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実は神話です!?  作者: K.アミサガン
6/15

埠頭って!?

埠頭にて女神の力炸裂!!

「おい・・・シン、やべえって・・・やめようぜ・・・藤堂さんにバレたら殺されるぜ。」

小声で呼びかけられたのは、何かと揉め事の種になる例のチャラ男である。

「シッ、黙ってろマコト。大丈夫だって、藤堂さんは姐さんの周りをうろちょろするなって言ってたんだぜ。俺たちはあの芹沢ってヒヒ親父を張ってるだけだ。」

マコトと呼ばれた男は渋谷で奈々たちと揉め事の種になったシンたちチャラ男三人組の一人である。

「で、でもよ、芹沢ってやつをボコったって、まずくねえか、それが元で姐さんに迷惑がかかるってことも・・・」

チャラ男三人組の最後の一人アラタが声を震わせて呟いた。

「ばーか。誰が芹沢をボコるって言ったよ。」

「えっじゃあ何であの親父をつけてんだシン。」

「あの芹沢ってヒヒ親父、どこいっても評判最悪らしいからな。張ってりゃ、なんかあるに違いねえ。証拠をつかんでネットに流してやるんだよ。」

「おお、なるほど。シンにしちゃあ、いい作戦だな。」

「しちゃあは、よけいだ。さすがにあんだけ藤堂さんに後先考えずに突っ走るんじゃねえと言われりゃ、おれだってちったあ考えるわ。」

シンは鼻を膨らめながら答えた。

「でもよシン、あの芹沢ってオヤジ、こんな時間になんで十三埠頭なんかに来たんだ。」

「だから言ったろ、なんか胡散臭いことがあるんだよ。狙いどうりだ。」

「なるほど当たりってわけか。」

「シッ、車が近づいてくる。」

芹沢は十三埠頭に車を止めて外に出ていた。妙に落ち着かず周りをきょろきょろしている。その芹沢が、近づいてくる車の音にはじかれたように振り返った。窓ガラスまで真っ黒に塗装されたベンツが芹沢に横付けした。後ろの窓が静かに下がると芹沢はぴょこぴょこと窓に近づき頭を下げている。

「こんなところに呼び出して、いったい何の御用ですか・・・」

芹沢の声は震えているようだった。窓の中からいきなり手が伸びると芹沢の胸倉をつかんだ。

「芹沢先生、用があるって言ったのはそっちが先でしょう。わざわざ人目を避けられる場所を選んでやったんだ。感謝ぐらいしてもらいたいものですねえ。」

そういって街灯に映し出された、顔を見てチャラ男三人組は息を呑んだ。

「あっ、あれは海蛇会の加藤じゃねえか。」

三人組は全身の毛穴から汗が吹き出るのを感じた。海蛇会といえば梟組も所属する関八州連合の中でも一番の勢力を誇る大組織である。今流行のハングレやチンピラどもを集めて脱法ハーブやオレオレ詐欺、闇バイトなど金になるものなら何でも手を出すやさぐれものだ。歴史ある任侠を大切にする梟組とは当然おりあいがも悪く、海蛇会の若頭の加藤と藤堂は犬猿の仲である。


シンたちチャラ男三人組が十三埠頭に芹沢を追っていった時より少し前、放送を終えた奈々は大学に戻り午後の抗議を終えると自宅マンションに戻っていた。

(フフッあの子たち、テレビの時のお礼を言ったらずいぶん喜んでいたわね。)

奈々は放送のときに糾弾された昨日のことの証拠として出された写真をあらかじめ知っていたおかげで落ち着いて対処できたことを沙希、涼子、麗華の三人のミューズたちに礼を言ったのだった。三人は少しでも奈々の力になれたことを心底喜び興奮したのだった。

(普段は冷静で落ち着いているあの子たちなのに・・・)

