ヲタッキーズ46 スーパーヒロイン狩り
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"が秋葉原の平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第46話"スーパーヒロイン狩り"。さて、今回はスーパーヒロイン専門の連続レイプ事件が発生w
スーパーパワーの持主を専門にレイプする犯人を方程式で追うヲタッキーズでしたが秋葉原のリアルは複雑怪奇過ぎて…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 真夏のベトベト
現場に到着したパトカーから警察無線が流れる。
「…地下アイドル通りでスーパーヒロインの遺体発見。死亡推定時刻午前 3 時。その後、スーパーパワーを有する者を狙う連続レイプ事件の捜査に進展はなく…」
駆けつけたラギィ警部に部下が駆け寄る。
ラギィは万世橋警察署の誇る敏腕警部だ。
「スーパーヒロインがレイプされて殺された?ホントにスーパーヒロインなの?」
「被害者はレイサ 29才。blood type "BLUE"。スーパーパワーを有しているコトは間違いありません」
「デジマ法の登録は?」
"秋葉原デジマ法"は"リアルの裂け目"から落ちコボれた異次元人に、登録と引き換えにアキバ限定の基本的人権を認める法律だ。
「デジマ法は未登録。ジャドーの公式スーパーヒロインデータベースにもヒットはありません」
「被害者は、車が故障したと会社に連絡していますが、特に修理を呼んだ形跡もなく…」
「ビニール手袋を頂戴」
「致命傷は見当たりません。絞殺されて死後、秋葉原に運ばれた可能性もあります」
「…しかし、仮にもスーパーヒロインでしょ?ムザムザ絞殺される?」
髪を赤&青に染め分けた遺体を仰向けに転がすと…ジャケットから覗く胸の谷間に焼き印w
「やれやれ"リアルの裂け目"絡みじゃないの!…本件はジャドーとの合同捜査とします!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドーは、アキバに開いた"リアルの裂け目"からヲタクを守る秘密防衛組織だ。
その司令部はパーツ通りに面したゲーセンの地下深く秘密裡につくられ日夜敢然と…
で、ジャドーとの合同鑑識チームの見解。
「マスコミ未公表ですが、秋葉原では過去3ヶ月の間に12件のレイプ事件が連続発生、その被害者の全てが blood type "BLUE"つまりスーパーヒロインです。全員が胸の谷間に押された焼き印は"踊る悪魔"。恐らく150度に熱した金属を3秒間当ててる」
「え。中には鋼鉄肌のスーパーヒロインとかもいたでしょうに…そもそも、レイプして焼き印して最後には殺しちゃうって、欲張り過ぎでしょ?」
「殺人は、究極の所有形態です。襲ったり焼きを入れたりスルのが昂じて、ついに殺人に至った、という話かと。因みに、死因は窒息です。何かで顔を覆われたのでしょう」
「もぉまるで、か弱き人間の女性じゃない?少なくとも彼女のスーパーパワーは、怪力では無さそうね。窒息は粘着テープ?袋?」
「粘着テープの痕はありません。手首にロープの痕と死の直前に出来た擦過傷」
「袋を被せられて、必死でモガいたのね… 先ず、被害者の車から探しましょう。車が故障した場所で襲われた可能性もアル」
「1980年型青のセダン。ナンバー2B1222。外神田全域を捜索中」
「了解。ソッチは頼むわ。私は、再度カレヌの話を聞きに行ってみる」
「12番目の被害者ですね?なぜ彼女の話を?」
「うーん証言に矛盾がアルのょね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラギィ警部は、妻恋坂にあるアキバ市民病院に女医のカレヌを訪ねる。
カレヌは、痩せた神経質そうな女医でムダにミニスカな白衣で出迎え。
「何度もすみませんが状況が変わったモノで。ついに犠牲者が出ました。御存知ですか?」
うなずきながら目線を床へと落とすカレヌ。
「念のためお伺いしますが、貴女がお持ちのスーパーパワーは?」
「予知夢です」
「コレも再度の質問ですが、貴女の夢の中に犯人は出て来ましたか?」
「いいえ」
「貴女の日常を観察していたと犯人は言っていましたか?」
「いいえ…最初から私を獲物としてしか思ってなかった」
「貴女は必死に堪えた?」
女医はうなずく。
瞳に涙が浮かぶ。
「犯人の顔は見てないのですか?」
「目に粘着テープを張られて」
「何か感触は?肌が荒れているとか手が固いとか」
「いいえ。でも、力は強かった。それに何かヤタラとベタベタと湿ってて…」
