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宝玉の奪還者  作者: RU-HA
第一章:始まりの地
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テーダルトの町


 ガラガラと二体の魔物が引く馬車が街道を進む。

 そしてやがて城壁が見えた。

 それなりに立派な城壁に守られているこの町の名前はテーダルトというらしい。カリーナから事前情報として教えられたのが、身分証のない俺は町に入る前に検査を受けるということだ。それに異常がなかったら町に入ることが出来るという。因みに、税金とかは無いのかと聞いたら払っとくと笑顔で返された。いつか倍々にして返す。絶対に。


 カリーナと話ながら馬車に乗っていたら城門まではすぐだった。カリーナは今まで乗ってなかった操縦席に座る。なんでも、乗っていないと魔物が暴走したように見られるらしい。なんだそりゃ。

 城門の前には二人ほどの甲冑を着た騎士の男が立っていた。二人の騎士は持っている槍で門を塞ぐ。


「魔物紋を見せろ」

「それから、身分証もだ」


 何処か、態度か悪いように思う。これがカリーナの言う受けが悪いの一端なのだろうか?


「どーぞ。それから、レン君」

「ああ」

「ッ! 魔物か!」

「人間だろ! どっからどう見ても!」


 騎士の男は謝るわけでもなく俺をジロジロと見る。


「……ほぉ。魔物娘が人間を連れてるとはな。それか、魔物の擬態だったりするのか?」

「っ。てめ-ー」

「レン君」


 俺が怒鳴ろうとするとカリーナに止められた。


「……身分証がないんだ。検査とやらをするんだろ」

「そうか、ついてこい。化けの皮を剥いでやる」


 もう一人の騎士はゲラゲラと嗤う。随分と、治安が悪いらしいなこの町は。



 俺が連れられたのは城門に付けられた小部屋だった。そこには一人の老人が暇そうに座っていた。その老人は聖職者のような白銀に包まれた格好をしており、その横には杖が立て掛けられている。


「じいさん、仕事だ」

「おや、そうかい」


 老人はよっこらせと立ち上がり、杖に頼りながら俺の前に立つ。


「さてさて、何をすればええんじゃ?」

「コイツにジャッチを掛けてくれ。だが、あまり近づきすぎない方がいいぞ? 魔物が化けてるかもしれん」


 コイツ、まだ言ってんのか。


「はぁ……まぁたテイマーの嬢ちゃん関連で不満を言っておるのか? 若いの。テイマーの嬢ちゃんは冒険者協会から呼ばれた実力者じゃろうに」

「魔物使いを信じろというのか? 馬鹿馬鹿しい。即刻あの魔物どもをミンチにしてやりたいわ」


 我慢だ、我慢。カリーナに迷惑は掛けられん。


「はぁ……もうええ。さて、ジャッチじゃったのう」


 老人は騎士から俺に向き直り俺に杖を翳す。

 そこから老人は何やら小声で呟き始める。


「(これは……詠唱か? まあ、俺には関係ないか)」


 魔術本を使えば無詠唱で魔法が使えるしな。だが将来的には覚えたいよな。異能に頼りすぎるのも危険な気がするし。

 やがて老人は詠唱が終わったのか魔法を唱える。


「『魔法:ジャッチ』」

_ _ _ _ _ _

 異能:魔術本が発動されました。

 魔法:ジャッチが登録されました。

<備考>

 精神魔法の一種。人の善悪を判断する。

<内容>

 精神魔法:精神感応

 原魔術:鑑定

 ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄

 あ、登録された。って備考結構アバウトだな。


「む? お主……まあええ。おい若いの。この方を通してやれ」

「この方……? ふん、まあいい。まさかあの魔物娘が人間とつるむなんてな。明日は毒が降るかもな」


 コイツはいちいち小言を言わなければ死んでしまう呪いにでも掛かってるのか? 逆に興味出てきたぞ?



 小部屋から出た俺は荷馬車に乗る。それを確認したカリーナが魔物達の歩を進めた。

 何とか、実害なく町に入ることが出来た。俺がほっ安堵しているとカリーナが口を開いた。


「ゴメンね。嫌な気分だったでしょ?」


 そんなことはない。と言いきりたかったが、俺が短気なあまりあの場で突っかかろうとしたのを見られているし、否定するのも違う気がした。


「……確かに嫌な気分になったが、それはお前の所為せいじゃないだろ。謝ることじゃないぞ」

「そーかな……?」

「そうだよ。それよか、冒険者協会ってのは近いのか?」

「……うん! もう着くよ!」


 カリーナは再び笑顔を直し俺に振り返る。その笑顔はやはり、何処か無理やり作ったような、痛々しい笑顔だった。


 * * *


 馬車を専用の場所に置いた俺たちは冒険者協会の扉の前に立つ。扉を開ける前から騒がしい声が聞こえてくる。カリーナは扉を開けた。騒がしかった雰囲気は一瞬にして冷えきり、嫌悪的な視線がカリーナに集まる。

