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第47話 「それは詭弁ではないのか、いやそうに違いない」

 糸唯ちゃんが転校生、だと……?


 想像もしなかった事実を告白され、俺は驚愕せざるをえなかった。


「そんな偶然あるかよ。正味信じられねえ」

「私もですよ、せんぱい」


 三咲ちゃんも、この現状を納得できなかった。ベンチの端から端まで、ひとりごとを呟きながら何度も往復したのち、ようやく一区切りつけられたようで再度席についた。


「三咲、もしかしたらこれはよくある話で、俺たちが過剰反応しすぎなのかもしれん」

「世間は狭いといいますからね」

「ハハハハハハ」

「ハハハハハハ」


 心のこもっていない笑いが上がる。


「……おふたりとも、大丈夫ですか?」


 魔性の瞳は、不安を内包していた。


「その、私のせいでややこしくなったりしてますかね……?」

「な、なにをいってるんですか! はうるんのことを無下にするような私ではありません! 私たちの思い出をを忘れたのですか?」

「出会って一日目のセリフじゃねぇ」

「せんぱい、過ごした日数より密度ですよ。ちなみにせんぱいとの日々はせいぜい果汁一パーセントの薄さ。対するはうるちゃんは果汁百パーセントです。おわかりですか?」

「扱いがひどすぎる……でも、いちおう俺勝ってるくね?」


 糸唯ちゃんと過ごした時間の百倍を真面目に計算してしまった。


 きょうがふたりは初対面。八時過ぎの出会いから現在の十六時過ぎまでで約八時間。


 それを百倍した八百時間を日数に換算すると────一ヶ月じゃねえか。


「会ってる時間はそんなものですよ。初対面からどれくらい経ったかじゃないんですから」

「感覚の違いってやつか」

「せんぱいとはバンドとか組めなさそうですね」

「それは音楽性の違いだ」


 こうしていつもの掛け合いをしていると、さっきまで謎に笑ってたのがなんだったのだろうと思われる。


「零点のツッコミはさておき、相談したいことがあるんですよ」

「相談?」

「はうるんが我が文芸部に入りたいといっているんです」


 糸唯ちゃんは小さな首を前に振る、


「全然ありだと思うぞ。わざわざあの弱小文芸部に入りたいといってくれてるんだ。断る理由もない」

「ほ、本当ですか……!」


 茶色い目を輝かせて、こちらを見つめてくる。長い時間目に止めていたら吸い込まれそうな美しい目である。


 正直、糸唯ちゃんは心霊研究部あたりに興味を示すかと思っっていた。ほら、やばいオーラ漂うトンネルにいたわけだし。


 ちなみに、彼女がなぜトンネルにいて、しかも座りながら歌を口ずさんでいたのか? 


 砂時計を逆向きに返して、時を遡っていく……。



 ファミレスで、俺が疑問を尋ねてみると、彼女はこのようにこたえた。


『なぜ私があそこにいたか、ですか? その、なんだか波長があうんです。まるで露天風呂に全身を埋めているときのような、えもいぬ高揚感と安心感が全身を包み込んでくれて。数ある心霊スポットの中でもあそこに勝るところはありませ(以下省略)』


 風呂入ってるときに心地よくて鼻歌がもれるようなものだったってわけ。



 ……現在へと時を進めよう。


「ひとりよりもふたり、ふたりよりも三人。それに、三人いれば文殊の知恵ともいうことわざもある。俺は大賛成だ」

「そうですか、せんぱいは私との日々が微妙だったといいたいんですね。ふたりより三人なんて序列をつけるのは」

「深読みしすぎでは? それにさっきはうっっっっすい時間だとかいわれた気がするんだが」

「最新の意見が優先されます。だって法律の場合、改定されると過去のものとは異なりますよね?」

「それは詭弁ではないのか、いやそうに違いない」


 自己解決できた。三咲ちゃん、困ったときは理不尽なことをいいだすからね。これはもう諦めるしかなさそうだね。

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