「ソレは初めて伺いました。センセは、襲われる前は何をされてました?正確な時間を知りたいのですが」
「ソレが…思い出せないの!私、来月結婚すルンです!この苦しみ、わかりますか?」
「カレヌさん。犯人を捕まえたいんです。焼き印を押されたでしょ?犯人は、その意味を何か話していましたか?」
「何も言っていません。役に立つコトならとっくに話してるわ!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その間も万世橋の電話は鳴りっぱなしだw
「はい!こちらは万世橋警察署です」
「私、誰が連続レイプ魔か知ってます!」
「娘がスーパーヒロインみたいなの…」
「実は私がレイプ魔」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
カレヌ女医のトコロを辞したラギィは、万世橋への帰り道にジャドー司令部に顔を出す。
「レイカ司令官」
「あ、ラギィ。カレヌから話を?」
「YES。でも、恐らく彼女は何かを隠してるわ」
「通報の確認は?」
「電話は1日2000回。メールは200通ょ」
「車は?」
「捜索中」
「そう」
「あらあら。私の捜査指揮の粗探し?」
「ヤメてょ。見逃がさナイための相互確認でしょ?他に何か忘れてナイかしら」
「ナイわ、私の睡眠以外は。ところで…あら?ミユリさん、じゃなかった、ムーンライトセレナーダーは?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ムーンライトセレナーダー、じゃなかった、ミユリさんはレースクイーンのコスプレ中だw
メイド風キャミソール+ミニスカエプロン+日傘と逝うヘソ出しコスwアラサーなんだが…
残暑ギラギラのパーツ通り←
「テリィ様!20.07秒ですっ!時速109.9キロですぅ!無免許運転なのに!」←
「エンジン積んでナイから免許は不要ナンだwしかし、他のスタートアップにかなり差をつけたね!」
「テリィたん、喜んでないで手を貸してょ」
ヲタッキーズのマリレがソーラーカーのコクピットから僕の方へと手を差し出す。
狭いコクピットに座ると自分では立ち上がれナイので、両手を掴み引き上げたら…
白ビキニからポロリ←
「マリレ!何、その全力でワザとらしいアクシデントは?そもそも、何でビキニなのょ?!」
「パイロットは極限までスーツを軽量化しないと…まさか、姉様。私に全裸になれと?そーゆー姉様こそ"ムダにレースクイーン"のコスプレはナゼ?」
「コ、コ、コレは…スポンサーの御意向で仕方なくw」
「え。第3新東京電力さんの御意向?」
「いや、その、会社というよりは、プロジェクトの枢要な立場におられるトコロのテリィ様が…是非私にって…まぁ属人的なリクエストもアリ…」
あ、僕はヲタクの傍ら昼間はサラリーマンをやってて、第3新東京電力に勤務している。
そして、弊社が開発中の次世代型交通システムの要となるソーラーカーをテスト中だw
って、ミユリさんがレースクイーンになる理由には程遠い?まぁ、そぉだなごもっともw
「とにかく!コレは宇宙構造を再定義スル第11次元超重力論で駆動スル、高エネルギー超重力車ナンだょマリレ…胸、隠せ」
「テリィたん、私が微乳だから隠せってヒドイわ!コレだってミユリ姉様よりは…」
「お黙りマリレ!テリィ様に謝りなさい(ナゼw)!あ、電話…もしもし?あら、レイカ司令官?…え。スーパーヒロイン殺し?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「おかえりなさいませ、テリィたん!」
「あ、潜水艦カレーだ。そっか、今日は金曜だったね」
「テリィたんの御帰宅は、いつも金曜でしょ?ミユリ姉様が念入りメイクの日」←
本来"潜り酒場"は御屋敷のバックヤードだが、ヤタラ居心地良くて常連の溜まり場にw
かくいう僕も"48時間休暇"の度に御帰宅スルが毎週金曜は"海軍カレー"の日なのだ。
今回はヘルプのつぼみんが仕込み中←
「余り時間がナイんだ。シャワー借りても良いかな?」
「良いとも!ってか、テリィたんがオーナーだし。ところで、レースクイーンバージョンのミユリ姉様は一緒じゃナイの?RQは久しぶりって朝からウキウキだったのに」
「事件だって。ジャドーに呼ばれた」
「だのに、テリィたんは何で御帰宅したの?」
「つぼみんがミユリさんにコキ使われてルンじゃないかって心配で」
「冗談。その反対ょ。何だ、姉様にカレーの味見をしてもらおうと思ってたのに」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻。ミユリさんはジャドー司令部だ。
