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【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました  作者: はづも
3章 番の愛と呪い

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10

「あの、これは……?」


 ルイスとグレンが、すれ違いを解消した翌日。

 クラークに呼び出されたルイスは、ミリィの服を着せられて、戸惑っていた。

 ちなみに、靴もミリィのものをはいている。

 ミリィのほうが背が高いため、ルイスが着るとやや丈が長くなる。

 裾を引きずらないよう、丈が短めのワンピースが用意された。

 流石に男性のクラークが姉の服を手渡したり、ルイスを着替えさせたりするわけにもいかず、ミリィもその場にいた。

 

「可愛いわ、お義姉さま! 私には少し可愛すぎるデザインだったのだけど、お義姉さまなら着こなせるわね!」

「ミリィにも絶対に似合うと思いますよ?」

「ふふ、ありがとう。お義姉さま」


 自分の服をルイスに着せたミリィはご機嫌だ。

 可愛すぎるデザインだった、なんてミリィは言っているが、それは彼女にクールビューティーのイメージがあるからだろう。

 素の彼女を知るルイスからすれば、可愛すぎて似合わない、なんてことは絶対にないと思えた。

 思ったことを素直に言えば、嘘はついていないことがわかったのか、ミリィも嬉しそうに笑った。


「お兄様ってば本当にでかしたわあ……」

「私も、こんな素敵なご家庭に迎えていただけたこと、グレン様に感謝しないとです」


 なんてふうに、義理の姉妹がきゃっきゃと話し始める。


 ルイスは、ミリィがこの服を自分に譲るつもりなのかと思った。

 自分には可愛すぎた、義姉なら着こなせる。話の流れから、そのくらいしか思いつかなかったのだ。

 しかし、真意は違ったようで。


「仲がいいのはいいことだけど、本題いかせてくれる?」

「あっ、ごめんなさい、クラーク。私ったら、つい」


 話が進まない気配を感じたクラークが、流れを切る。

 女子同士で盛り上がってしまった、とミリィは少し照れていた。

 男二人に囲まれて育ったミリィは、お姉さんが欲しいと思っていた。

 だから、義姉であるルイスと楽しく話せることが嬉しくてたまらないのだ。


「ルイス義姉さん。この格好で、行ってきて欲しい場所があるんだけど」

「行ってきて欲しい場所、ですか」

「うん。兄さんの仕事部屋のほうで……」


 そうして、クラークはルイスに具体的な位置を指示していく。

 クラークに指定されたのは、グレンの仕事部屋からは少し離れた、階段の途中。

 彼が言うには、今、グレンは二階の仕事部屋にいるそうだ。

 アルバーン公爵邸に、二階に続く階段は複数ある。

 クラークが選んだのは、その中でも、最も遠い、とまではいかないまでも、グレンの仕事部屋に近いわけでもない階段のおどりばだ。


「ここに立って……。なんというか……『会いに行きたいけど仕事中だから迷惑かな、どうしよう』って感じの動きをして欲しくて」

「あ、会いに行きたいけど迷惑かな、という動き」

「うん。いけそう? あ、あと、足音はなるべく立てずに」

「やってみます……!」


 なんだかよくわからなかったが、ルイスはクラークの指示を実行。

 これ以上進んでいいのかどうかを迷うかのように、踊り場でとまって。

 あとは、ちょっとだけ身体を左右に動かしてみたり、数歩戻ってからまた進んだりを、何度か繰り返した。

 すると、徐々に足音が近づいてきて。


「ルイス? どうした? あんなことがあった後だし、話したいことや用があれば遠慮しなくても……」


 と、仕事部屋にいたはずのグレンがやってくる。


「ん、それ、ミリィの服か? よく似合ってる」

「あ、ありがとうございます……」

「それで、どうしたんだ? 今は急ぎの仕事もないし、俺の部屋に移動しようか?」

「いえ、えっと……」


 ここから先はどうすれば、と、ルイスはちらちらと後ろを振り返る。

 一階で、クラークとミリィが待機しているはずなのだ。

 そんなルイスの気持ちを感じ取ったかのように、クラークがすっと姿を現した。


「うん。思った通りだね。協力ありがとう、ルイス義姉さん」

「クラーク? 思った通りって、どういうことだ?」

「兄さんは、ルイス義姉さんがここで迷っているのがわかったから、ここまで来たんだよね?」

「ああ。俺が仕事中だから、遠慮しているのかと思って」

「服も靴も変えてるのにこの距離でわかるの、きもちわる……」

「おい。言っておくけど、番を見つけたらお前もこうなるんだからな。で、これは一体なんのつもりなんだ?」


 呆れたように息を吐きながらも、グレンは階段をおりていく。


「獣人の、番を探知する能力を試したんだ。これと似たようなことを、カリーナに対して行う。そうすれば、彼女が嘘をついていると証明できるかもしれないから」

「なるほどな。本当に番であれば、俺のように気配で探れる。それができるかどうか試すってことか」

「うん。検証のためとはいえ、兄さんがルイス義姉さんの居場所を大体探れるのがわかって、ちょっと気持ち悪かったけど」

「わかるんだから仕方ないだろ……」


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