第12回 理想の料理、理想の味
理想は高く現実は低く、なエッセイもどき第12回です。
理想の文章をそんなに容易く書けたら誰も苦労しないんでしょうね。
理想というものは時に人にとっての困難になります。
理想の自分でいたい、理想の仕事をしたい、理想の結果を出したい……どれも目標でありハードルでもあり、そこに向かう過程で心身を壊してしまうことだってありえます。
それでいて理想というのは一度到達すればそれで良いというものではなく、次の新たなる理想が生まれてしまうこともあります。超えたと思ったハードルの先には新たなハードルが。なんとも難しいものです。
ですが、今回はそんな小難しくて現実的な話とは別です。
自分にとっての理想の料理(食べる側)についてお話ししたいと思います。
作る側の気持ちなどこちらには関係ありません。
自らが求める理想の○○を見つけ出した時、私は最高にハッピーな気分になります。
そうして見つけ出した私の理想の料理を2つご紹介しましょう。
一つ目はインドカレーです。これは大学生の頃から探していました。
そんなにたくさん食べていたわけではないのですが、何故かあのナンとカレーで構成される料理が好きで、お金が少ない頃でも時々昼食に贅沢をするなら……という時にインドカレー屋へ通っていました。
あ、ちなみに普段はレトルトのミートソースとパスタで済ませていました。
アパートの狭いキッチンで作ったのが懐かしい。調理スペースがなさすぎて、パスタを茹でている鍋にそのままパスタソースを突っ込んだのもいい思い出です。今はしませんけど。
もしくはイチゴジャムだけを挟んだ食パンによる擬似サンドイッチです。
これはバイト先や大学構内で昼を済ませる時に家から作って持っていきました。よくそれで我慢できたな。
話が逸れました。
私の当時住んでいた街は学生街でしたので、お金のない若人向けのレストランが多数並んでいる街でした。
その中には例に漏れずインドカレーの店もあり、そこで比較的甘めのカレーを食べていたのですが。
そうです。甘めの味というのがポイントです、私は香辛料にあまり強くないのです。
ですから大抵インドカレー屋で頼むのはバターチキンカレーという比較的甘さに寄った種類でした。
それ以来、バターチキンカレーにおける理想の味を求めて、特に社会人になってからは色々な店に行きました。
そして今、理想の味を出してくれる店と無事に巡り会えたのです。
バターの仄かな甘み、スパイスの効きすぎない若干の辛み、そしてチキンの旨味。全てが完璧なバランスで私向けに調整されている素晴らしい逸品です。もしかして知らぬ間に味覚でも解析されていたのかと思うほどの相性の良さです。
自宅からはそこそこ遠いのですが、たまに近くで用事がありますのでその時には必ず昼食で寄っています。ここはナンも美味しいんですよ。チーズナンとかじゃなくて普通のナンがちょっとだけ甘くて美味しい!
そして二つ目がフレンチトーストです。
これが厄介でして、美味しそうなフレンチトーストを出す店はオシャレ系であることが多く、陰キャコミュ障の私には中々入りづらい環境ですし、誘って一緒に行く友達もいません。
そんな中でも勇気を出し、ネットで調べて良さそうな店を巡っていたのですが中々出会えずにいました。
プレーンな味、でもパン生地に甘みがほんのり感じられて、バターを付けてもよし、メープルシロップを垂らしてもよし、そしてボリューム多めで味変が楽しめるような―
しかし、そんな日々も無事に終わりを迎えました。
私が求める理想のフレンチトーストに出会えたのです。
それを提供してくれたのは、前から行こうと思って中々行けていなかった繁華街の中の隠れ家的なお店でした。
フレンドリーな店員さんにビビり散らし、周りに座っている方々の陽キャな雰囲気にも負けそうでしたが頑張って耐えました。
そうして耐えた先に出てきたのが、見た目・味・ボリュームの三拍子揃った完璧なフレンチトースト。
いやあ、今書きながらめちゃくちゃ食べたくなってきました。
あのこんがり焼けた美味しそうな見た目、口の中に広がるほのかな甘み、そしてお腹いっぱい食べられるボリューム― ダメです、食欲がふつふつと湧き上がって来ます。
次にあの店の最寄り駅へ行く用事は2週間以上先なのですが、この期間を我慢しろというのでしょうか。なんとも不条理な現実です。
理想には困難が伴う― 結局冒頭で書いたとおりになってしまいました。
まあ、それも理想を美味しく味わうためのスパイスなのかもしれません。
ではまた。