そのぉ、あの、レースクイーンのママでw
「限られたエリアで13人もスーパーヒロインがレイプされた?ルイナ、現場の分析を急いで!」
「予測分析のコト?桜田門の専門チームにもデータを回したけど望み薄なのょね。猟奇犯の場合は役に立たないンだって」
「あらあら。ソンなコトないわ。証券詐欺や脱税摘発では素晴らしい成果を上げてるのょ?」
僕の推しミユリさんは、アキバの有事にスーパーヒロイングループ"ヲタッキーズ"を率いるムーンライトセレナーダーに変身スル。
最後の発言はヲタッキーズ科学顧問のルイナ。
史上最年少の首相官邸アドバイザーでもある。
「ねぇみんな。ちょっと目を瞑って庭に水を撒くスプリンクラーを想像してみて!水滴の1粒1粒が見える?」
「えぇ見えるわ」
「実は、予測分析でも水滴が落ちる場所までは予測出来ないの。だって、変数が多過ぎるから。でもね…水滴の落下パターンからスプリンクラーの位置を特定するコトは出来る。つまり、次のレイプ現場じゃなく、基点なら追えるのょ。ねぇ今までの現場に共通する基点を探してみてはどーかしら」
「基点って…つまり、犯人の隠れ家ってコトかな?」
「YES。レイプ犯はレイプするニーズで動く。先ず獲物を観察スル。次に人目につかないような、恐らく雑多な公園とかで機会を待つ。そして、最後に人通りの少ない場所で襲う」
「なるほど」
「行動領域は広く、恐らく秋葉原全域に及ぶわ。最初は、隠れ家から離れたトコロで犯行に及ぶ。その内、成功?経験を重ねて慣れて来たら、その距離は安定スル傾向がアル」
「レイプのパターン化ね?」
「距離減衰も考えなくちゃ。犯罪に傾倒する犯人ほど遠出をしたがる。傾倒の尺度には、どんなモノがあるかしら?」
「うーん被害者の傷の程度、監禁時間の長さ、拉致手口へのこだわりとかね。リストを作るわ」
「ソレで数式を作れる!急いで!」
「OK」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、つぼみんと僕は海軍カレーの芳醇な香りが満ちる"潜り酒場"でモニター視聴w
「あれ?この地下プロレスの画像は?」
「スーパーヒロイン頂上血戦!"巫女ガール"vs"女半魚人"だけど」
「巫女ガールって…先日、中央銀行を襲った"お作法ガールズ"のクレオだょな?もう釈放されたのかw」
「下馬票じゃ断然"女半魚人"なの!統計上"巫女ガール"に勝ち目はナイわ」
数10分後、マットに転がる"女半魚人"←
「ウソでしょ?統計的にアリ得ない!コレは例外だわ」
「カモな」
「テリィたん、貴方には未来が見えるの?」
いや。コレは先週の試合だw
第2章 予知夢の末路
ラギィ達は万世橋警察署に引き上げる。
「警部。ホントに方程式で犯人の隠れ家が割り出せルンですかね?あの、ルイナってパツキン姐ちゃん、大丈夫かな」
「まぁ問題は何処まで誤差なく範囲を絞れるかってトコロね。アレで数学者としても一流らしいし、成功すれば今後の役にも立つから信じて待ちましょ」
「警部!ウチの鑑識結果が上がって来ました」
万世橋の鑑識は、白衣を着たイケメンだ。
「被害者が死ぬ直前に吸い込んだ菌類が肺の中にありました。料理用の黒トリュフです」
「トリュフを買った袋を被せられたの?」
「売ってる店はアキバに200軒以上あります」
「ネット販売も忘れないでね」
そぉでした、と、溜息をつく部下w
「車の方は?」
「未だ見つかりません」
「犯人は野放しなの!優先順位を考えて仕事をして!」
「最優先でやってます。外神田全域に連絡済みです。しかし、車は出て来ません」
「そうなの…問題は、絞殺されたレイサの最終日の行動ょ。車が故障し、修理に行く途中だったのカモ。その前に買い物に行ったのカモ。駐車場も調べて。何処で車が故障したか。路上に放置された車がないかも調べて。間もなくルイナの予測が出るわ。それまでに片付けておきたいの」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ところが、その頃実はルイナは煮詰まってるw
万世橋からリストが届き、必要なデータは揃ったのに、何故か方程式が浮かんで来ないw
黒板に数字を並べ、ペーパーをめくり、地図に印をつけてはみたが…ヒラめかないのだ←
「あぁダメだわっ!カレー食べよっ!」
と逝うワケでルイナは"潜り酒場"に御帰宅w
「つぼみん!海軍カレー、食べさせて!」
「あら、ルイナ。"潜り酒場"では、女子は全員メイド服着用が流儀だから。海軍カレーを食べたかったら着替えて」
「あ、そうだった。チャイナでOK?」
OKだよっ!深く入ったスリットが最凶だっ!
