カリーナ
歩き始めてから約一時間が経過した。
そろそろ足が棒になりそうだ。いい加減、休憩しよう。因にだが、既にリーンに掛けた魔法は解除してある。
あー、しんどい。歩いて行ける距離なんて高が知れているが、それでも一時間歩いて着かないなんてどうなのよ神様よ。
にしてもあの魔法コンボ、流石に非人道的だよな。疑似催眠みたいなもんだし、悪用すればボロ儲け出来そうな気がする。うん、本当に使うのはやめよう。仮とは言え、俺は神様の使徒的な立ち位置にいるらしいしな。
* * *
途中休憩をして約10分ほど。そろそろ歩き始めようかと考えていたその時、俺が通って来た方角から馬車が一台こちらに向かってきているのに気が付いた。
心の中で拾ってくれないかと淡い期待を持つが所詮は空想。そろそろ歩き始めようかと立ち上がった、その時であった。
「おーーい!」
馬車の方角から女性の声が聞こえていた。なんだと思い俺は馬車の方を見る。見ると、馬車から身を乗りだしこちらに手を振っている人物が見えた。俺は辺りを見渡すが他には誰もいない。となれば、手を振っている相手は俺だろう。
俺は一先ずその場に立ち止まる。
なんだろう? 当たり前だが、この世界に知り合いなんて居ないぞ。
馬車はガラガラと音を立てながらこちらに近づいてくる。近づいてくる間に分かったが、どうやら馬車を引いているのは魔物のようだ。テイム系か? 面白そうだな。
そうして、やがて馬車は俺のすぐ横で止まった。
俺は馬車から顔を覗かせた少女を見る。青色ショートの髪に合わせたような水色の瞳。見た目的に恐らく年下の彼女は元気っ子娘と言ったところか。
「ねぇ君、こんな所で何やってんの?」
「あーっと、実は……」
俺は神様と考えた口実を話す。
「実は、口減らしで村を出たばかりだったのですが、その直後に追い剥ぎに合いまして。戦いは今一なので、持っていた物全部渡して、その間に逃げてきたんです」
「へ~、大変だったんだね?」
「えぇ。まあ」
少女は哀れみの視線を向けてくる。
まあだが、間違いは言っていない。俺は村(地球)を出たばかりの時に追い剥ぎ(スマホやら腕時計)に合って、命からがら(魔物に襲われて)逃げ来てきたのだ。うん、解釈の問題だ。
「よかったら馬車に乗る? 町までもうすぐだよ?」
「いいんですか? 俺としてはありがたいですが一文無しですよ?」
「いーよ、いーよ。困った時はお互い様ってね」
ニコッと、彼女が笑う。ヤバイ、惚れそう。
* * *
少女--カリーナの馬車に乗り込んだ。馬車の中は電車で言うロングシートのような作りになっていて、奥には樽やらの荷物が置かれている。そして普通と違うのは馬車の中に二体の魔物--鳥形の魔物と空飛ぶ謎の魔物が居ることと、カリーナが馬車の操縦をしていないことだ。
「なるほど。魔物が馬車を引けば操縦要らずなのか」
「そだよー。指示を出せばその通りに動いてくれるからね。まあ、この間が暇になるんだけどねー」
「それで、俺を拾ったのか?」
「まーねー!」
カリーナは現在、冒険者として依頼を受けた帰りだったという。そうして暇をしていたところ、暇を潰せるかなということで俺を拾ったらしい。あるんだな、冒険者。因みに、馬車に乗って自己紹介をした辺りで敬語を使うのを止めろと言われた。なんでも、敬語が分からないらしい。
「にしても、大人しいなこの魔物。名前はあるのか?」
「あるよー! えーちゃん!」
「え、えーちゃんか……」
現在俺の膝に座っている魔物。見た目は何処か神々しく、黄色というよりは金色に近いオーラを纏っている魔物を見る。
「でも珍しいね。えーちゃんがそんなに懐くの」
「そうなのか?」
「うん! 多分、それほどレン君の心が綺麗だからだね!」
「心が綺麗って関係あるのか?」
「さー? でもえーちゃんはエンジェルさんだからね。多分そうでしょ!」
へー。えーちゃんってエンジェルなんだ……ん?
