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守り神との対話

急に現れた青年。高校生くらいだろうか。長い青い髪を無造作に束ねた男だ。服はアラブの王子様のようなきらびやかな服装で、露出が多い。どこか、気だるそうな印象を受ける。それでいて横柄な態度であり、おおよそ、神々しさとは無縁な男だった。


「で、お前なんなの?人間のくせに、俺の気配がわかるなんてさ」


あくびをしながら、面倒くさそうに青年は幸樹に問うた。


「俺は、この学校の生徒の幸樹だ。あんた、今のここの守り神なんだろ?花子さんのこと、元に戻すのに協力して欲しいんだ」

「花子・・・ああ、龍蘭(リュウラン)のことか」


青年はふわりとプールサイドに降り立った。


「川原幸樹。龍蘭から話しは聞いてるよ。勇敢な宮司さん」

「龍蘭って・・・?」

「お前らが花子って呼んでるあいつのことだよ。守り神としての名前だ」


花子、花子と呼んできた幸樹には違和感がぬぐえない呼び方だった。もちろん神としての名前も花子だろうとは幸樹も思ってなかったが。だが、ちょっとかっこいいな、と思った幸樹だった。


「で、花子さんを元に戻すのに協力してくれるんですか?」


そう聞く幸樹に、青年は溜め息を一つ吐いた。


まて、何で溜め息を吐く!?吐きたいのはこっちだよ!と、幸樹は心の中でツッコミを入れる。


「まー、半分協力してやるよ」

「は、半分ってなんだよ!?」


思わず、声を荒げた幸樹に青年は悪びれも無く答える。


「半分は半分だよ。俺自身が龍蘭を元に戻すのは無理だ」


頼みの綱であった守り神が使えないとなり、幸樹は焦った。


「じゃあ、どうしろと・・・!」

「まぁ、そう慌てんなよ。ほれ、お前さんが欲しかったのはこいつじゃないのか?」


そう言った青年は、あるものを幸樹に投げてよこした。


「これは・・・鎌!」


真っ白な鎌。あのときの、花子が持っていたもののような。やはり、守り神はすべて持っているものなのだろうか。


「俺に出来るのはここまでだ。ま、せいぜい頑張るこったな」

「ありがとう・・・ございます」


心強いアイテムの入手に、幸樹はとても安心できた。本人が協力してくれないのは多少不安だが、それもいたしかたあるまい。そのまま屋上へ向かおうと踵を返す。


「ああ、ちょっと待った」


あの青年から呼び止められた。若干苛立ったが、相手は神だということを忘れていないので、一応敬語で返す。


「なんですか?」

「気ぃつけろよ。鎌があるからって安心するんじゃねぇ。俺がなんとかできない理由はあいつが強すぎるからだ。それを忘れるな」

「・・・わかりました」


こちらを気遣っての忠告が幸樹は意外に感じて、一瞬目を丸くしたが、意外としっかりした人だと思い直して、素直に忠告を受けた。



花子の強さは小学生のときに身にしみている。もちろんあれから随分経っているので、あのときより遥かに強くなっているだろう。それは幸樹とて、覚悟の上だった。


「それと。まだ不安だから図書室にいる(リン)って奴に会ってみろ。そいつは俺の補佐をしてくれてる神なんだが、青蘭(セイラン)から頼まれたって言えば協力してくれるとおもうぜ」


にっ、と笑って言う青年に、幸樹は冷静に返す。


「青蘭さんって言うんですね・・・もっと早く教えてくれてもよかったのに」


名乗らずずっと話を進めてきたのはある意味すごい。ツッコまなかった幸樹も幸樹だが。


「俺は、信用に足る奴じゃねえと名前は教えない主義なんだよ。ほら、行った行った」


青蘭は手で、しっしっと追い返すジェスチャーをする。


幸樹は、瞬間、ふと疑問が浮かんだ。


「てか、守り神でも止められないのに、何で人間の俺だけに行かせるんですか」


そう言うと、間隔を置いてから、青蘭が返す。


「・・・俺はできたてほやほやの神だから、宮司であるお前より力弱いの。だから、実はお前来てくれて結構助かってんだよね~」


けらけらと笑いながら言う青蘭に若干イラッときたが、幸樹はこらえた。また、一瞬間が開いた事に違和感を覚えたが、それどころではないと、言及するのは諦めた。


「はぁ・・・そうですか。とりあえず俺はもう行きます。またなんかあったら来ますから」

「おう。そうしてくれ~。あと鎌返せよ~」


へらへらと笑う、青蘭にイライラを募らせる。


「わかってますよ」


こんな守り神で大丈夫なのかと、心の中で溜め息を吐きながら図書室に向かう幸樹なのだった。




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