ゲーム小説なろう第二回「SLG〜シミュレーションゲーム〜」
「回復魔法が味方ユニットを追い越してはならん、
一人ならば随伴を許そう、だが最低でも一人は後方に配置されたままだ、
動かすな。」
「ふぅ、あち〜」
先程ガラガラと窓を開けた数人が
エアコンのスイッチ周辺に固まって室内温度を見る。
「繰り返す。治療ユニットによる最前列近くでの随伴は"例外処理"となる。
敵接触までに距離があり、誰も体力が減っていないからと回復魔法達が
リーダーを追い越してはならん」
本プロジェクトのシナリオライターはチーフから感化される事が多い。
時代がかった独特な言い回しを連発しながらホワイトボードに図形を書き添え、
何度も指差しをする。
前々から気になっていたかのような言い方だが
実際に潜在的には長年気にしていた案件であった。
つい先日、チーフに具体例を提示され、より深く気づいたのだ。
「落ちものパズルってさ
4コとか8コ固めて大きいスライムを作って
相手に送り込めると良いよな」
「なにが何だか分からんが、今その話か?」
アルバイトの一人が同じアルバイトに雑談の如き質問をする。
よっこらしょと椅子に座るシナリオライター。
このようなやりとりも会議の中身の一つであり、
些細な事がきっかけで難題解決に向かうかも知れない為
迂闊にやめさせることはできないのだ。
シナリオライターはホワイトボードを見ながら
ペットボトルの茶を少し飲んだ。
結露して水滴がたっぷりついたボトルの中身は、まだ温くなってはいなかった。
つづく