「あぁ!美味しい!あ、テリィたん。今、ジャドーに協力してるの。力を貸してょ。散在する結果の痕跡から基点を見つけたいンだけど」
「基点?ブラックホールか?」
「違うわょ。あぁガロワの気分だわ。若くて優秀な数学者。私と同様、難題に取り組んでたけど、ちょっとヨソ見をして、政治や恋の虜となり20歳の若さで決闘し殺された。生きていれば、偉大な功績を残せたろうに」
「ルイナは決闘なんかしないよ」
「ねぇ聞いて。もうすぐ、私はアラサー。数学者のピークを迎えるわ」
「多くの数学者が短いピークの間に最大の功績を上げている。ルイナには、この世の本質を見抜くだけの才能がある。限りある時間を楽しく過ごせば良いと思うょ」
カレースプーンを持った手を止めて、僕のコトを不思議そうな顔をして見つめるルイナ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
数分後、僕はチャイナメイド服のルイナと一緒に、ドタバタと万世橋に駆け込んでいるw
「確かこっちょ!」
「待ってくれ!書類が落ちる!」
「あ、あら?今、捜査会議中なのだけど…」
驚く捜査員達を尻目に僕に指図するルイナw
「テリィたん!最初の地図を出して!」
「手伝うわ。元気そうね?」
「あ、ラギィ。久しぶり」
捜査方針が描かれた黒板を勝手に消して理解不能な数式をスラスラと書き連ねるルイナw
「地図の基になってる方程式ょ!」
「ダメだょルイナ。捜査方針を消しちゃw」
「あ、テリィたん。構わないの。続けて」
ルイナ。わかったから、そのドヤ顔はヤメろw
「わかりやすいように数式を大胆に省略してみました!」
「え。相変わらズ何の式だか全然わからないけど、御礼を言うトコロ?コレで犯人の隠れ家の住所がわかるの?」
「だから!住所ではなくて基点ょ。探し方は、目に見えないブラックホールの位置を推定スル時と同じで、ブラックホールが周囲に与える影響から割り出すワケ」
「あぁダメ。完全について行けないわ」
「OK。テリィたん、拡大図を出して。第一に考慮すべき点は、犯人は被害者を襲ったり、遺体を捨てる時にランダムに場所を選ぼうとするコトね。ソレは隠れ家を突き止められては困るから」
ルイナは、全捜査員に呼びかける。
「ココで、簡単な実験をしてみましょう。その机を動かして。この机もドケて。みなさん、コッチへ来てもらえます?さぁランダムに散らばって」
「広がるの?こんな感じ?」
「そうです。でもよく見て。みんな大体同じ感覚で広がってるでしょ?ホントにランダムなら、固まるコトもあるハズなのに」
「そうね。確かに等間隔は妙だわ。人間の性?」
「意識した瞬間、もうランダムには動けない。犯人も無意識に等間隔な場所を選んでしまう」
「犯人が自分のパターンに陥るワケね!」
「YES。犯人は、ある場所を故意に避け犯行現場を選ぶ。つまり隠れ家ょ。計算では、隠れ家のある確率はエリアによって異なる。地図に落とした赤い部分がホットゾーン」
「外神田3丁目?」
「YES。犯人が外神田3丁目に潜んでる確率は87%」
年配のベテラン捜査員が異議を唱える。
「今の話はどうも信じられん」
「じゃコレは?」
「あ。ヲレの宝くじ!」
ベテラン捜査員の胸ポケットから覗いていた宝くじを人差し指と中指で器用に摘むルイナw
「宝くじは…買わなきゃ当選しないし!」
「でも、1等の確率は4100万分の1です。つまり、毎週20枚ずつ宝くじを買っても1等を当てるのは4万年に1度と言うことです。コレが、基本的な確率論の真実」
ソコへ、捜査員が息咳き込み駆け込んで来るw
「レイサの車が見つかりました!外神田3丁目です!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場は低層の駐車場ビル。パトカーで駆けつけた鑑識が規制テープを張り、写真を撮る。
「ラギィ警部!」
「貴方は車の方をお願い…何?」
「誰かがココで人を待っていたようです」
真新しいタバコの吸い殻だ。
「ココに空き缶もアル。いずれも最近のモノです」
「DNA鑑定は?」
「超特急で取り掛かってます」
「しかし、犯人はレイサの車の故障は知りません。因みに、故障原因は点火プラグで、特に細工された形跡はナシ」
ラギィ警部は狙撃用スコープで周囲を見回すw
「確か…女医のカレヌの家族寮はパーツ通りだったわょね?番地は?」
「634番地」
「あったわ」
スコープ一杯に"634"と描かれた番地表示。
