file014:アーサー3
【登場人物】
シャーロック:探偵と名乗る頭の切れる謎の人物。
ジョン(私):帰国したばかりの魔法博物学の臨時教職員。
アリス :ロンドン大学・精霊研究科に所属する一年生。
アーサー :アリスの兄。海軍所属。
【あらすじ】
大学内で殺人事件が起こり、その調査を始めたシャーロックとジョンは、犯人だと名乗り出たアリス・シャルパンティエに、彼女の兄・アーサーと合わせる約束をした。
そしてアーサーを探す為、彼が隠れている資料館へと向かうのだった。
「アリス嬢は自分の作った檻に閉じ込められてしまったが…」
資料館に入るとシャーロックが話し掛けてきた。
「さて、アーサーはどんな謎を持っているのだろうね?」
その様子はとても楽しそうである。まるでイタズラ小僧が次のイタズラを考えているような顔だった。
「アーサーの謎?」
私は何の事か全く分からず、鸚鵡返しに聞き返す。
「アーサーが逃げた理由さ。」
シャーロックの返した言葉を私は理解できずに、頭に浮かんだ事をそのまま口にする。
「それは警察に追われているからだろう?」
それを聞いてシャーロックは心底ガッカリした様子で私の方を見つめ返した。
「アーサーが警察に追われる理由は無いだろう?」
「ドレバー殺しの犯人だと思われているんだから、理由はあるじゃないか。」
私が分かっていない事を察したシャーロックはふうっと息を吐いて向き直った。
「ジョン、自分の事として考えてみてくれ。」
そして例え話を始めた。
「君には気に食わない隣人がいるとしよう。」
「うん。」
「朝も夜も関係無く騒音を立て、怪しげな実験をし、機嫌が悪い時は挨拶もしないような人物だ。」
「それは嫌だな。」
「その隣人に文句を言いに行ってそいつが死んでいたとしよう。君ならどうする?」
突然の質問に私は反射で答える。
「すぐに医者を呼ぶよ。」
「医者という所が君らしいね。僕なら警察を呼ぶ。」
シャーロックはすぐに一言付け足した。
「どちらにしても自分が犯人だと疑われる心配をして逃げたりしないって事さ。」
確かにそうだと私も思った。
「それならどうしてアーサーは逃げたんだい?」
「だからそれがアーサーの謎なのさ。」
私がやっと彼の考えに追いついたので、シャーロックは探索を再開した。
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(ここはどこだ……?)
アーサーは僅かな気配で目を覚ますと、同時に辺りを見渡した。
(そうだ。アリスに教えてもらった秘密の場所だ。)
すぐに状況を思い出し、頭を整理する。
(あの娘は何処に行ったのだろう?)
アーサーは一緒にいたはずの少女を目で探した。目だけなのは腹部の傷が痛くて動けないからである。
部屋自体はそれ程大きくは無いが、沢山の物が置かれているので隠れる場所は多い。動くものは無いかと目を凝らしたが、何処にも見当たらなかった。
ふとアーサーの頭に昨日の映像が蘇る。
(あの少女は人間なのだろうか?)
ドレバーに絡みついていた姿はとても人間とは思えなかった。人間以上の力を持っていると考えて良い。話が通じるかどうかも分からないし、少女を助けるのはリスクがある事は確かだ。
しかしあの目、美しい翠色の瞳を見てしまった後では、助ける理由などアーサーには必要無かった。
まずは少女を探して安全を確保しよう。少女を護る為にこの部屋へ来たのだからと、再度アーサーは意を固めた。
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