも騒ぎにならなくなっていて、彼女達が居たという痕跡もなくなっていた。



今は守り神として学校の平和を守っている。また、幸樹の神としての能力は、人に目撃される能力だ。元々が人だったための能力だろう。霊感があった幸樹のような人でなくても、目撃できるようにする。そんな能力だった。これは、他の神に使うこともできるようだ。


落ち着いてから、幸樹は、一度自分の家に帰ってみた。いつもと変わらず家族がいた。父、母、妹・・・。だが、自分の姿だけがない。それに誰も自分がいない事に疑問や不安を感じている様子はない。


もちろん、千李が告げたように、幸樹がここにいた記録はない。だから誰も幸樹を知る者はいないのだ。それをまた思い知った。その幸せそうな家族を見ていると、多少は辛い。だがしかし、幸樹は充実感を感じている。花子とともに校舎を守り、骸骨や二宮金次郎像ら七不思議たちと談笑したりする毎日。


幸樹にとっての幸福はそれだった。彼は満たされていた。本当は、千李に言って家族の記憶だけ戻してもらおうかとも思ったが、やはりやめた。恐らく、千李に告げれば快く戻してもらえるだろう。しかし、人に甘えてはならないと幸樹はぐっと堪えた。


(自分で選んだ道だ・・・)


神になるということはそういうことを背負っていかなければならないと幸樹は考えた。もっとも、花子がいるだけで充分と感じていたから、その考えを打ち消す事ができた。彼の心に花子は大きく関わっていた。


世界は、呆れるほどに平和だった。もちろん、事件やらなにやらはあるが、神が出動せねばならない状況にはなっていないので、平和と言えるだろう。神だって平和ボケするほどに平和なのだ。平和は退屈という者もいるが、やはり平和が一番。何もないのが一番だ。


また、花子だけでなく、青蘭や鈴も同じ学校に配属となった。神たちはまだまだ余るほどいるので、一つの学校に何人割いてもなんとかなるのだそうだ。千李の配分なので、恐らく中のいいメンバーで楽しくやって欲しいというメッセージなのかもしれない。


夏は青蘭と夜のプールで泳ぎの競争をしたり、夕方、鈴と学校に来た新しい本について語りあったり、夜は花子と屋上で星空を見上げたり。とても楽しい毎日だ。また、花子と星空を見上げているときに気がついたのだが、いつぞやの幸樹と花子との戦闘で壊れたフェンスは元通りになっていた。


だが、新しく張り替えたわけではなさそうなので、恐らく、千李が幸樹を神にした禁忌の術を使った時に気がついて、歴史を変えて直したのだろう。もちろん、彼らが壊したことは知る由もないはずなので、恐らく千李の子供達の安全を考えての気遣いだろう。もっとも、幸樹がいなくなるということは、フェンスも壊れなかったと言う事だから、それで修正しただけの可能性もあるが、千李の性格からして気遣いの可能性が高かった。


新しい神皇帝は思いやりのある人になったなぁ、と幸樹はしみじみ思った。


前神皇帝が人情に厚い人物なら、今度の神皇帝は慈悲深い人物と言っていいだろう。まさに平和の象徴だ。



さて、彼がここへ来た事で、この学校は以前より活気が出たようだった。子供達も心なしか以前より生き生きしているように見えた。それは、小中高一貫のこの私立で、どの学年にも言えることだった。


七不思議は相変わらず健在だ。


動き出す骸骨。校庭を走る二宮金次郎像。夜中に鳴り出すピアノ。真夜中のコンピュータ室。体育館の夜中のバスケ大会。



そして、トイレの花子さん。


それに今はもう一つ加わった。


トイレの太郎さんだ。


これは、定番の七不思議として、しばしば花子さんと対になって流れる噂だ。花子さんより知名度は低いが、太郎さんがある学校も少なくはない。花子さんとの違いは性別だけなのだが、恐らくその所為で知名度が低いのだろう。


さて、なぜこの噂が流れ始めたかというと・・・。


「太郎さーん!遊ぼー!」

「今行くよ~」


放課後のトイレから聞こえる子供達の賑やかな声。


その声に呼ばれて出てきたのは、幸樹だった。


幸樹は、花子との出会いの場所であり、花子の住処でもあるトイレに住む事に決めたのだ。(もちろん男子トイレだが)


花子は、私に合わせてこんな汚いところにいなくてもいいのに、と幸樹に言ったが、幸樹は、花子さんの近くにいたいから、と頑なに首を縦に振らなかった。花子は、それなら別のところに行く、と言い出したが、幸樹はここにいて欲しい、と言ったのだ。それで今この状況にいたる。


そして、トイレの太郎さんとして花子とともに七不思議になろうと考えたのだ。


また、花子のほうも、人見知りが少し治ってきたようで、幸樹とともに、子供たちの前に姿を現すことが多くなった。もちろん、これは幸樹の影響が大きいであろうが。現に、花子単体で子供達と遊ぶ事は殆ど無い。幸樹が遊びに行くときだとか、幸樹に呼ばれてだとかが多かった。


2人は七不思議として子供達を見守っている。そして、子供達にとってとても身近に感じられる七不思議であった。なので、2人に対する話題は尽きる事がなかった。太郎さんの方が人間が大好きで、花子さんは人間が大嫌い、だとか、勘が鋭い女子生徒の中には2人が恋人同士なのでは、と踏んでいる者もいる。当たらずとも遠からず、という所である。


十分恋仲としてくっついていいはずの二人だったが、2人とも奥手なので、言い出せずにいるのだ。


しかし、大切な信頼の置ける相棒(パートナー)として、恋人以上に深く強い絆で結ばれていた。


幸樹も花子も、お互い今の関係に満足しているので、それでよしとしていた。



今日も学校は平和である。


「花子さん、子供達と遊ぼうよ」


幸樹が、女子トイレにひょこっと顔を出して呼ぶ。花子はすかさず出てきた。


「そうね。皆と遊ぶのも、悪くないかも」


笑顔でそう答えた。




いつもと変わらない、眩しくて慈悲深い、そしてどこか懐かしい笑顔だった。

無事完結しました。最初はどうなるかひやひやしましたが、なんとか終わりほっとしています。見てくださった方。評価を入れてくださった方。ブックマークしてくださった方。本当にありがとうございました!

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