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20舞闘会

 案内された部屋で着替えた。


 地球で言う所のタキシードってやつだ。


 こういうピシッとした服は好きではないが、嫌いでもない。


 まあ、たまに着る分には別にいいか、ぐらいには思っている。


 それから少しすると着替え終わったアリエスとルナがやって来た。


「へえ」


 ルナは黒いドレスだった。

 普段のルナはお世辞にも大人な女性とは言えない可愛らしさがあるが、裾から覗く太ももが妖艶さを醸し出していた。

 

 例えるのなら、まるで黒いアゲハ蝶の様だ。


「どうですか、イサミ様!」

「綺麗だぞ、似合ってる」

「恐縮です!」


 褒めてやると嬉しそうに笑った。


 こういう姿は少女らしいな。


「ふん。私には感想は無しか」


 すると反対側でアリエスが不貞腐れた。


 アリエスはルナとは打って変わって、美しい薄青色のドレスだった。

 おとぎ話に出て来る様なドレスで身長の高いアリエスには良く似合っている。


 こちらも似合っている。


 別にルナだけ褒めたってわけじゃないんだがな。


「悪かったって。綺麗だ」

「ふんっ。…………にへへ」


 頬を膨らませて、身体ごと顔を背けたが褒められた事を我慢できなかったらしい。

 思いっきりにやけている。


 普段、イサミが褒める事も滅多に無いし、適当に扱っていたからなぁ。


 ……普段からもうちょっと優しくしてやるか。


 そんなことを考えていると扉がノックされて、イヴァリスが入って来た。


「イサミ様と御一行様。舞踏会の会場へ案内致します」


 向こうの準備も終わったらしい。


 くるっと振り返り、アリエスとルナに手を差し出した。


「美女お二人にはエスコートしないとな」

「まあっ」 

「たく、お前は……っ」


 ルナは素直に、アリエスは少し不貞腐れながらも手を重ねた。





 イヴァリスの案内で連れられたのは、森のかなり奥地だった。


 かなり古い樹木が生え並び、中には樹皮面に苔が生えている個体もあった。

 エルフはこんな場所で舞踏会をやるのか、と一瞬苦い表情を作るが次の瞬間にそれも吹き飛んだ。


 蛍の様なものが美しく発光しながら飛び交い、エルフの音楽家たちが奏でる演奏がそれを際立たせて幻想的な風景が醸し出されている。


「綺麗……」


 ルナの口からも思わず、そんな言葉が漏れる程だ。


 アリエスも口には出さないがその光景に見惚れていた。


 ここでやるのか。





「ご機嫌麗しゅう御座いますわ、魔王イサミ殿」


 


 声がした方に振り向くとアリエスとルナに負けず劣らずの美女がいた。


 濃緑(エメラルド)の髪と同じ色の宝石をちりばめられたドレスを身に纏い、どこか気品差も感じる。


 この女がエルフ族の王女か。


「料理も沢山ありますので、是非お楽しみください」


 エヴァは手を出し、右に向けてゆっくりと動かした。


 よくある視線誘導の一種だが、まんまと乗っかって顔を向けてしまった。


 そこにはテーブルに並べられた豪華な料理があった。


 そして料理を見て、きゅるる~と一人の腹の虫が鳴った。

 大体誰かは察しているが、まあ相変わらず緊張感のない奴だ。


「……行ってきていいぞ」

「そ、そうか? では少し失礼して」


 かなり空腹だったんだな。


 早足で料理が並んでいるテーブルに向かって行った。


 アリエスはかなり燃費が悪いからな。

 普段から丼ぶり十杯分の米を食ってる。

 

 アリエスが料理が上手いのも、自分で口に合う料理を食したいと言う欲求がそうさせたみたいだ。


 単純に食べる事自体も好きみたいだし、並べられた料理があまりに美味しそうで我慢できなかったのだろう。


「ふふ。貴女も料理を楽しんでいらしたらどうですか?」

「いえ。私はイサミ様のメイドですから、お傍から離れるわけにはいきませんので」


 珍しくルナが強めな口調で言う。


 ルナもエヴァも花が咲く様に美しい笑顔なのに、何故か身の毛もよだつ寒気を感じた。


 両者の間に火花が散っているようにも見える。


 女の因縁ってやつか。何の因縁があるのか分からないが。




「で」



 

 ただ、このままじゃらちが明かない。


 ルナには悪いが、本題に移るとしよう。


 エヴァの顔がこちらに向いた。


「俺をどう殺す気だ?」


 この舞踏会がイサミを殺すためだけに開かれた事は、何となく分かる。


 さっきから、チリチリとした殺気が肌に刺さっていたからな。


 一瞬だけエヴァの眉がぴくりと動いた。

 ただ、それは動揺ではない。


 ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って感じだな。

 

「ふふっ。そんな物騒な、ここは舞踏会ですわ。そう、魔王様のための―――――」


 バッとエヴァが両手を広げた。

 次の瞬間に空間が揺らいだ。


 一瞬にして偽りの舞踏会の会場が正体を現す。


 そこは無駄な装飾が一つもない闘技場だった。


 観客席には剣や槍、弓矢を携えた大量のエルフがいる。




「エルフ族による、魔王の滅殺舞踏会ですわ♡」




 軽く数えただけでもエルフは一万はいそうだ。


 圧倒的な軍勢、地の利は向こうにあり、こちらは着慣れない正装を身に纏っている。普通に動きにくい。


 不利な状況だ。だが――――。


「最高のもてなしだな、エヴァ嬢。有難く楽しませてもらおう」


 ――――面白い。


 イサミは不敵に笑って挑発し、エヴァは微笑みながらエルフ達への号令で返した。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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