奈々はほほえましく思いながら先日、イケメン店長からもらったオレンジペコを入れようとしたときである。

ピンポーン・・・

唐突に呼び鈴が鳴った。奈々の穏やかの表情が一瞬にして険しくなった。現代日本に顕現した女神アテナである奈々に対して来客や郵便物は極端に少なかった。学生たちは奈々の家に訪問したがったが、校則で不必要な学生と講師の接触は禁じていたし、奈々自身に対する郵便物も論文の依頼や評価の依頼でほとんど奈々自身が把握しているものだった。実は一時通販にはまって頭のよくなるヘアバンドなどを購入していた時期もあったが、今はおちついていた。奈々の住むマンションはセキュリティシステムにより一階ロビーにあるパネルに部屋番号を入力してインターフォンで会話するシステムであり書留や宅配便などもこのシステムに従った。奈々は険しい表情のまま部屋のインターフォンに近づくと画面を確認した。そこには帽子を目深にかぶった、おなじみの青と白のストタイプの制服を着た男が立っていた。奈々はじっと見ると先ほどの険しい表情から少し変化した怪訝そうな表情になり会話ボタンを押した。

「どなたかしら。」

画面の中の妙に体格のいい配達人が静かな声で答えた。

「お届け物です。」

奈々は思ったとおりといったような表情を一瞬見せたが怪訝そうな表情にすぐ戻ると、こともあろうか簡単にこう回答した。

「どうぞ。」

奈々はパネルのOPENのボタンを押すとなぜか部屋を出た。

奈々は部屋を出てエレベーターホールへ来ると徐々に上がってくるエレベーターの回数表示を見つめていた。軽やかな電子音ともにエレベーターが開かれると先ほどの画面の男が現実となって現れた。エレベーターの扉開かれた瞬間、男は目の前に立つ奈々に驚き一瞬たじろいたが、ゆっくりエレベーターから進み出た。

「最近の宅配便は変わっているわね、届けるものが無いのに訪問するの。」

確かに手ぶらで現れた配達人は言い訳するよりも早く帽子を取るなり一瞬で奈々の前に手を着くと。

「姐さんすまねえ、俺たちのせいでとんでもねえ迷惑をかけちまった。」

そこには連日の高速土下座という渋谷最強の男には似つかわしくない技を習得しつつある藤堂の姿があった。

「ここに来ること事態が迷惑になるってことに気がつかないあなたじゃないでしょう。どうやって私の住まいを突き止めたかは聞かないであげるけど、これ以上ストーカーまがいのことをしたら、私と知り合ったことを後悔させてあげるわよ。」

藤堂は奈々の言っていることがハッタリや脅しで無いことを十分承知して心の底が凍りつくような思いにとらわれたが、勇気を搾り出して声を絞り出した。

「迷惑なのはわかってます、ただどうしても一言直接謝りたかったんです。」

奈々はうんざりとした表情の中にも心なしか慈愛の気持ちを込めて、珍しくあまり冷たさの感じられない声で言った。

「なら、もう気が済んだでしょ、さっさとかえりなさい。」

藤堂はさっと立ち上がるとわかりましたときびつを返したそのときである。誰もがききおぼえのあるアイフォンのベルが鳴った。画面には例のチャラ男シンの文字が表示された。

「何だ、何の用だ。」

電話の向こうはかなりの大声で、奈々にも聞こえてきた。

「アニキ、大変だ、今十三埠頭でシンたちと・・・」

「何だ、真か、どうした、なに芹沢、・・・」

藤堂がそこまで言うと電話が切れたようだった。藤堂はタイミング良く上がってきたエレベーターに飛び込むと深ぶかと頭を下げ。

「姐さん失礼いたしました。」

そういい残してエレベーターの中に消えていった。奈々は先ほどよりもさらにいぶかしげな表情になり、

(十三埠頭・・・芹沢・・・)

そう声にならない、つぶやきを発した。



時間は少しさかのぼる。シンたちチャラ男三人組が十三埠頭で芹沢を張っていたとき、なんと芹沢の待ち合わせあいてはこともあろうか海蛇会の若頭加藤だった。

「オイッ、シンやべえって、早えとこズラかった方がいいぜ。」

真が震える声で向こう見ずな行動の多いシンに話しかけた。

「うるせえ、静かにしてろ。証拠写真を撮ったらズラかるぞ。これ持ってろ。」

シンは自分のスマホを渡しながら、撮影の準備に取り掛かった。無鉄砲な行動が多いシンもさすがに思ってもいなかった大物の登場に胸の鼓動が早くなるのを感じていた。望遠レンズの倍率をあわせシャッターを切ったその瞬間である。