「エンジェル?」
「うん。エンジェル」
エンジェルって、あのエンジェルか? 神様の仲間の、エンジェル? マジで?
「まー、正確には教会の人たちによると、レッサーエンジェルらしいけど、しーらねっ!」
「しーらねって」
そうか、レッサーか。なら納得か? にしても、レッサーとはいえ神様の仲間をテイム出来るってカリーナ凄いんじゃないか?
というかこれ懐いてる理由、俺が神様の使徒だからだろ。
「……テイムか。俺も覚えたいな」
「ッ! ほんとにッ!?」
「えっ? あぁ、まあな。面白そうだし」
「~~! やった、やった! それじゃ、テイム仲間だね! そうだよねッ!?」
「お、おう……」
なんだ、そんなに異様に喜んで。
あと立ち上がってはしゃぐの止めよう? 馬車引いてる魔物の二人ビックリしてるよ。それに膝で寝てた鳥形の魔物も床にずり落ちてるよ。
「随分と喜んでくれるんだな?」
「そりゃぁそうだよ! テイマーの輪っかが大きくなるんだもん! 喜ばずにはいられないよ!」
にしたって、喜びすぎなんじゃないか? 何か、違和感を覚えるんだが……。そんな俺の様子を見たのか、カリーナは先程までのテンションが嘘のようにポツリポツリと話し始めた。
「……実は、テイマーってあんまり人気無いんだ」
「人気無いって……なんで?」
「色々あるらしいんだけどね。一つが、そもそも実力が無いから戦えるほどの魔物をテイム出来ないっていうの」
あー、確かにそれはあるかもな。魔物をテイムしなきゃ戦えない、その魔物をテイムするには戦わなきゃいけない、でも戦うには魔物をテイムする必要がある……不の無限ループだ。
「あと、魔物があんまり受けが良くないってこと」
「受け? 誰の?」
「町に住んでる人とか、他の冒険者とか、依頼主とか」
なるほど。テイムしているとはいえ魔物は魔物。やはりまだ畏怖の対象として見る人もいるんだろう。だが、冒険者も受けが良くないってのはどうなんだ?
「他にも色々あるけど、これがよくある原因かなぁ。もっとテイムが知られればいいんだけどねぇ」
「なるほどなぁ」
「今さらだけど、もしかしたら町の人たちの対応がちょっと良くないかも知れないけど、大丈夫?」
「大丈夫だ。こっちは乗せてもらってる身だからな」
「そう? よかった!」
そう言い、カリーナは笑った。それは少し付き合いがあれば分かるような、不格好な作り笑いであった。
* * *
俺がカリーナの馬車に乗り込んでから三十分ほどが経過した。先までの雰囲気は払拭され馬車内は笑いに包まれていた、そんな時であった。
「ピーッ! ピーッ!」
唐突にカリーナの膝で寝いてた鳥形の魔物ことせーちゃんが鳴き始めた。
「どうしたんだ? せーちゃん」
「せーちゃんは『魔物が来たッ!』って教えてくれてるんだよ! せーちゃんはあたしのチームの中でも索敵役なんだよ!」
「へー、凄いんだなせーちゃん。つーか、魔物ってマジか」
「ふふん。だいじょーぶ! 魔物はふーちゃんとうーちゃんの担当だからね!」
そういってカリーナは馬車を引いていた魔物--グレーター=ファイアー=ウルフことふーちゃん、グレーター=ウォーター=ウルフことうーちゃんの馬具を外す。……今さらだが、カリーナの名前の付け方って頭文字伸ばしてちゃん付けただけ……まあ、いいか。
魔物のネーミング的に二体は多分魔法を使ってくれる。その魔法を登録すれば俺の攻撃手段が手に入るって寸法だ……ほんっと、カリーナにおんぶに抱っこだな。借りがどんどん大きくなっていく。
なんて考えていると二体の魔物が姿を表した。
「なんだ? あの魔物」
「? 普通のゴブリンだよ? あれ、知らない?」
な、なんだこの反応。知ってるのが当たり前なのか? 一応、合わせるか。
「あー、なんだゴブリンか。背景と同化しててあんまり見えなかったー」
「そっかー。でもそうだよね。ゴブリン知らないなんておかしいもんねー」
おかしかったみたいだ。よかった合わせといて。
「グッギャラグギャ!」
「ギャーランドゥ!」
目の前の魔物--ゴブリンはふーちゃんとうーちゃんに地団駄をして威嚇する。だが、二体の魔物はそんな威嚇にビビるほどやわではなかった。
