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春の始まり

 私は8年間の義務教育の中でたくさんのことを学んだ。しかし、同級生に因縁をつけられた場合の対処法は恐らく学んでいない。

「お前な、調子乗ってんじゃねえぞ」

 春休みの校舎裏はもっと安全な場所だと思っていたのだが、どうやら違うようだ。

「おい、聞いてるか」

 同級生の又野健也が鼻がくっつくほど顔を寄せてくる。校舎裏の壁に押し付けられる形となっている私は、自分の置かれている状況を今一度考えるため、そして又野健也の鼻息から逃れるために顔を右上へ逸らした。

 水泳部の活動のために学校を訪れた私は、友人の伊勢雅寿とダラダラと校舎の周りを走っていたはずだった。あえて責任を押し付けるとしたら伊勢雅寿がトイレに行ったのが悪い。その瞬間、私は又野健也とその仲間たちに連れ去られたのだ。

「なあ、何で黙ってんの」又野健也の顔が、右上に逃げた私の顔を追いかけてくる。

「何でって、まず俺は調子になんか乗っていない」私は顔を逸らしたまま言った。

「乗ってないって、乗ってる奴はみんなそう言うんだって」

 じゃあ本当に乗ってない奴はどう言うのだ、という反論がすぐに浮かぶが、さすがにそれを今言える勇気はなかった。

「何で俺が調子に乗ってると思うんだ」

「色々だよ」

「色々って......」

 又野健也の答えはシンプルだった。しかし物事にはシンプルで良いものと悪い物がある。

「その色々が重要なのだ」そう言おうとした瞬間、頭の奥で閃光がはじけた。

 きっと世界中探しても、まずないであろう、不思議な春の始まりだった。

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