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第34話 「ひゃっほ〜〜〜〜!! 最高〜〜〜〜!!」

「ひゃっほ〜〜〜〜!! 最高〜〜〜〜!!」


 重苦しい雰囲気はどこへやら、三咲ちゃんと円花さんは滑り台を満喫していた。何度でもいおう、こいつらは本当に高校生なのか? 小さい子が好奇の目で見てくるのもお構いなしである。


 恥や外聞をあがなうことで、やりたいことをやり抜く者たちが、そこにいた。


「せんぱい、やけに楽しそうですね。最初はあんなに嫌がっていたのに、はじめてしまえばあんなに心地良さそうに」


 滑り終えた先で、三咲ちゃんは俺にそういった。


 そう。例に漏れず、俺も滑り台を楽しんでいたのだ。


 ローラー滑り台というものは、実にいい。遊園地のアトラクションに匹敵する(?)くらいのスリルを、無料で味わうことができるんだ。


「本能に従うことも、ときには必要なのかもしれないな」

「せんぱいが私をいつか襲うかもしれないと?」

「なぜそんな風に変換されるんだ」

「セクハラ野郎の発言はすべてやらしいものに決まっているからです」

「パワハラだ!」


 後輩にいじられる先輩ってどうよ。年上としての威厳がなさすぎるのだろうか。ショックだよ。


「やはり段ボールがあるとスリルが段違いでしょう?」

「そのまま空中に放り出されるんじゃないかと不安になるよ」


 腰が上がるスポットが、この滑り台にはあるのだ。勢い余ってしまわないか不安になるのだが、それがいいスリルになっているように思う。


「私も何度か怪我しそうになったことがありますよ。やはり子供向けの遊具で中人が遊ぶのは危険ですね」

「それなら毎日滑るなよ。それに中人ってなんだ、中人って」

「成年と幼児の間の年で、小・中学生くらいまでですね。電車の料金とかだと」

「中学四年生だってか」

「それでも通りそうなロリ少女でしょう? ギリ小学生でも通りますよ」

「さすがにその見た目で小学生は若すぎる」

「……セクハラですね。私は幼稚園児でも通る気がしてます」

「心は永遠の」

「六歳です」

「バリバリ小学一年生じゃないか」

「どうして六歳=小学一年生だとわかったんですか? ロリコンだったんですか」

「新たな性癖を開拓しないでくれたまえ」

「わかりまいぁ……ふぁぁ」


 三咲ちゃんはあくびをした。


「もうお昼寝タイムか」

「なんたって心は幼稚園児ですから」

「辻褄あわせて五歳ってところか?」

「六歳です!」


 精神年齢六歳児、という謎設定に意固地になる三咲ちゃん。


「わかったよ、六歳児だな」

「その通りなのです」


 まるで彼女という人間がわからない。いったいなにを考えているんだか。なにも考えていないんじゃなかろうか……。


 そうしているうちに、円花さんが滑り終えた。相当なスピードできたらしく、ブレーキがかかるまでに時間がかかり、滑り台から遠く離れたところで止まった。


「無茶しないでくださいよ、円花さん」

「問題ありません、祐志さん。ここで私が怪我しても、祐志さんに看病してもらえるんです。ですから、ためらわずにスピードが出せるんです」

「もっと自分を大事にして! 俺からの心からのお願い!」

「なるほど、『俺が君を一生大事にするよ……』とは、なかなか小っ恥ずかしいことをいえたものですね。未踏の境地に祐志さんも踏み入れたようですね」

「もしかして別世界の住人だったりするのかな」


 なんかしらの誤解をするんだろうな、とは思ってたけど、プロポーズと捉えられたらそりゃ大変だよ。


「成竹祐志を愛し、成竹祐志に愛される」ことを金科玉条(きんかぎょくじょう)として掲げている彼女だ。これまでとは違った、さらなる喜びをかみしめていることだろう。


 ……三咲ちゃんも円花さんも話通じない系人間じゃん。知ってたけど。もはやこのふたりには都合のいい風に解釈されるしかないわけだ。


 まぁ、あんなにライバル視していたようなふたりだったが。


 一時休戦ということなのだろうか。一緒に滑って笑いあっている。もはやふたりとも、屈託のない顔つきだ。

 共通する娯楽を前にすれば、いがみあいそうなふたりも和解するものらしいな。


 ビバ滑り台。


 ……というわけで、ここで公園編は終了である。

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