「いけっ! ふーちゃん、ファイアーボルト! うーちゃん、ウォーターボルト!」
カリーナが二体の魔物に指示を飛ばすと、二体とも指示を受け取りゴブリンに攻撃を始める。
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異能:魔術本が発動されたました。
魔法:ファイアー=ボルトが登録されました。
<備考>
火魔法の一種。上位版ファイアー=ボール。目の前にサッカーボール大の火球を飛ばす。
<内容>
火魔法:ファイアー=ボール
原魔法:ボルト
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異能:魔術本が発動されました。
魔法:ウォーター=ボルトが登録されました。
<備考>
水魔法の一種。上位版ウォーター=ボール。目の前にサッカーボール大の水球を飛ばす。
<内容>
水魔法:ウォーター=ボール
原魔術:ボルト
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うっし。追加されたな。備考によればどちらも上位版らしいし、強力な攻撃手段が手に入ったな。ここからさらに分解すれば相当強くなるだろうな。
「よーしっ! よくやったよ、ふーちゃん、うーちゃん!」
そうして、気が付けば魔物との戦闘は終わっていた。流石はグレーターの名の付く上位個体だな。さて、早速魔法の分解といこうか。
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異能:魔術本が発動されました。
魔法:ファイアー=ボルトの分解が完了しました。
火魔法:ファイアー=ボール及び、
原魔術:ボルトが登録されました。
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異能:魔術本が発動されました。
魔法:ファイアー=ボールが登録されました。
<備考>
火魔法の一種。目の前に野球ボール程度の大きさの火球を飛ばす。
<内容>
原魔術:ファイアー
原魔術:ボール
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異能:魔術本が発動されました。
魔法:ウォーター=ボルトの分解が完了しました。
水魔法:ウォーター=ボール及び、
原魔術:ボルトが登録されました。
 ̄  ̄  ̄  ̄  ̄  ̄
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異能:魔術本が発動されました。
魔法:ウォーター=ボールが登録されました。
<備考>
水魔法の一種。目の前に野球ボール程度の大きさの水球を飛ばす。
<内容>
原魔術:ウォーター
原魔術:ボール
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よーし。分解完了。これで原魔術が三つ増えたな。さっき登録された魔法との組み合わせやらを色々と……。
ってあれ? これは……
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魔法:感情作成
<備考>
上位者権限により使用を禁止されました。
<メッセージ>
今後、このような禁忌に触れるような魔法は禁止させていただきます。By.神様
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あちゃー、まあ流石にそうだよなぁ。まあ今後はもう使うつもり無かったし、別にいいんだけどさ。
「ちょっとレンくーん! ふーちゃんとうーちゃんの勇士ちゃんと見てた~?」
「え? あ、ああ! 勿論、見てたよ」
「ほんとに~?」
「ほんと、ほんと」
「ならいいんだ! さあ! ふーちゃん、うーちゃん! 発進!」
再び馬具を付けたふーちゃんとうーちゃんが歩き始めた。魔術本を見るのはあとになりそうだな
ここまで読んで頂きありがとうございました。「ここおかしくない?」という指摘や「ストーリー矛盾してない?」ということがありましたらコメントしてくれると幸いです。




