第9回 格の高さを知る
ここまで比較的安価な食事の話をしてきたエッセイもどきですが、第9回にして遂に高級店の領域に突入です。準備はいいですか? 衝撃に耐え切れるだけの心の余裕を持っておくことをお勧めします。
そう、私は先日行ってまいりました、ホテルニューオータニ東京の朝食ビュッフェに!
新・最強の朝食と名付けられたそのビュッフェは朝食にもかかわらず土日は宿泊外の客も多数訪れて大混雑になるという人気っぷりです。
安くて美味しくて人気というなら納得も納得ですが、なんとこちらのビュッフェは朝食にもかかわらず7000円台!(サービス料込み)
冷静に考えてください。7000円あればお洒落な料理店で豪華なディナーコースを注文できそうな金額です。それを朝食の為に払う……? 寝起きでそこまで胃は空いていないであろう朝食の時間帯のために……?
むしろこれは逆に気になります。そんな強気の値段設定で運営してなお維持できる実力とはいかなるものか。
そういうわけで行ってきました。ホテルニューオータニ東京。建物内に入ってから朝食会場に着くまで10分くらい掛かりましたよ。広すぎでしょ、高級ホテル怖すぎ。この広さでお化け屋敷でも出来るのでは、という庶民思考を振り払って移動です。
そうして到着したらフロントの方に外来利用であることを伝えると、問題なく店内へ案内されます。
よかった。庶民は見た目がダメだからNGとかなかった。一安心です。
そうしてお席に着いて一言……「後ほどコーヒーもしくは紅茶をご用意致します」と。
え? スタッフの方が注ぎに来てくださるんですか!? デフォルトでわざわざ席まで!?
既にこの時点で高級ホテルの格式の高さを感じます。銀座の高層ビルで頂いたアフタヌーンティーでも勝手に注ぎに来てくれるサービスなんて出会ったことはありません。これはもはや恐怖すら覚えます。
そしていざビュッフェへ出陣です。子供のように逸る心を抑え、歩みだけでも大人の落ち着きを意識していきます。そうして到着したビュッフェコーナーは……まあなんとも壮観でした。
一つ一つの商品に惜しげが感じられない。ハムは厚切り、チーズは種類多数、点心は中身がたっぷり詰まっていそうな見た目、そしてカットステーキまで。ライブキッチンではその場でオムレツを作ってもらえます。プロの手際すげー!
その後何度も料理を取りに行きましたが、各コーナーを回る度に驚愕を隠し切れません。
パンは10種類くらい並んでいるし、ヨーグルトは自在にカスタマイズ可、フルーツは多数冷え冷えの状態で準備済みの上にメロンまで置いてある! 朝食からメロンをお召し上がりになってよろしいのですか!?(錯乱)
和食コーナーに行けばご飯味噌汁うどんを始め、手まり寿司やいくらかけ放題など洋食派の私でもつい手を出したくなるラインアップで迎撃してきます。
そしてもう一つ驚いたのがその食事を席に持ち帰った後です。
いざ実食せんとフォークを手に取りかけた私に、横からスッと現れたスタッフさんが一言。「トレーだけお下げしましょうか?」
最初はその意味がさっぱりわかりませんでした。
えっ? それはつまりトレーからお皿だけ下ろして、トレーを持って帰ってくれるということですか!?
ええ、その通りでした。なお、最初の一回は本当に動揺していて何をしていいのかわからず、スタッフさんに丸投げしてしまったことを反省しております。
さて、いざ実食すれば口内を幸せが満たします。
うまい。朝からこんなクオリティの高い食事ができるのか、早起きした甲斐があった、と思いました。
先程聞いていた紅茶もやってくればパンと肉料理とのローテーションに彩が加わります。
そしてもう一つ思ったこと。それはお客さんのマナーが良い!
ビュッフェにありがちな走り回る子供、料理の取り方が雑な大人、周囲を気にせず騒ぎ立てる家族連れ……一切見当たりませんでした。高級な店に来るとこういう風に民度も上がっていくのですね。
こんな環境で素晴らしい朝食が摂れるのなら7000円でも納得です。
格式の高さ、それはお店自体のクオリティだけでなく客の格にも繋がる、それをしかと体感しました。
最初は金額で躊躇いましたが、人生で一度経験しておいて悪くないと今は思います。
いやあ、それにしても良い体験だった。
さてじゃあ次はどこのホテルの朝食に行こうかな。
ではまた。