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1傲慢で強欲な

新連載です。よろしくお願いします。

 少し前に俺は交通事故に合って死んだ。


 たまたま交差点を歩いていた女の子に向かって、信号を無視したスポーツカーが突っ込んできた。


 別に助ける気なんて無かったのに、気が付くと体が勝手に動いていた。


 女の子を突き飛ばして、代わりにスポーツカーに轢かれた。

 数十mは吹き飛んだだろうか。

 何度も頭やら何やらを地面に打ち付けられた。

 最後にはグチャッとトラックに頭を潰された。


 別に未練なんてものはない。


 強いて言うならば、海賊王を目指す青年の漫画の最終話が見たかったくらいか。


 だがそれも、死んでしまえば俺と言う人格は消えるのだろう。

 

 記憶を消去され、全てが無かった事になる。


 それでいい。それで俺は良いんだ―――――。








『目覚めよ、我が後継者よ!』


 五月蠅いな。

 俺はもう眠いんだ。

 寝させろよ。


『目覚めよ! 目覚めるのだ!』


 マジで五月蠅え。

 てか、その重低音の声が頭に響くんだよ。

 

 ようやく学校やら、親やらから解放されて思う存分寝てられると思ったら、何でこんなおっさんの声を聞かないといけないんだよ。


 まあ、無視してればいつかは黙るだろ。


『目覚めるのだ!』


 ……。


『目覚めろ!』


 …………。


『目覚めるのだぁああああああ!!』

「ウルセェエエエエエエエエエ!!」


 我慢できずに


「ボキャブラリー少な過ぎだろ! 目覚めるのだ以外に言う事無いのかよ!」

『む、いや、目覚めろ、と……』

「同じ意味だろボケ! 俺は眠いんだよ! 寝させろ!」

『す、すまぬ』

「おう。もう二度と起こすなよ」


 よし、二度寝二度寝っと……。


 ……。


 …………。


『って、そうでは無い! 貴様には使命があるのだ! 目覚めよ、我が後継者よ!』

「……何の用だよ。さっきも言ってたが、その後継者って何なんだ?」


 仕方ない。

 話を聞かないといつまでも「目覚めよ」って言ってきそうなので、身体を起こして聞いてみる事にした。


『我は傲慢の魔王なり。我は傲慢の適合者である貴様を後継者にするためにここに呼んだのだ』


 何を言っているんだ?と思ったが、周囲を見渡して納得した。


 俺が今いる場所は真っ暗闇だった。

 足場があるのかないのか、上下左右全てが暗闇だ。


 最近の漫画でよく見る異世界転生の展開だ。


 まあ、転生させてくれるのが女神じゃなくておっさん魔王なんだが。


『我と共に来い。共に覇道を進もうぞ!』


 えー……。だる。


 断ろう。そう思った時、別の声が聞こえた。


『待ちなさい、ルシファー』

『なっ、レヴィアタンか! 貴様、何故ここに!』

『黙りなさい。彼には嫉妬の適正もあったのよ』

『ふん。我の方が先に勧誘したのだ!』

『私よりも先に、疎ましいわね……。その子供は嫉妬(わたし)の後継にこそ相応しい』


 高齢のおばさんが急に現れた。


 また後継に相応しいとかなんとか……。


 断ろうと思ったが……。


『その小僧は我、憤怒の物だ! 消し飛ばすぞ!』

『ゲハハハ! そりゃあ、強欲である俺の後継者にするんだよ!』

怠惰(ボク)も眠いんで、一緒に惰眠しようよ……。怠いけど』

『腹が減ったなァ! 暴食(オレっち)と飯食おうぜェ!』

『ブヘヘ……。オ、オイラ、と一緒に、可愛い女の子を犯そ、う』


 次から次に続々と……。


 最終的に魔王を名乗る、七人の怪しげな奴らが集まった。


 そして好き勝手に七人で討論した結果、それぞれの良さをプレゼンする事になったらしい。


傲慢(われ)と共に来れば、あらゆる偉そうな人間共をひれ伏せ、威張り散らかす事が出来るぞ!』

『疎ましい者達を惨殺出来るわ』

『むかつく奴はぶち殺し、ぶん殴る!』

『欲しいモノは全部ブン取れる! 全てだ!金も名誉も宝物も女も、全て手に入れられるぞ!』

『思う存分寝れる。十年くらい寝てても文句言われないよ』

『腹いっぱいに美味いモノが食えるぜ!』

『か、可愛い女を犯し放題、孕まし放題、ダ、ダヨ!』


 それぞれが良いところをプレゼンして来る。


「へえ……。いいねぇ」


 奴ら魔王は欲望に従い、忠実。


 俺にはその全てが魅力的に見えた。


『ならば傲慢に!』

『嫉妬に』

『憤怒にィ!』

『強欲に!』

『怠惰に~』

『暴食に』

『し、色欲に……!』


 全員がずいっと身を乗り出してく来る。


 傲慢。

 嫉妬。

 憤怒。

 強欲。

 怠惰。

 暴食。

 色欲。


 俺が選ぶのは――――。




「全部貰うわ」

『『『『『『『え?』』』』』』』




 ―――――全部だ。


 その瞬間、七人の心臓から七つの光が放出され、俺の中に吸収された。


 身体の中から焼かれる様な痛みに襲われる。


「グッ……ウゥ、ゥウウ…………ッ!」

『強欲が過ぎるぞ!』

『暴食なんてものじゃない。ただの愚者だ!』


 あああ


 お前達が暴れているのも分かるぞ。

 お互いが嫌いなんだよな。

 同じ身体に入るのなんて嫌だよなぁ。


 だが、これからは俺が支配者だ。


 静まれ、大罪達よ。


 俺に、従えぇええええ!


『何、だと……!?』

『まさか、アレを従えるなんて……!』


 傲慢と嫉妬の言う通り、俺の中にある大罪達は大人しくなっていた。


 別に仲直りしたワケではない。


 従わせただけだ。


 喧嘩をするな、と。


 大罪達は俺を支配者と認めて、命令に従っている。


 これで力は手に入れた。


 もう七人の魔王(アイツら)は用済みだ。


 ああ、でも、これだけは言っておかないとな。


 俺をこの場所に連れてきてくれて。

 俺に力を献上してくれて。




感謝(ありがとう)



 

 とびきりの笑顔で感謝の気持ちを伝えた。


『貴様ぁああああああ!!』

「五月蠅え。消えろ」


 指を鳴らして、七人の魔王を消し飛ばした。

 

 それと同時に俺の身体が足の方から光の粒子となって、転生が始まった。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

ブックマークや高評価、感想など作者のモチベーションアップに繋がりますのでぜひよろしくお願いいたします。

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