「てめえら何してやがる。」

どすの利いた声がシンたちが潜む倉庫の陰に響いた。

「やべえ!逃げろ!」

シンたち三人は雲の子を散らすようにその場を離れようとしたが、既に何人かの屈強の男たちに囲まれていた。かろうじて真がスマホを操作したように見えた。


(バカどもが、あれほどこの件については関わるなといったのに。)

藤堂はあせる気持ちを抑えながら黒のレクサスを十三埠頭に飛ばしていた。既に日も暮れ、ぼんやりと街灯に照らされた十三埠頭に数人の人影が見えた。藤堂は人影に近づくとヘッドライトを人影に向けた。そこには顔面血だらけとなり人相も判別つきそうもない三人が映し出された。藤堂にはシンたち三人だとすぐにわかった。そしてその周りを囲む屈強な男たちは何回か見かけたことのある顔だった。

「うちの舎弟どもを返しもらおう。」

ヘッドライトをつけたまま車を降りると藤堂は落ち着いた、それでいて必殺の気合を込めて男たちに言い放った。

「ほう、渋谷最強の藤堂さんがお出ましだ。」

「こんなチンピラ殿のためにお出ましとは、ずいぶんおやさしいこって。」

男たちは薄笑いを浮かべながら藤堂に答えた。藤堂は気合をさらに高めながら男たちに向かっていった。

「おとなしくひきわたさねえとテメエらの首ごともらって帰るぜ。」

不意に藤堂の後ろから車のドアの開く音が聞こえると聞き覚えのある声が響いた。

「藤堂さんよ、うちの若けえもんの首を持って変えるとは穏やかじゃねえなあ。そっちからつっかかってきたことだぜ。」

加藤の両脇にはやはり見知った顔、その後ろにはテレビで見た芹沢という教授だった。

「そうかも知れねえが、それにしたって落とし前はもうすんでるだろう。加藤さんよ。」

藤堂は先ほどよりもさらに殺気を込めてことばを返した。加藤は余裕シャクシャクに藤堂に向かって言った。

「そうはいかねえなあ、藤堂さん。こいつらは見ちゃあいけねえもんを見ちまった。それに藤堂さん、のこのこ一人でやってくるとは迂闊だったなあ、前々から梟組は目障りだったのよ。たいして力もねえくせに、名門ぶりやがって、うまいことつぶす機会を狙ったんだが、こんなチャンスがやってくるとは・・・」

加藤が言い終わらないうちに、藤堂はシンたちの下へ脱兎のごとくむかった瞬間、パンッという乾いた音が十三埠頭に響いた。藤堂は右足に焼けるような熱さを感じ動きが止まった。

「加藤!テメエそんなものまで持ってやがって。」

加藤の両脇で拳銃を構える男たちがいた。藤堂は傷口に手をやった。

(かすっただけだ、弾は残ってねえ。何とかシンたちを助け出し脱出しねえと)

「藤堂、お前さえいなけりゃ梟組なんてたいしたことはねえ。あとはおいぼれの組長だけだ。おめえんとこのチンピラが何で芹沢先生をつけてたか知らねえが、おかげで絶好のチャンスに恵まれたぜ。」

加藤は勝ち誇ったようにぺらぺらとまくし立てた。シンたち三人のそばにいた男たちはゆっくりと加藤の方に移動した。藤堂は地べたにはいつくばっているシンたちに話しかけた。

「おい、シン、真、新、大丈夫か、動けるか。」

「す、すまねえアニキ、また迷惑かけて・・・」

「あやまってるばあいじゃねえ。口がきけるなら、体を動かせ、こっから脱出するぞ。」

「はい、アニキ・・・」

なんとか三人は返事をしたが、かなりダメージを受けているようだった。

(くそう、何とかしねえと。加藤のやろう本気で消すつもりだ。)

