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04村を救った

 少しして、アリエスが目覚めた。

 

 長い間、気を失っていたせいで意識がおぼつかずにキョロキョロとあたりを見渡してから、俺がいる事に気が付いた。


 それからジーっと目を合わせていると、少しして意識が戻って来たみたいだ。


「な、な、なっ……!」


 段々と顔が赤くなって行った。


「私に何をした! この獣め!」

「何もしてねえよ」


 本当に何もしてない。


 いや、まあ、あのスイカみたいなおっぱいを揉みしだきたいとか思ったが、実行には移していない。


 無理矢理手籠めにするのは性に合わないからな。


「くっ、殺せ!」

「殺さねえよ」

「何だと!」

「めんどくせぇな」

「なっ!」


 元気な奴だな。

 表情がコロコロ変わって面白い。


 ついからかいたくなる。


「なんだよ、おっぱいでも揉んで欲しかったのか? 痴女か?」

「そ、そんなわけがないだろう!」

「いや、襲って欲しいんだろ? その恰好も」

「え……? っっっきゃああああああ!」


 アリエスの悲鳴が響いた。

 

 アリエスが叫んだ理由は気絶した事で【換装】が解け、裸になっているからだ。


 この裸体のまま、気持ちよさそうに眠っている美女を前にして我慢するのは大変だった。


 俺、本当に魔王なのか疑いたくなるほど



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 元々、アリエスはオークロードを討伐しに来たのだ。


 その時に村に立ち寄って情報を集めていたので、村がこの近くにあると知っていた。


「全く、何故私が魔王の案内など……」

「何だ? じゃあ、身体で支払う方が良かったか?」

「…………本当に村人には何もしないと約束するんだろうな?」

「ああ。魔王は約束を守るものだ」

「それ、ちょっと違くないか?」


 いや、そんな事もないと思うんだが。

 魔王は大事な契約は守るものだ。

 信用問題にも関わるしな。


 そんな無駄話をしている内に村に辿り着いた。


 だが様子がおかしい。


 怒声の様なものが響いているし、何やら煙も見える。

 人が住んでいるなら薪を燃やしたりする事もあるだろうが、あの煙の上がり方は明らかに違う。


「まさか、誰かに襲撃されて!?」

「どうやらそうみたいだな」

「くそっ、魔王! 手を貸せ!」

「ふん。魔王と勇者が共闘か?」

「馬鹿者、これは共闘ではない! ただ、同じ敵を倒すだけだ!」

「まあ、いいだろう」


 その返事を聞くとアリエスは剣を換装して、村に向かって駆けた。


 山賊の数は十三人。手前にいる奴らはアリエスが倒すだろうから、俺は奥の離れている奴を仕留めよう。


「“礫と成りて撃ち抜け”」


 その辺に転がる石が宙に浮く。

 そして高速で飛んで行き、簡単に八人の頭蓋を粉砕した。


 これで俺の役目は終わりだ。


「泗水流 二の型 千羽(せんう)!」


 一方、アリエスはと言うと俺達に気付いて寄って来た山賊五人を飛ぶ斬撃で容赦なく切り裂いた。


 あっけなかったが、魔王と勇者を相手に山賊程度では荷が重すぎたか。


 とにかくこれで終わりだ。


 俺とアリエスは堂々と村へと足を踏み入れた。


「おお! 勇者様、助けていただいてありがとうなのじゃ……!」

「ご無事で良かったです、村長」

「ところでそちらの方は……?」

「えっと、この男は――――」


 何と答えようと悩んでいるみたいだ。


 魔王だと言えば、何故勇者と魔王が一緒にいるんだという話になる。いや、そもそも信じてもらえない可能性もある。


「俺は旅の者だ。途中でこの勇者に助けられてな。面倒だが、手伝った」

「…………」


 何だその目は、アリエスよ。


 嘘が吐けると思っていなかった、って顔をするな。


 だがその嘘で村長は納得した様だ。


「それはそれは……。では、何かお礼をしなければいけませんな」

「いえ、お礼だなんて――――」

「有難く頂こう」

「おい!」

「何だ?」

「お前、今」

「俺が動かなければ、村人の数人は殺されていたぞ? それに比べれば安いものだし、俺の働きに対しての正当な対価だ」

「ぬう……」


 何も言い返せずに黙った。


「それで、何をお望みで……?」

「家だ。家を寄越せ」


 ずっと前から、この世界に来てから考えていた。


 俺は働きたくないし、面倒ごとにも巻き込まれたくないのだ。


 だから


「家、ですか……。生憎と、この村でも家の数は少ないのじゃ」

「ならここには無いのか?」

「いや。……実は村から離れた場所に一軒だけ、誰も使っていない家があるのじゃ」

「ほう。それはいいな。それを貰おう」

「じゃが、一つだけ問題があるのじゃ」

 

 もったいつけずに早く言え。


「その家があるのは、エルフ領なのじゃ」

「エルフ……?」

「そうなのじゃ。数十年前に高名な魔法使いが住んでいたのじゃが、その家を使わなくなったので村に贈与してくれたのじゃ。じゃが、そこはあくまでエルフ領。ワシらが住むことも出来ずに長年放置していたのじゃ……」


 エルフ領にある家か。

 

 下手をすればエルフ達に勝手に住んでいる愚か者などと言われて、捕まる可能性もありそうだ。


 だが……。


「……うん。決めた。それをくれ」


 エルフ程度、魔王の俺からすれば怖くない。


 こうして、俺は家を手に入れた。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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