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【電子書籍化】最初で最後の一夜だったのに、狼公爵様の一途な愛に蕩かされました  作者: はづも
3章 番の愛と呪い

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「……ねえ、ルイス義姉さん。僕たちからも、ちょっといい?」


 クラークの声に我に返ったルイスは、はっとしてグレンから離れる。


 抱き合う姿を見られてしまった……!


 と焦ったが、クラークとミリィが、そんなことは気にせず真剣な表情をしていたから。

 ルイスも、動揺を表に出すことなく、彼らに向き合った。

 

 ルイスがアルバーン邸に引っ越してきた日、四人で話した東屋へと向かう。

 相変わらずメルヘンチックな空間である。

 あとで知ったのだが、生垣の先にはお花畑と可愛らしい東屋が……というこの庭の作りは、ミリィが考えたものらしい。

 女性騎士志望の、クールビューティーな彼女。しかし本来の姿は、ちょっと取り乱したりすることもある、可愛いもの好きの女性のようだった。


 それぞれ席につき、使用人にお茶や菓子の準備をしてもらったら、下がらせる。

 使用人が離れたことを確認すると、クラークは、


「まあ、あの様子なら、もう大丈夫かもしれないけど」


 と前置きする。

 あの様子、というのが、先ほどグレンに縋り付きながら本音を吐き出し、抱き合ったあの場面のことであろうと理解したルイスは、恥ずかしさから頬を染めた。


「今回の騒動について、僕たちからもルイス義姉さんに話がしたかったんだ」

「お義姉さま。兄は、あなたが番であると嘘をつくような人ではないわ。それに、もしも嘘でもいいから結婚したいと思っているなら、もっと早くやるもの」

「そう。ルイス義姉さんだって、兄さんと同い年なんだからもう18歳でしょ?」


 クラークの言う通り、二人は同い年だから、ルイスも18歳だ。

 ルイスが頷いたことを確認すると、クラークは話を続けていく。


「ルイス義姉さんも子爵家の娘だ。18ともなれば、いつ他の男と婚約したっておかしくなかった。既に婚約済みだって不思議じゃない」

「もしも兄が、嘘をついてでも初恋の人と結婚しようとする男だったら、もっと早く……15歳や16歳のときにそうしているはず。お義姉さまが、他の人と婚約してしまう前に」


 言われてみれば、たしかにそうだった。

 家の事情などで個人差はあるものの、この国の貴族は、10代後半のうちに婚約を結ぶことが多い。

 ルイスは、既に婚約適齢期。実際、グレンの番であると判明する前は、縁談なども持ち上がっていた。


 アルバーン家の獣人一家が眩しすぎるためか、ルイス本人はいまいちわかっていないのだが――ルイスは、男たちがぜひ自分の元へ、と望むような美人だ。

 ふわふわの柔らかそうな金髪は思わず触れたくなるし、優しい緑の瞳には、もっと見つめて欲しくなる。

 白く滑らかな肌に、小ぶりな唇。

 女性の中でもやや小柄だが、そこがまた、彼女の愛らしさを引き立てており。

 しかし、胸は服の上からでもわかるほどに豊満で。

 優しい性格の小動物のように愛らしいが胸は大きい、というアンバランスさが、男を狂わせる。


 そんなルイスを自分の妻に、と望む貴族の令息や、地元の有力者は多かった。

 それでもルイスが婚約していなかったのは、グレンへの想いが断ち切れていなかったからだ。

 彼が嗅覚を発現させ、自分が番ではないとわかったら。己の身の振り方は、そのあと考えようと思っていた。


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