「カレヌに電話して!犯人は、ココで彼女を観察していたンだわ。そして、偶然故障したレイサの車にも気づく。そして、ついレイサもレイプしちゃったけど…犯人の真の狙いはカレヌだったンだわ!」
「勤務先のアキバ市民病院に電話したトコロ、カレヌは本日、無断欠勤してるそうです!」
「激ヤバ!」
「応援を呼んで!大至急!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「万世橋警察署!カレヌさん、無事ですか?!」
ラギィ警部が家族寮の窓をバンバン叩く。
「窓が開きます」
「突入しましょう!」
「犯人に注意!遭遇するカモ」
拳銃を構え、続々と室内へ飛び込む警官隊。
「家の奥をチェックして」
「警部!キッチンに来てください!」
「遅かったわ…」
ビニール袋に包まれた…カレヌの死体。
見開かれた目は自分の未来を見たのか。
第3章 ホットゾーンの真ん中で
「2008年の秋葉原通り魔事件の再来です!今夜、また連続レイプ犯の魔の手にかかり…」
「殺されたカレヌ女医は、同一犯にレイプされ…」
「…舞い戻ったレイプ犯に自宅で殺害された模様です!」
全チャンネルが一斉に伝える"カレヌ殺害"の報道を苦虫を噛み潰した顔で見守る捜査員w
「他の11人の被害者の保護は?」
「手配済みです」
「しかし、レイプ被害者が再度襲われるケースは極めて稀です。カレヌ女医のコトは、最初から殺す気だったのでしょう」
「そして、やり遂げたのね」
「袋小路ですw次はどうします、警部?」
誰も見てないTVニュースが語る。
「残念ながら、カレヌさんは帰らぬ人となりました。しかし、必死の捜査は続きます。今宵も、万世橋警察署の灯りが消えるコトは、ナイでしょう」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「何してるの?ラギィ警部、計算では5件中4件でホットゾーンに犯人がいたのょ!」
「今回も犯人はホットゾーンにいると言うの?」
「YES。ホットゾーンに関係スル男性は約50人。急げばDNA鑑定に…」
ラギィ警部は、ダメダメと首を振る。
「2〜3日はかかるわ。裁判所命令も取れないし…捜査員にゴミ拾いさせようかしら」
「とにかく、誰かが吸い殻や噛み終わったガム、かんだ鼻紙とかを拾わなきゃ!」
「あ。ミユリさん…じゃなかった、ムーンライトセレナーダー。貴女にお願いしたいコトが…」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"裏アキバ"と呼ばれる外神田3丁目界隈にはメイドカフェの老舗が多い。
そうした老舗の全御屋敷が、何の断りもなく突然"全席喫煙可"となるw
「おかえりなさいませ、御主人様!」
「え。何で喫煙可なの?ゴホゴホ…わ。タバコにも"愛込め"のサービスを?」
「モチロンです!モクモクきゅーん!」
ナンバークラスの有名メイドが胸の谷間に差したライターで着火してくれる←
たちまち噂は拡散して御屋敷は満員、コロナ下でも長蛇の列が御屋敷を巻くw
「鑑識さん、3番さんの吸殻ゲット」
「OK。顔写真は撮った。後で身元確認スル」
「このスプーンにも唾液がついてるけど」
「助かるょありがとう、メイドさん」
各御屋敷に配置された鑑識が、吸殻を証拠袋に入れ万世橋に駆け込みDNA鑑定を行う。
外神田3丁目裏のパーツ通りでは、ビラ配りメイドが喫煙歩行者に"逆粘着"をかけているw
「鑑識さん!この吸殻、ウチの常連のタマンちゃんのだから。タマンちゃんの本名はメイド長に聞いて!」
「ありがとう!しかし、みんな何で?」
「ミユリ姉様のためだもの!」
アキバが古いミユリさんは、秋葉原メイドみんなのお姉さんだ。アラサーはダテじゃないw
「まだ16人だ。急げ!早くサンプルを集めろ。レッツゴー」
「サンプルのスプーン。結果は不適合」
「次は鼻紙だ!メイドさん達に負けるな」
万世橋の鑑識もフル稼働で全員一睡もせズだw
「これで34人済んだ。残りは?」
「鑑定中です」
「明日までに50人行くんじゃないか」
「ホットゾーンの何処かに必ず犯人はいる」
「恐らく、次の犠牲者もね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
子供達がケンケン遊びをしている。
優しく見守る母親をジッと見る男。
タバコの吸い殻を踏み消す。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その頃、ジャドーでは一悶着が起きている。
