1. 私は・・・
不定期更新です
世界観を楽しんでいただきたいので、あらすじの公開は、もう少しあとでやります
ただ読むだけでなく、今回は、自分で動きながら読むと想像しやすいと思います
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音が聞こえる。
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それは、薄く、細く…しかし、心には重く響く。
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なにかが、体に触れている。
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それは、常に触れているというわけではなく、指よりも細いなにかで突いてきているような…。
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なにかは、顔を重点的に突いてきている。
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………………
目を開ける。
広がるのは、ただひたすらの冥漠で、偃月ひとつない。
天は泣き、色のない氷雨は、体に触覚を思い出させる。
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私は……天を見ているのか。
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もう一度、目を瞑り、音を聞く。
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それは、薄く、細く、…しかし、心には重く響く。
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氷雨は、顔を重点的に突いてきている。
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………………
目を開ける。
広がるのは、ただひたすらの冥漠で、偃月ひとつない。
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私は……夢中ではないのか。
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なにかが、口内に溜まっている。
味はしない。
それは、時事刻々と溜まり続けている。
どうするでもなく、その自然の冷気を味わう。
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もう一度、目を瞑る。
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なにかが、顎を引っ張っている。
その力に抗うことなく、身を任せる。
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なにかが、うなじを絞めている。
その力に抗うことなく、身を任せる。
…………
目を開ける。
広がるのは、ただひたすらの冥漠で、偃月ひとつない。
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私は……立っているのか。
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なにかが、どこにあるのかわからない左手首に触れている。
そのなにかに沿うように、左肘を曲げる。
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終点がある。
なにかは、棒のようで、終点に左手の平を置く。
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もう一度、目を瞑る。
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妙に馴染む。
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息を吸う。
鼻と口から、氷雨交じりの空気を体内に取り込む。
胸部が膨張する。
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息を吐く。
鼻と口から、白磁の空気を体外に放出する。
胸部が収縮する。
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それは、霧散するように、暗晦に溶けていく。
胸部の動きに合わせて、コツコツと音が鳴り、左手が軽く振動する。
振動を抑えるために、左手で、棒の終点を包み込むように握る。
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妙に落ち着く。
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私は……知っているのか?
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行雲流水の右手に、神経を通わせる。
肘と手首は、曲がっていない。
中指と薬指の先端は、右足に繋がっている。
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肘と手首、指先の時を止め、体の正面を通る偃月を描いて、手を空へ向かわせる。
手の甲に、氷雨が触れる。
右肩から、右手に向かって、白糸が伝う。
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右手が、体の正面に至る。
一度、動きを止める。
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肘の力を抜き、手の甲を翻す。
さきの続きを描く。
手の平に、氷雨が触れる。
右手から、右肩に向かって、白糸が伝う。
白糸は、首筋を優しくなでる。
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………………
顔に触れる氷雨が減り、手の甲に、再び氷雨が触れる。
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目を開ける。
広がるのは、ただひたすらの冥漠で、目の前には、だれかの右手がある。
その手は、白燕の翼で織られたような、六花模様のシロに包まれている。
それは、指先から肘を、その輪郭を強調するように覆っている。
肘から肩に近づくにつれ、シロはその翼を羽ばたかせる。
冥漠の中で…その生は、最後の希望の、如く立つ。
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あぁ、なんと儚い。
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私は……悲しんでいるのか?
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右手から零れた瑠璃の水滴は、涙となって、地に落ちる。
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右手を握る。
目の前の右手も、その手を握る。
右手を開く。
目の前の右手も、その手を開く。
その不可思議な現象に、目を見開く。
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肘に力を入れ、手の平を翻す。
右手から、右肩に向かって、白糸が伝う。
白糸は、優しく首をなでる。
…………
右手を握る。
目の前の右手も、その手を握る。
右手を開く。
目の前の右手も、その手を開く。
その不可思議な現象に、目の力を抜く。
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遠くに広がる無を、掴んでみようと試みる。
肩を伸ばして、右手を握る。
肩の力を抜いて、右手を翻す。
右手を開く。
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そこには、ただのシロがある。
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腕と肩の力を抜く。
顔の前にあった右手は、下へ流れる。
余韻で、体が揺れる。
体の動きに合わせて、コツコツと音が鳴り、左手が軽く振動する。
左手を一度開き、再度、棒の終点を握る。
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音が止む。
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なにかが、顎を引っ張っている。
その力の方向に、顔を動かす。
うなじを絞めているなにかは、どこかへ消え失せた。
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世界が変わる。
冥漠から、氷に覆われた焦土へと。
焦げた草木、黒い大地、割れた瓦礫。
そのすべての時間が止まっている。
視線を左右に向ける。
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目に映るのは、焦げた草木、黒い大地、割れた瓦礫。
周囲は氷霧に満ち、大地と天空の境目を曖昧にしている。
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私は……本当に生きているのか?
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左手で、棒の終点を握りなおす。
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視線を落とす。
左には、白銀の棒と、それを握る左手が見える。
右には、シロに覆われた右手が見える。
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左手は、無地のアカに包まれている。
それは、指先から手首を、その輪郭を強調するように覆っている。
手首から肘に近づくにつれ、アカはその翼を羽ばたかせる。
手首には、中心が緑がかった赤い花が、一輪、装飾されている。
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棒に触れたまま、左手を開く。
目の前の左手も、その手を開く。
棒を包むように、左手を握る。
目の前の左手も、その手を握る。
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私は……生きているのか。
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もう一度、周囲を見渡す。
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ここは……どこだ……?
私は……
「だれだ……」
その生は、最後の希望の、如く立つ
気づいたら、五七五になってました
女主人公です
代表作とは、世界観も主役も、何もかもが違います
共通点は、「花」くらいでしょうか