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03剣の勇者アリエス

 この眼で視て見ると女騎士を縛った縄には強力な封印の力が宿っている様だ。


 だが、傲慢で命令してしまえば縄は生き物の様に勝手に動いて束縛を解いた。


 拘束を解けて自由になったと言うのに、女騎士は手ブラをしたまま俯いて動かない。


「貴殿が魔王とは、本当の事か……?」

「ああ、まあな」

「……そうか」


 残念だ、そう呟いて女騎士はゆっくりと立ち上がった。

 見えそうになるが中々見えない。

 

 そして、女騎士は光に包まれた。


「…………【換装・破邪の鎧】」


 光が消えると女騎士は光り輝く純白の鎧を身に纏っていた。

 さっきと同じ鎧に見えるが、その内に宿る力は全くの別物だ。

 魔王を排除するための力が宿っている。


「剣の勇者アリエス、参る!」


 ゴウッ、と威圧感を出した。

 その威圧感はオークロード以上だ。


 だが、おそらくは女騎士が子の鎧を身に纏っていても


 面白そうだ。


「面白い。かかってこい」


 俺は女騎士――――いや、剣の勇者アリエスと戦う。


 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 最初に仕掛けたのはアリエスだった。

 地面を踏み出した瞬間に加速して、一瞬で移動して来て脳天に向けて剣を振り下ろす。


 この剣もただの剣ではない。

 鎧以上に力が込められている。


 それに対して、俺はその場で突っ立ったままだ。


「クッ、舐めているのか!」


 その姿に対して、アリエスは激怒する。

 当然だ。自分の渾身の一撃を防御態勢を取ろうともしないのだから。


「勇者、ねえ」

「何、だと……!?」


 だが、俺はその渾身の一撃を人差し指一本で止めていた。


 剣の勢いを支配した俺にとっては、剣が俺に辿り着くまであくびが出る程につまらない時間だった。


「この程度が全力か、勇者サマ?」

「ッッッ!!」

「おっ、頑張れ頑張れ」


 挑発すると、さらに力を出した。


 ググッと地面に足がめり込んでいく。


 この女、かなりの馬鹿力だ。

 力だけで俺を押している。


 これなら、少し乱暴しても大丈夫だろう。


「“荒れ狂え”」


 風がアリエスを中心にして収束し、嵐の様に吹き荒れる。


泗水流(しすいりゅう) 一の型 村雨!」


 だが、アリエスは嵐を一刀で消し飛ばした。


 これが斬撃の威力か。


 勇者の名も伊達では無いな。


 だが、アリエスはかなり消耗していた。


「こんな魔法、私は知らないぞ……! 貴様、一体何をした……!」


 知識が無いからと自分の無能をひけらかして睨み凄んで来る。


 ふむ。傲慢を知っているはずだが?

 ならばもう一度、教えてやろう。


「大気を支配しただけだ」

「っ、滅茶苦茶な!」

滅茶苦茶(それ)魔王(おれ)だ」


 その滅茶苦茶さにも、何故か納得してしまった自分に対しても、アリエスは戦慄した。


 だが、ここで剣を握る拳を緩めてはいけない。


 拳に力を込めて、また剣を握り直す。


 その諦めない姿を見て、イサミは不敵に笑った。


「ほら。さっさと来い。受けてやるよ」

「何て傲慢な……!」

傲慢(それ)魔王(おれ)だからな」

「クッ! 舐めるな!」


 アリエスは憤慨しながら剣を一度、鞘に納めた。

 

 あれは居合というやつだ。

 

 鞘に気が溜って行くのが分かる。


「泗水流 五の型 五月雨!」

 

 そして一気に放った。


 五度の斬撃が俺を襲う、が―――――。


「くっ、何故傷つかない!」

「魔王に傷つけられると思っているのか?」

「ああ、思っている!」


 魔王の皮膚は特別性だ。

 やわな攻撃一つで傷つけられるものではない。


 その一撃を受け止められたと言うのに、アリエスは俺を傷つけられると思っているらしい。


 また剣を鞘に納めた。


 まったく同じ所作だが、あの鞘の中に溜る気はさっき以上だ。


 これは、斬られる。


「泗水流 壱の型・裏 水面月!」

「“壁と成れ”」


 アリエスの斬撃は五度の斬撃に分けた威力を全て、一刀の元に集めた。

 そんなものを喰らえば、流石に魔王の皮膚とも言えど、傷は付いてしまう。


 ならば、俺は大気を何百層にまで固めて、圧縮して、壁と成して防いだ。


 これで終わりか? そう言いかけて、やめた。


 すでにアリエスは素振りする時の様に剣を頭上で振りかぶり、追撃の準備をしていた。


 しかもその剣には“恐怖”を感じた。


 殺すぞ、という殺気を孕ませた剣。


「どうした!? 俺はまだ、一歩も動かされていないぞ!」


 わざと挑発する。

 

 思惑通り、アリエスはさらに殺気を増した。


 もっとだ。俺を楽しませる、最高の一撃を寄越せ。


「泗水流 六の型 不動・岩窟の滝!」


 文字通り、その一撃にはアリエスの全てが乗っていた。


 全ての力も、己の魂も、これまでの努力も。


 その全身全霊の一撃は大地を砕き、砂埃を巻き起こす程の威力だった。


 しかし、いつかは砂埃が晴れ――――。


「……まあ、合格ってところか」


 最初の位置から俺の脚はかなり、動かされていた。


 魔王を力尽くで動かしたのは評価してやろう。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

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