「ラギィ警部。ソレからムーンライトセレナーダー、いいえ、ミユリさん。問題発生だわ!」
「あら。何ゴト?」
「正確を期すために、方程式を逆に計算してみたの。ホットゾーンから犯行地点を割り出せるハズだったのに…駄目だった」
「え。外神田3丁目のメイド総出で調べてるのに何か間違えたと逝うの?」
「違うわ!データが悪いのょ!」
「警察のせい?でも、データの基になる捜査記録は何度も確認したわ」
「カレヌのレイプ事件。あの捜査にミスがあったか、或いは彼女が嘘をついている」
「まさか」
「だって、他の現場は全部パターンの中に収まってるの。カレヌが襲われた妻恋坂だけが計算して出した領域の外にある。他の事件の確率は86%、75%…彼女の事件だけが2%」
「カレヌは何かを隠してる?」
「数字は正直ょ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
手掛かりを求めワラでもスガる気持ちで死んだカレヌが勤めてた市民病院に逝くラギィ。
訪れるとナースがカレヌのロッカーを開け、中の私物を整理している。彼女の話を聞く。
「カレヌ先生は、婚約者に元彼と会わないと約束したのに…実はずっと"お友達"のママでした」
「え。もしかしてカレヌ医師は…」
「元カレの家の近くで襲われ、それを婚約者に隠そうとして嘘をついてました」
ソレで彼女の確率だけが低いのかw
「元カレの住所をお教えください」
ナースは、明らかに"しまった"と逝う顔だw
「困ります。ソレは教えられません」
「今、この瞬間にも次の犠牲者が出てるカモしれないの!」
「…OK。お教えしますが、私から聞いたとは誰にも言わないで」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ルイナ!カレヌが襲われたのはパーツ通り!パーツ通りの路上よっ!」
「え。そーなの?計算し直して、正確な地図をリメイクするわ」
「お願い…え。何?」
万世橋に戻ったラギィは、ジャドーのラボにいるルイナに新しいデータを送る。
ソコへ部下が、明らかに重い足取りでやって来て、渋い顔をしながら報告スル。
「外神田3丁目の容疑者50人全員の結果が出ました。連続レイプ魔とDNAが適合した者は…おりません」
「カレヌが嘘をついてた。今、地図を作り直してるわ。全員、そのママ待機ょ」
「え。地図が間違ってたのですか?」
ソコへ電話が入り、ラギィは部下に静かにしてとジェスチャー。かけて来たのはルイナ。
「警部!カレヌのデータを更新したらホットゾーンは狭くなり、確率も87%から96%にUPしたわ!」
「ホント?!新しいホットゾーンは?」
「末広町ょ!範囲が狭まったから、調べるのも少人数で済むわ。コレで前より有効に人を使えるハズょ」
「…ルイナ。狭いだけで同じ地域だわ」
「だから!より確率が高いの!」
「でも、ココは確認済みの地域なのょ」
「何で?まさか、だって…じゃ現場が見逃したんだわ。ソレでなきゃ鑑定結果が間違ってたのょ。犯人は、絶対ココにいるわ」
「OK?ココには犯人はいないの」
「じゃあ見逃したのょ!」
「確率の問題ナンでしょ?」
「96%は、確率の世界じゃホボ完璧に近い数字だわ!」
「でも、今回は失敗なの。残念だわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドー司令部。
スマホを投げ捨てるルイナ。勢い良く黒板の数式を消す。
驚いたラボのジャドースタッフが、レイカ司令官を呼ぶ。
「ルイナ。少し休んだら?あ。コーヒーを」
「要らない。考えたいの」
「ソレなら…御帰宅してみたら?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋警察署。
「担当をハズされたわ!」
「え。警部が1番適任なのに」
「でも、失敗したわ」
「我々は良くやりました。ソレでも、上手く行かない時はアリます」
「後任に引き継ぎしなきゃ」
「私達が話します。警部は…その、あの、どうでしょう?御帰宅でも」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
と逝うワケで、今宵の"潜り酒場"は心が折れた女子で満員だ。
"潜り酒場"の流儀に従って、女子は全員メイド服を着用スル。
先ず深々腰骨まで入った悩殺スリットのチャイナメイドのルイナ。眼鏡&チャイナ最凶←
