監禁
今回はスパイラル第二話です。
目を覚ますと、真っ白な部屋だった。壁、天井、床、すべてが無機質な白で埋め尽くされ、扉という扉は見当たらない。ただ、一人の男が目の前に立っていた。黒いスーツに身を包み、冷徹な目でこちらを見下ろしている。
「ここはどこだ?」
思わず声を上げると、男は軽く眉を上げた。
「やっと目を覚ましたか。いろいろと情報量が多かったからな、まあ無理もないが……」
独り言のように呟くその声は低く冷たい。
「おい!ここから出せ!」
「まあ、そう焦るな。」
「焦るだろ!こんなの、アニメやドラマでしか見ないんだよ!お前、映画の見すぎでどうかしてるんじゃないか!?」
「俺は最近映画なんて見てないし、見すぎてもいない。」
「じゃあ、これはどういうことだよ!」
男は軽く肩をすくめた後、真剣な表情に戻った。
「説明しよう。お前は、不死鳥の石の適合者だ。」
「不死鳥の石……適合者?」
「そうだ。15年間、誰も適応できなかった石だ。普通の人間が触れば少し光るだけだが……お前が触れたとき、光り方が違った。それだけじゃない。お前は石を吸収し、その能力を得た。」
頭が追いつかない。混乱する雷人は、男の言葉を遮った。
「ちょっと待て!じゃあ、なんで俺に“あの大型銃の穴に入れろ”なんて言ったんだ!?握らせるだけでいいだろ!」
男は表情を少し歪めた。
「あのときはお前が適合者かどうか確信がなかった。だから念のため大型銃にセットさせたんだよ。」
「なるほどな……で、その石は今どこにある?」
男は、雷人を指差した。
「お前の体の中だ。言っただろう?吸収されたと。」
「……俺の中に?」
言葉が出ない。その時、雷人はふと自分が撃たれたことを思い出した。
「待て、もう一つ聞いていいか?なんで俺は撃たれたのに痛くないんだ?」
「それは催眠術だ。それに似た方法を取った。」
「催眠術?」
男は淡々と説明を続ける。
「最初にお前を撃った銃は本物だが、最後に撃ったのは偽物だ。脳に“本物の銃で撃たれた”と認識させ、ホログラムで演出しただけだ。」
「つまり、俺を騙したってことか?」
「ああ、そうだ。」
男の言葉に、雷人は力なく溜息をついた。
「さて、行こうか。」
「行くって、どこにだよ?」
男は雷人を縛っていた縄を解き、静かに指示する。だが、その直後――
「眠れ。」
男の声が響いた瞬間、雷人は急に体から力が抜け、その場に崩れ落ちた。
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次に目を覚ますと、今度は暗闇に包まれていた。先ほどの白い部屋とは違う場所だ。手足は自由だったが、不安が押し寄せる。
「ここは……?」
その時、スピーカー越しに声が聞こえた。
「おはよう。」
雷人は声の主に向かって叫んだ。
「あの、どういうことだ!?俺をここから出せ!」
「説明しただろう。君は不死鳥の石の適合者だ。」
「だからなんだよ!適合者ってだけでこんな怪しい組織と関わらないといけないのか?」
「君には使命がある。虚人――人間を襲う怪物を討伐できる存在だ。簡単に逃がすわけにはいかない。」
「ふざけんな!お前らの都合だろ!」
雷人の叫びにも関わらず、男の声は冷静だった。
「虚人は階級で分けられている。A級からD級、さらに人間に害を及ぼさないF級もあるが、君にはA級討伐を任せたい。」
「勝手に決めるな!」
怒りに任せて能力を解放しようとする雷人。しかし、その動きは見抜かれていた。
「やめておけ。センサーでわかる。」
声の主が言った通り、雷人の腕だけが赤く表示されているモニターが映し出されていた。
だが、雷人はお構いなしに全身に力を込め、縄を破壊。周囲に炎が浮き始めた。
「その縄はA級以下の能力を無効化するはずだ…まさか、こいつはS級か!?」
「そんなの知らねえよ!」
雷人は壁を蹴り飛ばし、破壊する。だが、その先は――地上4000メートルの上空だった。
風が一気に吹き込み、全身が空中へと放り出される。
「……嘘だろ!」
耳をつんざく風の音。声を張り上げても、かき消されていく。全身の血の気が引き、冷たい感覚だけが残る。
次回もお楽しみに!