4.街への道のり
澄み渡る空と草原だけが、俺の目に映っていた……よく見たらちらほらと木もあるな。後ろを振り返ると、先程まで見ていた景色が広がっている。ここは森と草原の境界線のようだ。
「何が起こったんだよ……」
化け物に追われるという捕まったら即死亡の鬼ごっこから解放されたからか、足の力が抜けて立つことができない。そのまま草原でフランスパンを地面につけないように、仰向けに転がった。
「ここはどこなんだ?」
夢オチ、という訳では無い。しっかり先程までの状況を引き継いでいる。
まだ異世界のままなのか……それとも北海道とかモンゴル?
これだけ広い草原があるのはそれくらいしか思いつかないな。
まぁ、確かめてみるか。
「スキル……」
疲労の溜まった喉で、声に出してみる。すると頭の中にウィンドウが現れる。
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保有スキル 《持久力成長Lv.3》
保有可能スキル 《疾走》《潜伏》
スキル枠 4
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「まだ異世界だよなぁ……」
ため息をつき、元の世界に帰れていないことに落胆する。しかし、元の世界に帰れていたとしてもこの大草原の中では家にたどり着くのに相当な時間を要するだろう。
「お、スキルのレベルが上がってる。それに新しいスキルもあるじゃん」
えーっと、《疾走》と《潜伏》か。
《持久力成長》よりは確実に使えそうなスキルだな。
走って隠れる……か。忍者?もしくは暗殺者か?俺は影の者をやればいいの?
裏の世界で華麗に活躍するのは……俺はそういうの好きじゃないし。鬼ごっこ用かな?
取りあえず保有保有っと。
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保有スキル 《疾走Lv.1》《潜伏Lv.1》《持久力成長Lv.3》
保有可能スキル 無し
スキル枠 4
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よし、保有できた。
だけどあんまり変化した感じがないな。
……もしかして《疾走》と《潜伏》ってアクティブスキルなのか?
《体力成長》はたぶんパッシブスキルだろう。なんか持久力が増えた気がするし。
……困ったな。スキルの使い方が分からない。
こういう時は声に出して、スキルを使うって念じるのが一番かな。
「《疾走》!」
そう叫んでみると体の中のナニカが少し減り、体がとても軽くなった。
「すげぇ!体が軽い!」
初めてスキルを使ったからか、気分が高揚する。そして、そのまま俺は走り出した。
ほぼ何もない草原を風を強く受けながら疾走する。
「スキルってすげぇー!!!」
スキルの恩恵を受けながら走ると、道のようなものを発見した。
太陽は真上。ちょうどお昼時だ。
「やっと人里への手がかりを見つけた!」
この道を辿れば、村か街に行くことが出来るな。
道には馬車の車輪の跡が何個かある。
この道は馬車がよく通るのか?
「それにしても……暑いな」
走っている時は風のおかげで涼しかったが、今はまるで夏のようだ。
今は秋じゃなかったのか?異世界の森も紅葉してたし、気温もあまり高くなかった。
まぁ、異世界の秋が暑いだけか。気にしないでいいかな。腕まくりすれば解決。
「さてと、行くか!」
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「何か身分を証明できる物はあるかな?」
街に入る門の所で若い衛兵に聞かれた。門の前には俺以外にも並んでいる人たちがいる。どうやら街に入るために身分証明が必要らしい。
だが俺は異世界人だ。当然、身分を証明できる物など持っていない。持ち物はフランスパン1本だけだ。もう1本は既に俺の腹の中。
どうしよう!?
道を辿った先に街があったのはいいんだよ、いいんだけど自分の設定を考えてなかった!
正直に異世界人ですって言うか?
いや、ここは記憶喪失になった少年にするか!
よし……ココハドコ?ワタシハシュンセイ?
……名前くらい覚えててもいいか。
「実は……記憶が無いんです。今までどこにいて、何をしていたのかすら憶えてなくて……」
「なんだって!?何か……自分の手がかりになりそうな物を持ってないかな?」
「このフランスパンくらいしか」
「ふらん……?さすがにそれだけじゃ手がかりが少なすぎるし。うーん……上の人に聞いてくるから、少し待っててくれるかな?」
「はい。わかりました」
若い衛兵があたふたしながら門の中へ戻って行く。
俺より少し年上くらいだったな、あの人。
新人なのかな?
「そこの君、記憶がないらしいね」




