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屋上の花子さんの怪

屋上に鎌を持って対峙している人影が二人。


一人は白い鎌。また一人は黒い鎌。


(俺は鎌の扱いに慣れてるわけじゃない・・・どう考えても不利だ。どうする・・・?)


白い鎌を構える幸樹はそのまま動けないでいた。


対する花子は相手の出方を窺っているようだ。


大鎌というのは間合いが大切だ。それをつかむにはとにかく慣れるしかない。花子は昔から鎌を使ってきたのだから幸樹より有利な事は間違いないだろう。


(あれに斬られたら、俺どうなるんだろうな・・・)



緊張のため、笑みすら浮かんでしまった幸樹に、花子が戸惑いを見せた。


「あなたは、何?私に、何の用なの?」

「俺は、花子さんを元に戻しに来ただけだよ」


そうだ。元に、戻しに来たんだ。こんなところで負けてたまるか!



幸樹は意を決して飛び込んでいった。


大上段に斬りかかる。この鎌(白い鎌)で斬っても死ぬわけじゃないとわかっているため躊躇は無い。


鎌と鎌とぶつかる音がする。


花子は幸樹の攻撃をバックステップでかわした。そして、地を蹴って幸樹の胴を薙ぎにかかる。


幸樹は慌てて柄を使って受ける。が___。


「ッ・・・!」


肩を斬られた。その瞬間、叫びや、怒号、悲鳴、さまざまな物が体中を駆け巡る。


斬られた跡は、もう無い。恐らく、跡が残らなかったのは数珠が守ってくれたおかげだろう。


(そういう、ことか・・・!)


白い鎌が浄化する鎌だとしたら、黒い鎌はさしずめ怨念を注ぐ鎌といったところか。


この状態で戦わなければいけないのはかなり辛い。しかし。


次の瞬間、琥珀色の光が、幸樹を包み込む。怨念はもう、幸樹の体に残っていなかった。


輝きの元は幸樹の数珠だった。鈴からもらったものだ。なんて万能なんだろう、と幸樹は思った。


その様子に、花子は驚愕しているようだった。


「あなたは、本当になんなの・・・?今までの相手と違う・・・」


今まで?今までもこうやって戦った事があるのだろうか。七不思議では記憶を消すだけだったはずだ。


しかし、花子は幸樹に考える間を与えず、連続攻撃を仕掛けてきた。


幸樹は下がって避ける。


「花子さん!思い出してよ!一緒に七不思議を元に戻しに行ったじゃないか!」


下がりながら、幸樹は花子に声をかけ続ける。


「知らない・・・あなたなんか!わからない!」


しかし、花子は聞く耳を持たない。


「なんでなんだよ・・・花子さん!」


_花子サン!_


「!・・・っ!」


花子の動きが鈍った。


(どういう、ことだ?思い出してくれてるのか?)


「花子さん!俺だよ!川原幸樹!三年生の時まで一緒にお話したりしてたじゃないか!」

「わから、ない・・・あなたは、知らない!」

「花子さんっ!!」


花子の鎌の攻撃を下がって避け続ける。しかし、次の瞬間、浮遊感に襲われる。


「え・・・?」


理由は簡単だ。もろくなってたフェンスが壊れたのだ。屋上の管理は意外と甘かったようだ。


そして、幸樹は屋上の外側に放り出される。


(ああ、俺、死ぬのか・・・)


花子さんを元に戻せなかったのが心残りだったなぁ・・・。


そうぼんやり考えていいると、上から声が聞こえる。


「こうき、くん・・・?」

「!花子さん・・・?」

「幸樹君ッ!!!」


ぎりぎりになって思い出してくれたのだ。花子は自らフェンスを飛び越えるとしっかりと、幸樹を空中でキャッチした。


「花子さん!思い出してくれたんだね・・・!」

「幸樹君・・・ごめんなさい、私・・・」

「もういいから。ありがとう・・・」


こうして、花子は元に戻った。

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