 そんな中でもカリーナは臆することなく歩き始める。俺はそれに追従するようについていく。

 やがてカリーナは一人の受付嬢の元まで歩き着いた。


「リザさーん。ただいまー」


 カリーナは受付嬢--リザさんに笑顔を作り手を振る。そんなカリーナの声は先程までの声のような元気さはない。


「お帰りなさい、カリーナさん。度々、申し訳ございません」


 リザさんはカウンターにおでこがぶつかりそうになるまで深々と頭を下げる。


「いーよ、いーよ。リザさんの所為じゃないよ」

「そんな訳ありません! 私は冒険者職員の特別監視委員です。冒険者の狼藉は全て私の責任です」


 リザさんは申し訳なさそうにもう一度頭を下げる。城壁にもいた老人もそうだが、テイマーを理解している人もいるようだ。


「そーかなぁ?」

「そうです! ……って、貴方は?」


 リザさんはどうやら俺に気が付いたようだ。


「あ、そうそう! この人はレン君だよ!」

「初めまして、レンです」

「はい、初めまして。冒険者登録ですか?」

「はい。お願いします」


 リザさんが俺の前に用紙を一枚出す。なんでもカードを作るには必要事項を書かなければならないらしい。出された用紙に必要事項を書き込み。町の入り口でやったジャッチの魔法。犯罪歴の確認などをする。


「はい、これで大丈夫です。ではカード作成料として1000ルタいただきます」

「……お金、掛かるんですね」


 ルタとは、この世界の通貨の名称である。詰まるところ、お金が掛かるのである。


「……カリーナ、頼めないか?」

「ふっふーん。任せなさい!」


 カリーナはカウンターにダンッと銀色の硬貨を置く。


「レンさん、男してそれでいいんですか?」

「一生を掛けて返していくつもりです」

「別にいいのにこれくらい」

「良くない。お金の問題ってのは大事だぞ。命に掛けても絶対に満額以上を返すからな。覚悟しろ」

「ごくり……。か、覚悟してるっ!」


 ……なんとか、カリーナが本調子に戻った、気がする。よかった、よかった。


「では、これが冒険者カードとなります。紛失等をしてしまった場合、再発行が出来ますがそれなりにお高いので御気を付けください」

「はい。ありがとうございます」

「それから、敬語を使えるのは素敵ですが冒険者になるからにはあまり使わないことをおすすめしますよ。基本舐められますから」

「そうなんですか? ……なら、そうするよ」

「はい。改めて、冒険者協会特別監視委員、リザです。今後からよろしくお願いします」


 * * *


 冒険者登録を終えた俺は早速依頼を受けていた。俺が今受けているのはリョマク草という薬草の採取依頼だ。薬草等の採取依頼は初心者なら誰もが通る道なのだそう。

 一文無しの俺にとっては今日の宿代もままならない状況。流石に宿代までカリーナに借りては男としてのメンツが……いや、今更かもしれないが。

 リザさん曰く、この依頼を達成すれば冒険者協会直営の宿屋に一泊できるというので早々に依頼を受けた。

 因みに、町を出た門は入った門とはまた別の門だ。あんな奴が居る門に誰が好んで通るのかという話だ。


 * * *


「行きましたね、彼」

「大丈夫かなぁ……?」


 カリーナとリザはレンの去る後ろ姿を見る。


「ところでカリーナさん。彼とは何処で?」

「帰りの途中の道だよ? 歩き疲れてたのかな? 座って休んでた所に声を掛けたの」

「ほぉ……」


 リザはレンの書いた用紙をまじまじと見る。


「何処か変なの?」

「えぇ、まあ。まず、出身がニホン村となっていますが、そんな村を聞いたことがない、ということが一つ。そして、その村を追い出された理由が口減らしというのも引っ掛かります。口減らしで追い出すなら非力な老人や女性になるはずです。さらに言えば、彼の格好です。あのように上質な服を着ながら、追い出されたというのは引っ掛かります」


 リザがレンの怪しいと思える部分を次々と挙げていく。


「ん~~~……。でも、ジャッチには引っ掛からなかったんだよね?」

「それは、そうですが……」

「ならいいんじゃない? 喋ってて悪い人じゃないって分かったし! それに、テイマーに悪い人はいない!」


 ムン!とガッツポーズをするカリーナ。それは数が少ないからでは? とも思うがリザは口には出さない。


「……まあ、それもそうですね。そんなことを一々考えていたら、冒険者協会の受け付けなんて出来ませんね」

「そーそー! 冒険者は全てを受け入れる!」


 カリーナは過去勇者の残した言葉をはにかみながら言った。それに対し、リザは何処か複雑な面持ちをしながらレンの書いた用紙を見つめるのであった。


ここまで読んで頂きありがとうございました。「ここおかしくない?」という指摘や「ストーリー矛盾してない?」ということがありましたらコメントしてくれると幸いです。

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