表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/67

第35話 「同級生のおねショタなど意味不明だ」

あれから、三咲ちゃんの眠気は限界を迎えた。彼女が帰ると、それに乗じてお開きということになった。


「つ、疲れた……」

「気分転換のためにいったのに疲れたって本末転倒じゃないですか」


子供のようにはしゃいだせいか、疲れが後になってどっと出てくる。日々の運動不足のせいか、足が痛んでいた。


「それじゃあきょうは暗記ものでもやりますか。だいたいこのくらいの量でどうでしょう」


と、信じられない量の用語を暗記させようとしてくる円花さんがそこにはいた。


「これって並の人間に要求する量じゃない気がするんだけど」

「祐志さんは並の人間程度で止まる器ではありませんから!」

「褒めれば解決する話じゃないんだよ」

「褒めて現状が変わらなくても褒めないよりはいいですから」


たしかにそうだけども。なんの解決にもなってないよ。精神論でなにからなにまで解決するという心算なのだろうか。


「押すとやる気が出るスイッチがついていれば便利なんですがね。ちょっとハイになるために、私が体を張って……」

「三大欲求の食欲と睡眠欲以外のものに頼ってたらだめな気がするんだ」

「どうしてですか? 私はもちろんハッピー、祐志さんも女の子とスキンシップできて大いにハッピー。これでウィンウィンじゃありませんか」

「ああいう欲求は一度慣れてしまったらエスカレートするんだ。それじゃあせっかく血判を押した意味がどこへやら、だ」

「それを引き合いに出すのはずるいですよ、祐志さん」

「じゃあ自発的に円花さんは行動を抑制できるのだろうかね」

「うーっ!」


悔しそうに唇を尖らせる円花さん。瞳も若干潤みつつある。


「私は泣くという行為を持って、祐志さんに訴えることにしましょうか」

「こら、子供じゃないんだから」

「祐志さんよりは年下ですから」

「そういう問題じゃないんだわ」


なんだか円花さんのキャラが崩壊の一途を辿っているように思う。出会った頃の、お淑やかな彼女はどこへやら、だ。ヤンデレが落ち着つつあるのだが、変わりに子供っぽい一面が見え隠れしているように思う。打ち解けてくれたのだろうか。


「年上ならおねショタが成立しますね」

「同級生でおねショタなど意味不明だ」

「祐志さんの精神年齢で考えてますよ?」

「もしかして俺のことを侮辱してます?」

「はい!」

「はい?」

「文字数まで揃えないでください」

「文字数とか考えた試しがないよ」

「いったそばから!」

「たぶん無意識だ!」


こうして、同級生でおねショタというパワーワードが誕生した。もはや精神年齢という概念を持ち出したらさなんでもありだよね? 


「正直にいうけどさ……円花さんってやっぱり生粋の変態だよな」

「周知の事実ですよ。自分の可愛さと同じくらい自覚アリですね」

「円花さんは可愛いよりセクシー系なのかな?」

「その方面でキャラ変したほうがいいですか?」

「これ以上セクシーになってどうするってんだ」

「美の探求というのは、あくなき探求ですから」

「金持ちがさらに金を求めるのと同じ原理だと」

「人間はつねに強欲な生物だと私は思いますね」


俺の中の理想というのも、止まることをしらなかったよな。たった数ヶ月前までは一生出会えない存在だと思っていた円花さんがこんな近くにいるんだもんな。納得、納得。


……あれ? それって、円花さんの上位互換を求めてるといい換えられてしまいそうな気が。


いかんいかん。これ以上求めるだなんて強欲にもほどがある。足るをしることも、さらなるものを求めるのと同じくらい重要なことなんじゃないのか。


「ですからいくら覚えても問題はありませんね」

「それは大問題だしさっきより理由がひどいよ」

「つべこべいわずにする方がかっこいいですよ」

「もはや反論に意味はない、ということですか」

「限界を作ってしまうのは常に自分自身ですよ」

「名言っぽいこといわれたらやるしかないよね」


どうにか意思決定を遅らせていたのだが、ここであっさり破られることとなってしまったのだった。


間断なく新たな単語を脳に詰め込んでいくのは、なかなかに負荷がかかるものであった。途中苦しくなっても、とにかく手を止めない。一区切りついたら円花さんから覚えているか口頭テスト。正答率が低ければ先に進むことはできない。がむしゃらだった。


序盤は苦しくてたまらなかったのだけど、後半になるにつれて軽くランナーズハイの状態に陥っていた。そもそもこれまでも長時間勉強に耐えてきたわけだ。体は悲鳴をあげていた。


途中、


「まあこんなに一生懸命になって覚えた単語も、明日になれば半分も覚えていませんからね」


という酷い発言をした円花さんについ怒ってしまい、


「だったら円花さんも一緒に覚えてくださいよ」


と返したのだが。


「そこの内容はガッツリ回してあるので、いまさら復習するまでもありません」


彼女の学習進度を見誤っていた。


まあ、無謀と思われていたことも、やってみればなんとかなってしまうものであった。

  

……俺の体はもうボロボロだがな! 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