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「ルイス……? なにを言って……!」

「グレン様。あなたももう18歳です。いつ番を見つけたって、おかしくありません。私は、あなたが番を見つける前に……。番だけを愛するようになる前に、あなたの情けが欲しいのです」


 ルイスは、グレンの胸にすがりつく。

 この機会を逃したら、次はない。

 長年にわたって彼を想い続けたルイスの気持ちは、もうとまらなかった。

 間違いだったと思われてもいい。後悔されてもいい。 

 明日には、番を見つけてルイスのことをきれいさっぱり忘れてしまってもいい。

 自分でも身勝手だとは思ったが、一瞬だけでも彼の愛をもらえるかもしれないタイミングは、もう残されていない。


「グレン様……。あなたが運命の人を見つける前に、思い出をください。一夜だけでいい。責任なんて、とらなくていい。今日のことは、忘れてしまってかまいません。だから、今だけでも」


 ルイスの必死の訴えに、グレンは切なげに顔を歪ませる。

 グレンには、自分にすがりつく彼女を抱きしめ返すこともできない。

 グレンだって、ルイスに触れたいと思う。彼女が身も心も委ねてくれたら、どれだけ幸福なことだろうと思う。


 この国の貴族は、性的な接触に厳しい。婚約後でも、正式に結婚するまで関係を持たない者も多い。

 婚約者もいなければ、遊びまわっているような噂もないルイスは、おそらくそういった行為の経験もないだろう。

 ここでグレンが手を出せば、未婚の女性の初めてを奪うことになる。

 しかも、番を見つけてしまったら、初めてを奪ったくせにルイスを放り出すことになるのだ。

 そんなことは、したくなかった。


 ルイスの香りと、柔らかな身体の感触が、グレンに届く。

 好いた相手の温もりに、頭がくらくらした。

 それでもなんとか耐えようとしたグレンだったが、次のルイスの言葉で、覚悟をきめることとなる。


「グレン様。私は、ずっと前から、あなたをお慕いしておりました」

「……!」


 もう、グレンの理性は持たなかった。

 グレンの腕が、ルイスの体にまわされる。

 抱きしめられたルイスもまた、より強く彼に身体を寄せた。

 グレンも、初めて触れた彼女をぐっと抱え込んで。

 けれど、自分は獣人の男だから。愛する彼女を壊さないよう、力の加減には注意を払った。


 ルイスは、長年押し殺していたのであろう想いを、自分に伝えてくれた。

 ここまでして自分を望んでくれる彼女の気持ちに、応えたい。

 番の呪いに、ルイスへの想いを消されてしまう前に、彼女に触れたい。

 グレンは、彼女の望み通り、一夜限りの思い出を作ることを決めた。


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