事件発生(2)
七浦莉菜のいる二年C組は、三階建て校舎の一階にあった。数年前に新設されたばかりの校舎は、まだ汚れも少なく、新学期ともなると壁や床の白さが目に眩しいほどだった。
二年C組の前の廊下は、伊勢雅寿と同じことを考えたデリカシーのない生徒たちで溢れかえっていた。教師たちはというと、午後からの入学式のために職員会議を職員室で開いている様子だった。つまり階の違う二年C組を見張る教師はいないということだ。
「しょうもねえ奴らだな」
どうやら、伊勢雅寿自身は自分がしょうもねえ奴らの一員であることに気付いていないようだった。
「お前も充分しょうもないぞ」私ははっきり言ってやった。しかし、無駄だということは百も承知だ。
「ほらほら、しょうもねえ奴ら、どけどけ三年生のお通りだ」伊勢雅寿がしょうもねえ奴らの群れを蹴散らしながら進んでいく。どうやら教室の中に入る気らしい。
「おい、中に入るのはさすがに」
私が忠告した時には時すでに遅し。伊勢雅寿は教室の中に入っていた。もちろん私も。
二年C組は他のクラスの様子とあまり変わりなかった。生徒たちが各々でグループを作り、何かしら話し合っている。きっと七浦莉菜のことだろう。肝心の七浦莉菜は教室の隅でたくさんの生徒に城壁さながらに囲まれていた。そうしてしょうもねえ奴らから守っているのだということは、すぐに見当がついた。
「俺が来たぞ」伊勢雅寿自身はスーパーマンでも意識しているのかもしれないが、結局はただの野次馬だ。
「あれ、伊勢君? 何やってんの」
スーパーマン気取りの野次馬である伊勢雅寿を一番早く見つけたのは、私と同じクラスの福留玲華だった。
「だから来てやったんだって」
「別に伊勢君のことは誰も呼んでないし」福留玲華の視線が私の方にきた。「あ、志賀君がいるじゃん!」
「優成のことも呼んでなかっただろ」伊勢雅寿があからさまに不快感を示す。
「今呼んだ、今」福留玲華が飛び跳ねるようにしてこちらにやってくる。「志賀君が来たならもう安心だぞ」




