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第九話 討伐

「なにか作戦はあるか!?」


櫻田は、ドラゴンの攻撃を転がって避けながら叫ぶ。


「このまま応援が来るまで持ちこたえれば——」


「無理だ!」


櫻田は、ドラゴンを睨む。


「ドラゴンは、そろそろ我慢の限界らしい」


ドラゴンが、視線を逸らす。


——まずい。


倒せない相手に飽き、別の獲物を探し始めている。


「もし一般人に向かえば、被害は計り知れないぞ!」


「ど、どうするんですか!?」


「それを俺が聞いてるんだよ。麗奈のスキルでなんとかならないか?」


「私のスキルじゃ、当てられはしますが火力が足りないとおもいます」


「じゃあ、俺の攻撃を必中に出来たりするか?」


「……できると思います!」


「じゃあ、因果固定を使ってドラゴンの急所、逆鱗にこの分身を投げつけて倒す。それが作戦だ」


「む、無理ですよ!」


麗奈が叫ぶ。


「なんですかその不可能のオンパレード! そんなことしたら魔力切れで死んでしまいます!」


「大丈夫だ」


櫻田は、落ち着いた声で答える。


「人間は魔力切れなんかで死ぬようにできてない」


「本当ですか!?」


「そうさ、魔力切れで死んだ人はいない。せいぜい三日三晩寝たきりになるだけだ」


「ありがたい事実を教えてくれてありがとうございます!

ああ、もう!背は腹に代えられませんからね!!」


櫻田は分身を担ぎ上げる。


「準備はいいか!」


「はい!」


「行けええぇぇええ!」


全力で、投げつける。


——ヒュォォォォ!!


分身が、彗星のように空を駆ける。


櫻田だけの力では、こうはいかない。

因果固定が、乗っている。


そして——


ドラゴンの真横を、素通りした。


「……え?」


櫻田の間の抜けた声が漏れる。


「どどどどういうことだああああ!?」


櫻田は、麗奈の方を振り向く。


その顔には——驚き、呆れ、絶望、そして怒り。

とにかく負の感情のこもった眼差しが、麗奈を突き刺していた。


「ち、違うんですよ!」


麗奈が両手を振り弁明をする。


「私ちゃんとスキル使いましたよ!」


「じゃあなんで当たらない! 何を固定したんだ!?」


「私たちの勝利を、です」


「……は?」


櫻田は、一瞬理解できなかった。


「でも外れてるじゃねえか!!」


「でも、勝利は固定されてます!」


「どうやって!?」


「……分かりません」


「分からないのかよ!」


櫻田は、頭を抱える。


「なんでそっちを選んだ!? 『必中』じゃダメだったのか!?」


「そっちの方が、魔力消費が少なかったので……」


「……」


櫻田は、絶句した。


分身を空の彼方へ投げ飛ばしてどうやってドラゴンに勝つって言うんだ!


「クソッ……分身はどこ行った!?」


櫻田は、目を閉じ、分身に意識を集中させる。


意識を集中すれば、分身の位置が分かる。


「……あれ?」


この場所——


櫻田の顔が、驚愕に変わる。


「ハハハハハ!!」


櫻田は、笑い出した。


「そういうことか!」


「え……?」


「良くやった、麗奈!」


櫻田は、麗奈の肩を叩く。


「お前、天才だ!」


「え、え? 何がですか!?」


麗奈は、混乱している。


「あと五分で分身が帰ってくる。

それも——《最高のお土産》と一緒にな」


「お土産……?」


「ああ」


櫻田は、不敵に笑う。


「それまで耐えきるぞ!」


だがドラゴンに櫻田たちの興味はもう無い。

ドラゴンは本能に従い破壊の限りを尽くそうと市街地に向かう。


「や、やばいですよ櫻田さん!ドラゴンが市街地の方に向かいました!」


「見りゃわかる。チッ、せっかく勝機を見いだせたってのに……」


「ど、どうしましょう」


「……よし、ドラゴンが向かった方向は幸いにも分身が吹っ飛んだ方向と同じだ。

だから俺は分身の方に向かい夜断を受け取る」


「お土産って夜断のこと言ってたんですね」


「ああ、このまま『お土産』の正体を隠してあっと驚かせたい気持ちもあったが、状況が状況だからな」

「お前は瓦礫とかを投げてとりあえずドラゴンの気を引け。効かなくてもいい。とにかく俺たち以外にターゲットが向かないようにするんだ」


「分かりました」


そう言って二人はドラゴンを追う。

麗奈は瓦礫を三、四個抱え、一個ずつ投げつける。

瓦礫は因果固定の力が乗りドラゴンに必中する。

瓦礫ごときではなにも効きはしないが、毎回顔面に当たってくるのでだいぶ煩わしそうにしている。


一方、櫻田はそんな麗奈を後目に全速力で駆ける。

この作戦はいかに早く分身から夜断を受け取れるかにかかっているからだ。


「ん?ドラゴンが止まった」


暫くするとドラゴンが空中で停止した。

理由は分からないが分身はすぐ目の前だ。

早く夜断を……


――ドォォォン!!


刹那、櫻田の目の前を炎の柱が貫く。


「グッ、分身は破壊させたか。だが……」


分身を破壊された痛みに耐えながら櫻田は吹き飛ばされてきた夜断を掴み取る。


「散々苦しめられたが——」


櫻田は、夜断を構える。


「これで終わりだ!」


魔力を込める。

空にいる敵——通常なら、莫大な魔力が必要だ。


だが。


分身を出していない今の櫻田なら——


「到達省略!」


次の瞬間——


空高くにいたドラゴンの首が、音もなく斬り落とされた。


「あっ、やべっ」


ドラゴンの死体は家々に向かい落ちてゆく。

このまま目算ローン30年の四人家族の家が潰されるかと思われた時――


ドラゴンの死体は麗奈の因果固定で人のいない道路に落ちる。

麗奈はそれを終えた瞬間仰向けになる。

どうやら魔力切れで気絶したようだ。


「……終わった」


安心した櫻田も、その場に仰向けになる。


空が、青い。

雲が、流れている。


櫻田は勝利の余韻に浸りながら残りの数時間をどう過ごそうか考え――


「ありゃ? 櫻田さん?」


声が、聞こえた。


櫻田は、顔だけそちらに向ける。


「……和田?」


そこには、見知った顔があった。


和田——櫻田の同僚。

同僚ということは、もちろんSランクハンターだ。


「櫻田さんが、これ倒したんですか?」


和田は、消えたドラゴンがいた場所を見上げる。


「ああ」


「へえ〜。凄いじゃないですか」


「何しに来たんだ」


櫻田は、起き上がる。


「お前はここにいるような人間じゃないだろ?」


「ん〜」


和田は、笑う。


「強いて言うなら——勧誘?」


「勧誘?」


「ねえ、櫻田さん」


和田は、真剣な顔をして――


「もうハンターなんて、やめない?」


そんな荒唐無稽なことを言った。

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