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第2回 冷凍食品

世界を見る時は必ず、その人自身のフィルターを通している。

それは目で見る時だろうが、その様を言葉にする時だろうが、写真に撮る時だろうが同じ。

だから、その世界は自分にしか見えない世界なのである。


ということをこの半年くらいで考えていたのだけれど、全く同じことを空木夏夏さんが述べていて驚きました。

あ、「リルヤとナツカの純白な嘘」やってます。ノベルゲームはあまり性に合わないのですが時々はいいかなと。


さて、その作中で夏夏さんが冷凍食品を食べてたいそう美味しいと喜んでいるシーンが印象に残りました。

そうです、我々がコンビニやスーパーマーケットの冷凍棚の中に見掛けるアレです。


夏夏さんはかなり貧しい食生活を送ってきた様子が窺えたので、その直後に食べれば冷凍食品だって美味しさの極みでしょう。

幸いなことに私は食事でひもじい思いをしたことのない恵まれた人生を送って来ましたので、その気持ちを脳内で再現することはできずなんとなく想像するだけですが、それでもきっと美味しいのでしょう。


ただ、その中で夏夏さんが述べていた内容の中に「私の知っている冷凍食品とは違う、おいしい」的な表現があったと記憶しています。そのフレーズに私にも心当たりがあって印象に残っています。


あれは1ヶ月ほど前のこと。

夜、疲れ果てて用事から帰ってきた私は夕食を食べる気力もなく、でも何も食べないのは良くないし……と家の近くのスーパーマーケットを物色し始めました。


電車移動も長くて疲れたし、時間も遅くなって身体もだるいし、なんかそれでも食べれそうなやつを……楽に調理できるやつを……とゾンビのような動きで店内をうろつきます。


お惣菜コーナー……なんか違う、今そういう脂っこい気分じゃない。

おにぎりコーナー……いや、今は白米受け付けないし。

サンドイッチやサラダ……もっとちゃんと夕飯感があるものがいい。


目に入る全ての夕食候補を気分という名の怪物が弾き飛ばしていきます。

通り掛かるお菓子コーナーなど当たり前のようにガン無視し、そして辿り着いたのが店内奥の冷凍食品コーナーでした。


ああ、そういやこのコーナーあんまり見たことなかったわね……と適当にガラス扉越しに眺めます。

チャーハン、ラーメン、唐揚げ、ピザ。どれも脂がしんどそうで胃が受け付けません。


しかし、そこで偶然見つけてしまいました。

そう、冷凍パスタです。


これならいけるのでは?

私の胃腸という怪物の元締めがやんわりと停戦の気配を見せています。


では慎重に選びましょう。オイル系やバジル系は苦手なので除外です。ペペロンチーノも得意ではないので省きます。

そうして私の前に残ったのはカルボナーラでした。しかも2種類。


なんとなく目についた有名なメーカーの方を取ってカゴに入れ、レジへ向かいます。

怪物はまだ黙ったままでした。これはいけそうだと安心します。


その一方で期待はそこまでしていませんでした。

いやだって冷凍食品だし。レトルトでもカルボナーラソース買って、自力で茹でたパスタに掛ける方が美味しいに決まってる。

でも今日はもうそんな気力も体力もないしこれで妥協しよう……そう思って会計を済ませ自宅へ帰ります。


荷物を置いて手洗いを済ませて、早速取り出した冷凍パスタを電子レンジで温めます。

所要時間5分強。その間にPCを起動し、気休めにゲーム実況動画を見ようとYouTubeを立ち上げておきます。


そして完成。一人暮らしの特権たる「そのまま口付けて飲む用2Lペットボトルのお茶」を用意して実食です。

フォークでくるくる巻いて、ぱくりと一口。


……うまい。


あれ、冷凍食品なのに、思ってたよりも美味しい。

カルボナーラだから乳臭いとかソースの味がパスタに染み込んでなくて物足りないとか、そういうものだと思ってたのに。


慌ててもう一口。

……やっぱりうまい。


もしかして今時の冷凍食品ってのは美味しいのか!?

もしや私の冷凍食品に関する味覚は一昔前で完全にストップしていたのか!?


そんな衝撃の中、私の冷凍食品に対する先入観は綺麗さっぱり払拭されたのでした。


いや、綺麗さっぱりは言い過ぎか。

とはいえ前よりも冷凍食品に手を伸ばすことに抵抗を感じなくなりました。案外うまいじゃん、やるな食品メーカー。


最近は冷凍食品オンリーのスーパーマーケットなんかもあると言いますし、某お菓子チェーン店も冷凍食品専門持ち帰り店を開いたりしているらしいじゃないですか。

俗に言うタイパ(タイムパフォーマンス)を今後より求められそうになっていく時代において、冷凍食品は人類の新たなる味方なのかもしれません。

ビバ!冷凍食品!


と、そこまで書いたところで、普段夕飯用に頼んでいる通販の冷凍弁当も文字通り「冷凍」であることに気付きました。

おいお前。


ではまた。

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