男子生徒Cの憂鬱
お金持ちの集まる全寮制男子高校、それがこの桜和学園の一般認識である。
権力者の子息が入る超進学校であるこの学園は少々特殊だ。
まず教師よりも生徒会の役員が権力を持っている。
一般性と特待生の食事や寮など生活スペースがきっぱり分かれてる……など。
上げればきりがない。
これも全てお金持ちが集まるがゆえ。
つまり、寄付金という名の格差である。
このせいで、特待生である人達は非常に肩身の狭い思いをしなくてはならない。
それでもここは一種のステータスになるため皆さんよく耐えてらっしゃる。
この学園に入学する特待生は皆頭の回転も良い子たちばかりだから特に問題もない。
このような学園に途中編入をするのはボンボンのバカ息子か、優秀な頭脳を持った帰国子弟ぐらいである。
何が言いたいのかというと……だ。
転入生が来たのだ。
ちなみに帰国子弟であり金持ちの子息でもあるという素晴らしい人材でAクラスに所属している。
しかも美形なので、娯楽の少ない此処では注目の的である。
美形・金持ち・優秀。
全てにおいてパーフェクトな転入生はトラブル吸引体質なようでよく問題を起こしている。
転入生が起こすわけではなく、彼を中心としてトラブルがまき散らされているのである。
迷惑な話だが本人には悪気が一切ないので責められない。
委員長は胃を痛めたのか青ざめた顔で笑っていたが。……あとで胃薬でもプレゼントしようか。
そんな転入生の寮の部屋は僕の部屋の隣で、転入生は一番奥の端っこの部屋にいる。
奥の端ということで、騒げばバレるし僕の反対側の部屋には怖い人がいるので、転入生の部屋に行きにくい為に今のところ目立った問題は起きていない。
風紀委員副委員長・僕・転入生という部屋割りで、副委員長と転入生は知り合いらしい。
知り合いというか幼馴染で、しかもそのことは秘密。
そしてもう一つ誰にも知られてはいけない秘密がある、らしい。
なぜ部外者の僕が知っているか?
そんなの簡単さ!
「お前は女なんだからもっと気を付けろ!」
「うるさいなぁっわかってるもん!誰にもバレてないからいいじゃん」
「男は狼なんだぞ、襲われたらどうする!?」
「何回も聞いたよ!」
……僕の部屋、壁薄いから隣の部屋の音超聞こえるんだよね。
お金持ち専用の寮だって言っても、僕の隣は元々物置予定の部屋だったのを急遽転入生用に準備したらしい。
ある程度の音なら聞こえないのだけど、彼らいちいち音量が大きいからさ。
会話全部しっかり聞き取れちゃうんだよねーハハハ。
―――――美形な転入生の正体は実は女でした―――――
なんて事を知ったって僕にはどうしようもないよっ!?
むしろ興味もないのになんで知っちゃったのさ僕!薄い壁の馬鹿!
ていうか僕女の子に身長もイケメン度も負けてる……の、ね。
転入生の正体を知ってしまった善良なるA組の男子生徒C。
こののち彼はなんとか転入生よりも男前な人間になろうと必死に努力して
A組の平凡王子(※雰囲気はイケメン)と呼ばれるようになるのはまた別のお話。
息抜きパート2。
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