「死刑台から眺める景色は」 「サンドバッグについて」
「死刑台から眺める景色は」
きっと美しいのだろうな。
そこから眺める人々の視線の向こう側。
夕陽沈む山間のかなた。
思い出すのだろうな、
生まれてからこれまでの事柄。
記憶の海を漂って、
限りなく懐かしい日々のことを。
恨みつらみも忘れるのだろうな、
そして君のことも。
死刑台から眺める景色だけを持って、
命が消えるのだろうな、
潰えるのだろうな。
悲しみも苦しみもなく、
喜びも感慨もなく、
そんな世界を垣間見るのだろう。
「サンドバッグについて」
サンドバッグになろうと思った。
殴られてもなにも感じない、砂の詰まった袋。
革張りの体は痛みを感じない。
砂の心はなにも感じない。
サンドバッグは揺られ揺られる。
頼りない紐に吊られて揺られ揺られる。