七浦莉菜の話(1)
ついに10話目を迎えました
しかし依然として評価のつかないままです
お手間をかけてしまい申し訳ありませんが
少しでもいいので、評価していただけると嬉しいです
入学式を終えた校舎には、ほとんど生徒がなかった。貴重な早めの帰宅とあって、我先にと帰路についていったのだ。
学習室には私と伊勢雅寿、福留玲華、そして七浦莉菜の四人が集まっていた。普段なら自主学習をする生徒で溢れている学習室も、入学式ということで、この四人以外誰もいなかった。
「あれ、伊勢君、やっぱり来たの」福留玲華が開口一番そう言った。
「来るに決まってるだろ。女の子の頼みとあれば、たとえ火の中水の中」伊勢雅寿は午後になってもヒーロー気取りは変わらない。
「だから、誰もあんたに頼んでないって」
「仲間は多い方が良いだろ」
福留玲華の後ろで七浦莉菜がクスクスと笑っている。七浦莉菜を落ち着かせるという面に関してだけ言えば、伊勢雅寿が来たのは正解なのかもしれない。
「いいから、とりあえず座ろうよ」私が着席を促すと、誰ともなく中央に置いてある大テーブルに座った。私と伊勢雅寿が並んで座り、その向かい側に七浦莉菜と福留玲華が座った。
正面に座った七浦莉菜を見て、私は改めて彼女の小柄さに気付く。私の身長が比較的に大きいことを考慮しても、かなり小さく見えた。
「さあ、早速だけどナナちゃん、あの日のことを二人に話してあげて。自分のペースで言いたくないことは言わなくていいから」
福留玲華の言葉に七浦莉菜が無言で頷く。
「そうそう、俺らがぜん......」
「伊勢君は黙ってて!」福留玲華が大きな声と手のひらで、伊勢雅寿の言葉を制す。彼は相当信用されていないようだ。
「えっと、じゃあ、話します」七浦莉菜が私のことをまっすぐに見つめた。私は結構信用されているのかもしれないと思い、少しだけ嬉しくなる。
「あれは、部活の、帰り道のことでした」
七浦莉菜の口調は丁寧で、言葉を小さく区切っていたが、一つ一つの言葉をしっかりと発音されており、言葉の強さのようなものを感じた。