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第1回 元気が出る店

突然エッセイを書き始めました。

いえ、初心者にも満たない私の若書きは「エッセイもどき」とでも称するべきでしょう。

ちなみに「もどき」って漢字にすると「擬き」なんですね。擬態ということでしょうか。


さて普段百合小説を気が向いた時だけ書いている私がなぜこんな文章を書き始めたかと言えば2つほど理由があります。


まず1点は物書きの練習です。ド素人とはいえ小説を書いている身、少しでも文章を書く機会が多い方がいいでしょう。

とはいえストーリーとなると事前に練ってから書き出さねばならぬ……ならば現実のことを書けばよいのでは?という考えです。


そして2点目は話題を広げる練習。作者の素性なぞ読む側からすれば一切関係のない、どうでもよいの一言で片付けられるような事項ですが、本人からするとコミュ障陰キャ喋り下手というのは大問題です。少しでも話題を広げて人と喋るための練習をしなくては……ではせめて文章だけでも色々展開できるようになればよいのでは?という安直なスキルアップを目論んでいます。


というわけでこんな誰に読まれるかもわからないエッセイもどきをネットの海に放流してやるのです。

よし、どうせ読まれないならカッコつけてそれっぽい感じにしてやるぞ!


早速ですが初回の話題は「元気が出る店」です。

人は心身共に常に元気で溢れているわけではなく、どちらかの具合が良くない、またはどちらも調子が悪いという時が訪れるものと思っています。少なくとも私自身は両方とも満たされている日など1年の半分にも満たないという認識です。


体が弱っていると心も弱り、心が弱っていても身体が弱っていく……心身相関とはよく言ったものです。


ではそんな時どうやって回復するか?

人と会うのも、ゆっくり休むのも、楽しく遊ぶのも、どれも人によっては最適解になるでしょう。

そして私の場合、エネルギーのあるものを摂るのが最適解だったりするのです。


そんな時に決まって行くとんかつ屋があります。

自宅からは徒歩圏内のその店はチェーン店ではない小さめのこじんまりとした店構えで、席も十数席ほどしかない、けれどとても美味しいお店です。


え? エネルギーを得るためのとんかつならどんな店で食べても変わらないんじゃないかって?

……そうかもしれません。とんかつという料理から得られる栄養成分を得るためならチェーン店でもよいのでしょう。


しかし、この店には単なるとんかつ屋以上のエネルギーが満ちているのです。


清潔感もありつつワイルドに調理風景を見せてくれる木を基調にした店内、活気があってハキハキしている店員さん、それを食べに来るお客さんたちの寡黙にとんかつと向き合っている姿……それらの環境をひっくるめて私はエネルギーを受け取っているのだと思います。


そして肝心のとんかつは?

ふふふ、ご心配には及びません。それはそれは美味でございます。


懐の深さを演出する鮮やかな寒色の丸皿、その中央に存在感たっぷりに載せられたとんかつは見た目だけでもサクッと音がしそうなほどの軽やかな衣を纏い、中の豚肉は微妙に淡い赤色を残した絶妙な柔らかさを感じられる仕上がり、その背後にはたっぷり積もった新鮮なキャベツの山。そしてその両サイドには日本人の古き良き伝統を美しく体現した白ご飯とお味噌汁。更にお漬物まで!


これはもう完璧です。

完全なる調和の元に完成されたこのとんかつ定食、無心に頬張る以外あり得ません。

一口食べる度に胃の中にエネルギーが吸収されていく感覚が……しませんが美味しいので良しです。


え、写真はないのかって?

ありますけど人には教えたくない店なので載せません(にっこり)


そういえば最近この店のとんかつを食べながら思っていたことがあります。

子供の頃はとんかつといえば必ず中濃ソースをたっぷりと付けて味わっていたにもかかわらず、最近はなにも付けずor塩のみでいただくことがほとんどになりました。


あの頃から歳は取りましたし、味覚の変化というのも理由としてあるのだろうと思いますが、最も思い当たるのは以前住んでいた街のとんかつ屋の影響です。


その店は老夫婦が個人経営する小さめのお店で、ご主人が長年の修行で鍛えた手腕でとても美味しいとんかつを提供してくれるお気に入りの店でした。そこで初めて頼んだヒレカツがそれはそれは衝撃的で。


今までとんかつとして食していたそれとは異なる、くどくない衣、柔らかく蕩けるような肉の食感、決して主張し過ぎない適度な脂身……それはもう私の認識を書き変えるほどの味でした。そしてそのとんかつが何も付けなくても美味しかったので、それをきっかけにして私は調味料無しで食べるようになったのだと記憶しています。


塩は例外的に使っています。なんというかとんかつの持っている旨味そのものを邪魔せずに、むしろ引き立ててくれる存在として塩はちょうどいいんですよね。中濃ソースの甘味とかって完全に肉の味を食っちゃうじゃないですか。でも塩はそれがない。


ああ、話が逸れました。

そういうわけでこのとんかつ屋は私にとって元気の出る店なのです。


決して安くはないお値段ですが、それでも会計を終えて店を出る時、レシートを握り締めながら外の日差しを浴びていると無性に心地よく満足してしまうのです。ああ、美味しかったと。


人間の心身はアップダウンの波があるものですし、歳を重ねていくとそれはもっと大きくなるでしょうから、こうやって長く通えそうなエネルギーの補給所があるというのは人生の助けになりそうでいいですね。

こういう店をもうちょっと増やせたらなあ。まあ、そこは気長に見ていこうと思います。


というわけで不定期にこんな感じのエッセイもどきを書いていきたいと思います。

ではまた。

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