藤堂は必死で考えたが、絶体絶命のピンチだった。あいては加藤をはじめ銃を構えた男が二人、関東でも有名な銃使いだった。残りの二人もごろまきにかけては名の通ったやつらだった。芹沢は戦力にならないとしても、瀕死の三人といかに渋谷最強の藤堂といえど右足に弾を受けた状態で二丁の拳銃と五人の男の前では覚悟を決めなければならない状態だった。


その時である、ゴロロロロと特徴のあるエンジン音が近づいてきた。十三埠頭の薄明かりの中に真っ白いポルシェスパイダーが藤堂たちと加藤軍団の間に割って入った。加藤たちは一瞬おどろき銃を隠すようにしたが、ポルシェから降り立ったものを見て加藤たちはおろか、藤堂たちも目を疑った。


「まったく、なんで来ちゃったのかしら。」


奈々はまるで気乗りのしない学界のパーティーにでも付き合いで顔を出したことに後悔しているような雰囲気だった。

「あっ姐さん・・・」

藤堂は信じられらいという眼差しで、それだけ言うのが精一杯だった。

「何回言ったらわかるのかしら、姐さんはやめなさいと言っているでしょう。」

このやり取りにあっけにとられたように突っ立っている加藤の後ろから、ある意味このやり取りの中心人物である芹沢が声をあげた。

「あっ阿部先生!!なぜここに・・・」

目を見開き驚きの声を奈々に向けた。奈々はちらりと芹沢に視線を向けると、うんざりとした表情でやれやれといった感じでつぶやくように言った。

「ほんとうに、何の腐れ縁なのかわからないけど、あなたのおかげでロクな事にならないわ・・・」

芹沢の声に我に返った加藤は驚きの表情にいやらしい笑みをプラスして声を出した。

「いやあ、テレビで見るよりずっと美人だなあ。ただ思っているよりはあんまり頭がいいとは言えないねえ。まさかこんなところへ現れるとは。」

にやにやしながら、奈々に向かって言った。奈々はまるで汚いものでも見るように顔をしかめて加藤を見ながらポツリとつぶやいた。

「はあ、その点については否定しないわ。本当にバカな真似をしている・・・」

その後は言葉にしなかったが心の中でつぶやいた。(確かにバカな真似、でも私の知の部分ではない方、戦いの方が勝ってしまった。仕方がない、これも私のひとつなのだから)もしこの心の声を神々と人間が共存していた金の時代に人々が聞いたとしたら、世界の終わりを予感して最大限の恐怖を感じたことだろう。しかし世は令和の日本、もし聞こえたとしても何のことか理解することはできないだろう。しかしここにいる全員は言葉の意味など関係なく世界の終わりにも似た恐怖を感じることになる。

「姐さん、早く逃げてくだせえ!ここは姐さんの来るとこじゃねえ!」

藤堂は足の痛みも忘れ叫び奈々と加藤たちの間に割って入ろうとした。奈々はちらりと藤堂に視線を向けると軽く左手で制した。渋谷、いや東京最強とも言われる藤堂がいとも簡単に止まってしまってしまった。

「姐さん!だめだ、いくら姐さんでも相手は本職だチャカも持ってる。早く逃げてくれ。」

奈々はすっと髪をかきあげると加藤たちに向き直った。加藤はその奈々をみていやらしい笑みを浮かべながら言った。

「このまま消してしまうのはもったいないほどの器量だなあ。しかししょうがねえお嬢さんは見ちゃあいけないもの見ちまった。」

藤堂はあせった。(こいつは本気で全員消すつもりだ、何とか姐さんだけでも逃がさないと)どうしたらいいか考えがまとまらないうちに奈々は藤堂たちと対峙したときと同じ用に無造作に加藤に近づいていった。