「テリィたん、何か変なの。でも、ソレが何かがわからない」
「ヲタクが人間の行動を解き明かそうとして失敗したんだね」
「まぁね」
「ルイナは科学者だ。常に、厳密な答えを探している。でも、人間の行動は、ちっとも厳密じゃない。そもそも、宇宙は"ねじれ"や"歪み"に満ちてルンだ。有り体な方程式じゃ通用しない。もっとルイナは冗長で散漫な方程式を作るべきナンだ。そーすれば、完璧じゃナイけど、ずっと"マシ"な答えが出るハズさ。ヲタクは、人間に関わると必ず苦しみ、失望する。でも、その価値はアルんだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
コロナ対策で、客席を半分にしたミュージカルの終演後、ゾロゾロと観客が出て来る。
劇場の前で別れる仲良し女子。夜道で独りになるのを見計らい男が背後から首に注射w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
お次のラギィはミニスカポリスのコスプレだw
「わからないわ。私、何を見逃したのかしら?問題の所在は?どうしたら答えが出るの?」
「もう一度一緒に考え直そうょ」
「無理。私は担当から外されたし」
「なぜ?」
「さぁ?事件を新鮮な目で見るため?」
「ラギィに解決出来ない犯罪ナンて、犯罪じゃナイょ。犯行地点から犯人の隠れ家を突き止めると言うルイナの発想は筋が通ってる。でも、もしかしたら、犯人の一面しか見てなかったのカモ」
「え。テリィたん、何を言ってるの?犯人の犯罪以外の部分にも目を向けろってコトかしら?」
「ラギィ。そうじゃなくて隠れ家以外にも目を向けろってコトだょ。ホラ、僕の場合は"48時間休暇"の間は"潜り酒場"にいるけど、1週間のソレ以外の時間は、原子力発電所に勤務してるだろ?」
ココで、ルイナが勢いよく割り込む!
スリットから太腿の曲線がチラ見えw
眼鏡×太腿×チャイナ=最凶←
「つまり、犯人の基点は隠れ家と勤務先の両方なのね?ホットゾーンは2つある!」
「よく気付かれましたね、テリィ様」
「テリィたん、スゲぇ」
いや。ソコまでは逝ってナイょw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
そのママ、真夜中のアキバを横切り、パーツ通りのゲーセン地下に消える謎のメイド集団w
「犯行データから2つ目の基点が割り出せたわ。この2つの基点は、性格が全く異なる。前の基点は外神田3丁目で隠れ家。新しい基点は神田佐久間河岸で昔は町工場メインの工業地帯だったエリアょ」
「早速、神田佐久間河岸のDNA検査に取り掛かりましょう。コロナの職域接種にでもカモフラージュしましょうか」
「ソンな悠長なコトしてらンないわ。今、この瞬間にも次の犠牲者が…」
あ。この一帯は昭和通りを仕切るストリートギャングの縄張りだ。
セクボのヘッドの妹のスピアは、ヒョンなコトで、僕の、そのぉ…
"元カノ会"の会長←
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「はい!コロナに負けズ元気に深夜営業中!コチラは、スクールキャバの名門"チョベリバ"です!」
「御無沙汰。テリィだけど…」
「げ。テリィたん、姐さんに代わりヤス」
電話に出た姐さんに事情を話す。
「…わかった。で、テリィたん。今でもミユリのヒモやってンの?代わってょ。ソコにいるンでしょ?」
「スピア?ミユリです。スピーカーにしたわ」
「あのね。アンタ、末広町の連中に喫煙カフェで大儲けさせたんだって?お陰でコチラの御帰宅はサッパリだわょ。事情は聞いたからウチも今から稼がせてもらうわょ」
ココからはスピアの店内に向かっての大号令w
「みんな!今からスク水デーやるよ!」
「はい、メイド長!」
「自撮りした子からSNSにガンガンUPして!ガサ入れ食う前に1晩でケリつけるよっ!」
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レイカ司令官からの直接命令で、ジャドーの全ステーションが第1級非常体制に入るw
実は、ラボの科学分析チームだけで良くて、ソレも立ちどころに用済みになったが…
「コスキャバで収集したDNAサンプルは、桜田門の"変態データベース"をハッキングして片端から照会かけてます。目下、目ぼしいヒットは8人…あれ?77才?この爺さんは落とそう…ん?コイツは今、蔵前橋の重刑務所ですねwお?司令官、コイツはどうでしょう?」
