表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
春の世界  作者: こだわりパセリ
序章.異世界の幕開け
3/19

3.黒狼の足跡、角の光

 

 今日は大きな岩に寄りかかりながら夜を過ごした。一応寝ることはできたが、俺は命の危機を感じている。


「喉が渇いた……死にそう……」


 そう、昨日から水を飲んでいないのだ。昨日寝る前に新鮮な白菜を食べたので寝ている時は飢えや喉の渇きをあまり感じなかったが、その誤魔化しが効かなくなっていた。


 ……腹減ったし喉も乾いてる……取り敢えず今はネギを食べるか。


 俺はマイバッグの中からネギを取り出した。ネギを食べてもあまり喉は潤わない。


「川の水を飲むしかない……か」


 俺は腹を壊す覚悟をし、川へ向かった。











 青く澄み渡った空の下、俺は現在元気です!

 いやぁ、川の水は美味いね!

 体調が崩れるって思ったけど、この味ならそんなこと絶対ないな!


 川の水を飲みながら水の偉大さを知った。


 ……さてと、そろそろ森から脱出するか。

 この川を辿って行けばいずれ出られるだろ。


 そして川の導きのままに歩き始める。



===============



 川の近くに落ちていた石を詰めたポケットに、右手を突っ込みながら草陰に息を潜める。


 土を踏みしめる音。


 心地良い太陽の日差し。


 目に映る緑と赤と黒。


 そして……とても濃い死の臭い。



 俺は今、今朝とは比べ物にならないほどの命の危機を感じている。

 50m程先には、ゴブリン()()()()()()()()モノたちと壊滅し踏み潰された集落……そして体長が10mはありそうな、所々に血のついた黒の毛並みを持つ四足歩行の化け物。その化け物の爪は非常に発達していて、地面を踏みしめるたびに置く深くまで突き刺さる。



 なんだあのでかい狼みたいなの……ああいうのはもっと後に、俺が成長してから遭遇するやつじゃないのか?

 こんな序盤になんでいるんだよ……まだ始まりの町みたいな所にも行ってないのにッ……。


 化け物への恐怖から吐きそうになるのを必死に抑えながら、奴がこの場から離れるのを待つ。



 体中に草や木、土などを絡ませながら歩く化け物の姿からは、周囲の全てを威圧し薙ぎ倒して進むという意志を感じる。

 その歩みはゆっくりと、俺の方へと向かっていた……。



 今逃げたら確実に見つかるッ……見つかったら絶対に殺されるッ!



 鼓動と息は恐怖で荒くなり、目は現実を見ることを拒絶している。



 このまま隠れてやり過ごす……頼むから気付かないでくれッ!



 化け物と俺の距離は既に10m程になっていた。


 そして化け物が立ち止まる……。



『そこにいる小さきものよ、潰れるのが嫌なら退()け。我が道から消えろ』



 は?


 なにこれ、頭の中に響いてくる……?



無闇矢鱈(むやみやたら)に命を潰す気は無い……我の邪魔をする者は別だがな』


 そう言って化け物は視線を壊滅した集落に向ける。



 この化け物が言ってるのか……?



『……退かない様だな。なら仕方ない』



 俺に考える時間を与えずに、化け物が俺を踏み潰そうとして前脚を掲げる。



 俺は草陰から飛び出し、手に持っていた石を化け物に向かって思いっきり投げた。


 投げた石が化け物の胴体に当たる。


 しかし、効いた様子はない。


 目が細められ、化け物の威圧が空間を押し潰していく。



 俺は化け物に石が効かないと判断すると、即座に走り出した。



 ヤバイ、ヤバイ、ヤバイッ!


 逃げないとッ!



 俺が走りながら後ろを振り返ると、化け物が追いかけて来ていた。



 草や木を掻き分けて森の中を疾走する。


「マイバッグは捨てるしかないかッ……」


 いや、せめてフランスパンだけでも持って行こう!


 俺は両手にフランスパンを持ちマイバッグを捨てる。


 今ほぼ全力で走ってるのに俺のペースが全く落ちねぇ!


 なんでだ!?


 ……まぁ、疲れないのならいいか!



 もう一度後ろを振り返っても、化け物と俺の距離は縮まっていない。



 もしかしてアイツ、狼の見た目してるけどあんまりスピードが出ないんじゃないか?



 だったら、どこかでアイツを振り切れるかもしれねぇッ!


 取りあえず今は全力ダッシュ!!!



 そして、野を越え、山を越え、谷を越え……とまでは行かずとも、俺が走るフォームを意識するようになるくらい走った頃。


 前の方に動く物が見えてきた。


「あれは……川を探す時に見た鹿か!?」


 やっぱり角でかいなぁ……。


 鹿も俺と同じ方向に走っている。


 あの鹿も巻き込んでやろうと思い、走るペースを上げようとした時。

 鹿の角が光りだし、立ち止まって俺の方を向いた。


「助けてくれるのか!?」



 角の輝きが、更に強くなっていく。



「ちょ、待って!このままだと俺も巻き込まれる!」


 鹿に訴えかけるが、俺の様な小さき者の相手はしてくれないらしい。


 鹿が溜めた力を解放するように、角を空に振りかざす。すると視界が白に染まり、地面の感触が変わった。


 眩しくて、目が……目が!

 目を開けても何も見えない。真っ白。

 少しずつ目が慣れてきたのか、景色がだんだん見えるようになってきた。



「……え?」



 そこには澄み渡る空と草原があった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