加藤は無造作に近づいてくる奈々に面食らったが両脇にある銃を手にした男どもあごでしゃくって。

「おいっとりあえず脅しでいいから一発おみいしてやれ。どうも世の中のことを良く知らないようだ。」

藤堂はあわてて奈々を止めようと叫んだ。

「だっ、だめだ姐さん!!」

「いいの、私に弾は当たらないわ。」

「なっ、何をバカなことを・・・」

藤堂は必死に止めようとした瞬間、パンッと乾いた破裂音が埠頭に響いた。

普通ならどんな人間でも、身がすくんでしまう音だった。しかし奈々はお構いなしに歩を進めた。加藤はちょっとあわてた感じで。

「おいっしかたねえ、ちょっと痛い目を見てもらえ。」

パンッと続いて破裂音がしたが、奈々の歩みが止まることは無かった。

「おいっ当ててもいいと言ってるだろうが、何してる。」

パンッパンッと今度は連続して破裂音がなったが何の変化もおきなかった。加藤の両隣の拳銃使いは先ほどとは打って変わって、あわてた表情になりもはや手の届きそうな位置まで迫っている奈々に向かって拳銃を構え引き金を引いた。乾いた破裂音が加藤の両脇で一発づつ響いたが奈々の歩みが止まることは無かった。

「バカな!バカな!」

誰が叫んだのか定かでは無いが、複数の入り混じった怒号がとんだ。既に手が届きそうなところまで迫っている奈々に対して先ほどまで余裕シャクシャクのにやけた表情をしていた加藤は目を見開きことばにならないアワアワといった音を発していた。それでも両脇の男たちは奈々に対してつかみかかろうとした。

「近くが海でよかったわね。」

確かにそう聞こえた瞬間、奈々の後ろで固唾を呑んでいた藤堂たちの更に後ろの海で二つの水しぶきがかろうじて見え、一つに重なった入水音が響いたと同時に加藤の両脇の拳銃使いの姿が消えた。

「なっ何だと!!」

加藤が叫ぶと同時にシンたちをボコボコにした屈強の男たちが奈々に飛び掛ったように見えたがさっきと同じ場所に数本の水柱とドドドボンというやや乱れた水音が響いただけだった。

「何なんだ!お前はいったい何なんだ!」

気がつけばそこにはとても信じられないと目を見開いた加藤と顔面蒼白になった芹沢が残されただけであった。

「お前呼ばわりするとは失礼な人たちね。まあ最初から礼儀が通用する人たちとも思えないけれど。」

そういいながら無造作に近づいてくる奈々に加藤が挑みかかったが当たり前のように似たような場所に水柱が上がっただけだった。

「芹沢さん、あなたの方が反社会的な団体とつながっていたんですね。悪いことは言いません、自首をお奨めしますわ。」

そう言うと奈々はアワアワと舌がもつれてことばにならないことばを発している芹沢に対してクルリときびつを返すと、既に立ち上がったシンたちチャラ男三人組みと茫然自失となっている藤堂の方に歩いてくると。

「本当にあなたたちはろくなことをしないわね、おかげで余計な事に首を突っ込んじゃった・・・とにかく私は帰るわよ、あなたたちもさっさと引き上げたほうがいいんじゃない。」

そう言うと奈々はポルシェに向かって歩いていった。ようやく我を取り戻した藤堂が、

「あっ姐さん、おっお怪我は・・・」

姐さんと呼ばれたことにうんざりした表情を見せた奈々は藤堂に向き直ると、やや厳しい口調で、

「怪我してるように見える?」

「いえっあの、その・・・」

「私の心配よりも自分たちの心配をしたらどう。あなたの後ろのお騒がせ三人組、そうとうのやられ方じゃないの。」

そういわれて、気にかけてもらったお騒がせ三人組ことシンたちはそれだけで全快したように顔を赤らめて。

「あっ姐さん!ありがとうございます。」

と声をそろえて返事をした。藤堂は三人組みを恐ろしい目でにらみつけると、打って変わって先生に甘える小学生のように、うったえかけた。

「あっ姐さん、俺も脚を打たれていて、大変なんです。」

奈々はやれやれと首を振ると、

「とにかく早く帰れ!私も帰る。」

そう言うとポルシェに乗り込んだ。遠くでパトカーのサイレンが聞こえたような気がした。

次から新展開。

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