「あら。ラギィ警部、警察の目で見てくれる?」
「どれどれ…ルデン?レンタルパーティ会社経営。小児愛者。12年前レイプ未遂で逮捕…うん。気に入ったわ」
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結局、ルデンは工員ではなく、神田川沿いの廃倉庫を拠点にしたパーティ屋だ。
正面からラギィ警部、裏にはムーンライトセレナーダーに変身したミユリさん。
因みに、ムーンライトセレナーダーは黒セパレートでヘソ出しのコス。アラサーなんだがw
「夜明け前に失礼します。万世橋警察署のラギィ警部です」
「はーい、ただ今。やぁ何ゴトですか?」
「ヒロインAVの無許可ロケとの通報があって。入っても?」
「モチロン。しかし、ロケですか?海賊版のDVD販売なら心当たりが…」←
作業台の上で鍋がグツグツ煮立っているw
「おや?コチラで料理も?」
「ケイタリングもしてるので」
「お1人で?」
「個人経営だから」
鍋の横にあったバーナーに点火する警部。
「ブリュレ用です」
万事ヤリトリは如才ナイが粘着質で神経質そう、タバコも吸っている。
さらに、裏に回ったムーンライトセレナーダーが、窓から中を覗くと…
ビニール袋を被せられた何かがw
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作業台の上の包丁を手にする警部。
タバコの吸い殻を踏み潰すルデン。
おや?包丁の取っ手に焼印の痕だw
「"踊る悪魔"?ムーンライトセレナーダー、コイツが犯人よっ!」
ルデンは、ヤタラと落ち着いた仕草で、叫ぶラギィの拳銃を手刀で叩き落とす。
素早くラギィの背後に回り首にナイフを当てて作業台の上の鍋をひっくり返すw
大量の蒸気が発生!モウモウと立ち込めるw
「ナイフを捨てて。私はムーンライトセレナーダー!"雷キネシス"をお見舞いスルわょ!」
「撃てるモノなら撃ってみろ、ヘソ出しスーパーヒロインめ!お前、アラサーだろ?」←
「気をつけて、サイキック抑制蒸気よっ!ムーンライトセレナーダー、私もコレでヤラれたわ!」
ソンな蒸気がアルのか?!
「あ。ホントだわ!"雷キネシス"が不発w」
「わははは。全てのスーパーヒロインよ、俺のケツをナメろ!」
「お断りっ!」
ゴンッ!
囚われていたスーパーヒロインが、空になった熱い鍋でルデンの後頭部を思い切り殴るw
糸の切れた操り人形のように床にグシャリと崩れ落ちピクピク手足を痙攣させるルデン。
ホントに腹を立てた女の一撃は恐ろしいw
スーパーヒロインであるか否かを問わズ←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
神田川の川面が輝き、アキバに朝が来る。
「ルイナ。ルデンは、3週間前に引っ越したんだって。その前は…神田練塀町。発見出来ないワケょ」
「逃げた後だったのね」
「いずれにせよ、スゴい方程式だわ」
「thank you」
囚われていたスーパーヒロインに、ムーンライトセレナーダーが寄り添う。
サイキック抑制蒸気はスーパーヒロイン受難の時代の幕開けカモしれない。
「スーパーパワーが消えるの、怖くない?」
「モチロン怖い。でもヲタクには、いつだって廃人になる覚悟がアル。だから、私達は強いの。そもそも、スーパーパワーがあろうとなかろうと、この世を人の助けナシで生きるのは不可能だし」
「…あーあ私にもテリィたんみたいな"TO"が現れないかな」
「早く良くなって。アキバが待ってる」
おしまい
今回は、海外ドラマでよくテーマとなる"連続レイプ魔"を軸にスーパーヒロインを専門に襲うレイプ魔、犯行を方程式で追う科学者、方程式を信じて犯人を追う警部や部下、ヒロインを助ける秋葉原メイド達、同じくストリートギャングなどが登場しました。
さらに、方程式の信憑性をめぐる科学者の苦悩、近未来の秋葉原っぽいソーラーカーやサイキック抑制蒸気などの小道具、ヒロイン側のスーパーパワーを失うコトへの怖れなどもサイドストーリー的に散りばめてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、第4次コロナ宣言下でパラリンピックを迎えた秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。