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第四話 事後処理

——翌日。


「さ~く~ら~だぁ!?!?」


協会の会議室に、荻野会長の怒声が響き渡る。


Sランクモンスターを単騎で討伐した英雄は、称賛されることもなく、ただ怒鳴られていた。


「まあまあ、会長。相手はSランクモンスターですよ。櫻田先輩だって、本気を出さなければ死んでいたかもしれないじゃないですか」


この部屋で唯一櫻田の味方をしている天内が、怒り狂う荻野会長を必死に宥めていた。


天内あまない俊也しゅんや

国内一位のSランクハンターで、櫻田の後輩だ。


ランキングでは抜かれたが、櫻田は気にしていない。

天内はSランクゲート専門。櫻田は雑多なゲートを広く担当——役割が違うだけだ。


そんな彼に慕われるのは嬉しいが、「なぜ俺なんかを」と少し後ろめたくも思っている。


「お前のせいで、いくらの損害が出たと思っている!」


荻野おぎの会長に関しては特に言うことはない。

強いて言うなら、現協会のトップであり一番の権力者だ。

一応ハンターではあるがそれほど強くない。あとうざい。


「いつまで俺をこき使えば気が済むんですか? もうハンターなんて辞めますよ」


「ふん、できもしないことを言ってどうするんだ」


「……」


櫻田がハンターを辞められない理由は三つ。


一つ。辞めた瞬間、住居を含む生活インフラが全て剥奪される。

二つ。契約期間を満了しなければ、給料は最低限の生活費のみ。

三つ。Sランクハンターは、法律で定年まで引退不可。


全くもって、クソみたいな制度だ。


だが、人々の命を守るという建前の前では、ハンター個人の人生など後回しにされる。

国としては、そうでもしなければハンターに辞められて困るのだろう。


こんな法律を考え、可決してくださる国会議員の方々には、感謝してもしきれない。

——だからこそ、あれほど高い給料をもらっているのだろう。


櫻田はそう思わずにはいられない。


「今回の損害はお前の給料の約3年分だぞ!わかっているのか!?」


今のハンターの給料は、高いには高い。

だが目が飛び出るほどではない。


櫻田クラスでも、年収は一億だ。


「そもそもですね、その損害っていうのは俺が食い止めてたもんでしょ。こっちは死にそうだったんだ。俺が死んだらそれこそ損害は増えるだろ」


分身を解除した理由が、助けてくれたあの子を助けたい気持ち4割、分身を消して楽したい気持ち6割だったことは黙っておく。

言わなければ誰も分からないことだからな。


「……まあいい、だったら早く分身をだせ」


「それは無理です」


「はあ!?ふざけんじゃねえぞ!!」


「いや無理なもんは無理なんです。俺の分身は一度破壊または解除されると一体につき三十分間分身を再出現できなくなるんです。解除した分身が約二百体で、あれから十八時間ぐらいたったんで、あと八十二時間くらいですかね」


会長の顔が茹蛸のように真っ赤に染まっている。

怒りで言葉が出ないのだろう。


だが櫻田は怒られることに、それほど苦痛を感じない。

逆に怒られることを喜んでいるふしがある。

これは櫻田がMなわけではなく、嫌いな相手にストレスを与えることで快感を感じているのだ。

櫻田はどちらかといえばS気質である。


「ということで、残りの有休も使わせてもらいますね」


相手の火に油を注ぐテクニックは、反省した素振りを見せないこと、他にも煽るのも効果的だ。

覚えておくといい。


会長が爆発する前に、天内が櫻田を部屋の外に連れて行く。


「櫻田さんついに休むんですか?みんないつ潰れるかって心配してたんですよ」


「”会長以外は”を言い忘れてるよ」


「会長だって心配してたんですよ。櫻田が潰れたらこの国はおしまいだって」


「そんな大げさな」


もちろん櫻田に国に大きく貢献しているという自負はある。

だが、自分がいなくなったくらいでこの国は終わらないとも思っている。

なぜなら、櫻田より二人も強いハンターがこの国にはいる。

自分がいなくなっても彼らの仕事が増えるだけだと、そう考えていた。



「そういえば」


二人きりになったタイミングで、櫻田は思い出す。


「あそこにいたAランクハンターの名前、何て言うんだ?」


「ああ、彼女ね」


天内は少し考える。


「たしか白石しらいし麗奈れなだったかな。面白いスキルを持っていたから、よく覚えてる」


「そうか」


聞いてみて思ったが、聞いてどうするんだという話だ。

まあ命の恩人だ。覚えておいて損はないだろう。


櫻田は意気揚々と協会を出ようとした——そのとき。


プルルルル……


天内の携帯が鳴る。(櫻田の携帯は叩き割ったため、もうない)


「会長? ……えっ、はい。そうですか」


天内は電話を切り、櫻田を見る。


「なんの電話だ?」


「ん〜」


天内は、意味ありげに笑う。


「外に出れば分かるよ」


不信感を抱きつつ協会を出ると——


「こんにちは!櫻田さん!」


そこには、さっき名前を聞いたばかりの白石麗奈がいた。

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