反乱軍のリーダーは嫉妬する
かくして、私は正式に反乱軍のメンバーとなった。
どうやら、王国としてもディアール公爵の長女が生きていて、反乱軍に担ぎ上げられていると知って焦っているようだ。
反乱軍は、バッタバッタと正規軍をなぎ倒していった。
ヒロイスのステータスを見ると、ステータスの統率が100だった。
そりゃあ、数値化されててそれがマックス値だったら、軍を率いたら勝つよね。
こっちは、低ステータスであたふたしているのにずるいと思った。
話を聞くと、ヒロイスが、現世をこちらの世界に来たのは20年前のことで、赤ちゃんから人生をやり直しているから今年20歳になるということらしかった。
20年前から、この世界をやりこんでいるんだから、高ステータスにもなる。
こんなのチートだよと思った。
私の主な仕事は戦意を高揚させるスピーチだ。
王国がいかに庶民から搾取しているか。
自分がいかに正統な王家の血を引いているか。
己の正統性を戦争前に声高に叫ぶ。
私はヒロイスに利用されているに戦争の道具に過ぎなかった。
悪い男だとわかっていても、ヒロイスの甘い声にささやかれると、言う通りにしてしまう。
そんな自分も悪い女だ。
元無職童貞ニートおじさんというだけでも、罪深いのに、悪い女になっているのだから相当罪深い。
いつしか私の生活のほぼすべてにヒロイスが居るようになった。
私がいることで正統性を得た軍は、3倍の規模になり、王国も扱い切れない規模の組織になっていた。
音を上げた王国はついに和平案を持ち出してきた。
その条件とは、王子とシャルロッテ嬢の婚約、ヒロイスを正規軍に入れるというものだった。
使者から条件を聞いたヒロイスはワナワナと震えていた。
「シャルロッテを国に渡せというのか。ふざけるな!冗談じゃない!僕の女だ!絶対に渡すものか!」
大声でそう叫んで使者を追い返したのだ。
正直、この選択には驚いた。
私のことを好きだというのは嘘ではないと薄々勘づいていたが、戦略的にそうまずくない勘択を捨ててまで私を選んでくれてるなんて。
本当に、私のことが好きなんだ……。
私はひとりの女性として、ヒロイスの愛の重さを知ることとなったのでした。
その晩、いつも以上にめちゃくちゃベッドが軋んだ。
一生離さないぞという執念を感じた。
でも、どうしてなんだろう。
私の正体を知っているのに、なぜ私のことが好きなんだろう。
本当は、無職童貞ニートなのに。