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春の世界  作者: こだわりパセリ
序章.異世界の幕開け
8/19

8.試験開始!

 

 やっぱりエルフだったか。というか、エルフって名称で合ってるんだ。翻訳スキルがこっちの認識から訳してくれたのかな。


「そうですね。初めて見ましたよ」


「そうかそうか。なんなら、じっくり見ていくかい?」


 若々しい見た目とは異なり、覗き込んだ瞳からは底知れない不気味さがあふれ出ていた。


「いや、男をまじまじと見ても得る物はなさそうなんで、遠慮しときます」


「それもそうだね。さてと、試験を始めようか。ルールは簡単、10分以内に僕に一撃でも攻撃を当てれたら合格だ。僕は魔法もスキルも使わないけど、君は使っていい。何か質問は?」


「特に無いです」


 スキルの使用ありなら、すぐにでも一撃決めれそうな気もするが……アストルさんはエルフだ、甘く見ない方がいいな。始まったらすぐに《疾走》を使って、一撃を入れる。これがベストかな。


「それじゃあアリアちゃん。合図よろしく!」


 少し声を張って、目配せと共にアストルが受付のお姉さんに合図をするように伝えた。


「それでは、実技試験を開始します!」


 甲高い声で受付のお姉さんが反応した。

 あのお姉さん、アリアって名前なのか……覚えておこう。


「始め!」


「《疾走》!」


 開幕直後、《疾走》を使いアストルさんとの距離を詰め、両手で持った木剣を右に薙ぎ払う。


 しかし、後ろに下がって回避された。


 もう一度距離を詰め、今度は剣で突く。


 これも、アストルさんは軽く笑みを浮かべながら避ける。


 剣が届く距離に留まっているため、そのまま力任せに振るい続ける。


 アストルさんにはかすりもせず、ひたすら空を切った。





 剣を習っていた訳でもないから、俺の剣を振る姿は周りから見るとさぞ不格好だろう。


 周りで見ている人たちはほとんどが魔物と戦うプロだ。そんな戦いのプロ達を束ねるアストルさんは、いわば戦いのエキスパートと言っても過言では無いんだろう。そんな人からすると俺の剣を避けることは朝飯を食べるまでもないのか。


「はぁ……はぁ……」


 荒れた息を整えるために、一旦剣を杖代わりにする。


 《体力成長》で体力が増えた俺でも息切れを起こすぐらい剣を振るったが、今まで当たる気配すらなかった。


「休憩かい?制限時間は残り2分だからね」


 あれだけ剣を避けるために動いていたのに、アストルさんは汗一つかいていない。


 おそらくこのまま同じように攻めても、俺の剣が空を切るだけの素振りと化すだろう。ならどうすれば攻撃が当たるか。


 《疾走》はLv.2だからか、アストルさんには見えていそうだ。速攻で後ろに回るのはおそらく不可能だろうな。


 ()()()()()()だとダメだ。戦いの最中に能力が覚醒したりしないかな。でも、覚醒しそうな能力なんて無いし……都合良く新しい力を手に入れられれば——ッ!


 ……もしかして、これならいける?


 スキルボードを確認


 ――――――――――

 保有スキル 《疾走Lv.2》《潜伏Lv.1》《翻訳》《持久力成長Lv.4》


 保有可能スキル 《観察》《連撃》《剣術》


 スキル枠 5

 ――――――――――


 逆転の芽、見つけたり! 


 《観察》を取ってなくて良かった、そのおかげでスキル枠が一つ空いている。


 《剣術》か《連撃》のどちらを取るか……《剣術》にしよう。剣が出来ていないのに《連撃》を取っても効果が出なさそうだし。


 《剣術》を保有すると頭の中に何か剣の型のような、技のようなモノが刷り込まれた。


 ――――――――――

 保有スキル 《疾走Lv.2》《潜伏Lv.1》《翻訳》 《剣術Lv.1》[袈裟(けさ)切り]《持久力成長Lv.4》


 保有可能スキル 《観察》《連撃》


 スキル枠 5

 ――――――――――


 [袈裟切り]っていうのは、おそらくブランチスキルだな。スキル枠を使用してないし。


 《剣術》が増えただけだが、これでいくしかない!


 剣を構え直し、再びアストルさんに飛びかかる。

 先程よりかはマシになった剣筋が空を切る。


「剣の扱いが少し上手くなったね、その調子だよ。ちなみに制限時間はあと1分だ」


 今自分の出せる全力で、息もつかせぬ攻撃を繰り出していく。


 そして途中でアストルさんに《疾走》で一気に近づき、一閃する。


「[袈裟切り]!」


 魔力を消費してスキルを発動させる。剣を振る動作に何か補助が付いたような感覚で、剣を振り切った。その速度は今までより速く重かった。それの大部分は空を切ったが、最後に剣先が少し服を掠めた気がした。


 明らかに、剣速も剣のキレも上がっている。


 でも、スキル中は体の動きが制限されて指定された動きしかできないような気がした。


「はい。10分経ちましたー。試験の結果は……合格です!おめでとう!」


 アストルさんが指先だけで器用にパチパチパチと音を鳴らす。


 どうやら最後の[袈裟切り]が当たっていたみたいだ。ほとんど掠っただけだったが、アストルさんが当たったということにしてくれたのだろう。


「疲れたー!」


 身体を全力で使った反動だろうか、抑えられていた疲労が、声と共に解放されていく。


 しかしながら、まだ休ませてはくれなさそうだ。


「ソガミさん、合格おめでとうございます。合格の証としてギルドカードを発行しますので、付いて来てください」


「え、少し……休憩を……」


「試験終了後5分以内に発行しないと合格は取り消させていただきます、急いで下さい」


「あ、はい……」


 重りを付けた様な足を苦労して動かし、俺はアリアさんに付いて行った。

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