2.緑の生物、異世界の幕開け
「ゴブリン……?」
川を見つけて取りあえず水は確保できた。食べ物もある。俺はこれである程度は生き延びることができると思った。そう思っていたところで、この空想上の生物が出てきた。
どういう……ことだ?
本当にゴブリンなのか?
……とにかく、まだ俺は気付かれていなさそうだからゆっくり後ろに下がって逃げ――ッ!
「ギッ!ギャッグ、ギャウ!」
俺はゴブリンの様な生物に見つかった。
そいつは左手に持った木の棒を振り回しながら俺に向かって何か叫んでいる。
マズい、見つかった。
走って逃げるべきか?
「ギャァ!」
ゴブリンの様な生物が木の棒で左側から殴りかかってきた。
俺は反射的に体を守ろうとして左腕で木の棒を受ける。
「――ッ!」
俺の左腕に激痛が走っ――てない?
殴られたからつい『――ッ!』ってなったけど、この痛みは小学生のパンチと同じくらいだぞ?
コイツは更に20回程殴ってきたが、俺は痛くなかった。多少痒いくらいだ。少し余裕が出てきた俺は、この生物の観察をすることにした。
……コイツは見た目がゴブリンだから、ゴブリンって呼んでも問題ないだろう。
だが、ゴブリンってこんなに痩せ細って小さいものなのか?あばら骨はかなり浮き出ているし腕も枝のように細い。おまけに歯もボロボロだ。
もしかしてゴブリンの子供か?
観察をしながら俺はこの生物を『ゴブリン』と呼ぶことにした。ゴブリンは疲労からか木の棒を振る速さがだんだん遅くなってきている。そこで俺はある作戦を立てて、タイミングを見計らう。
ゴブリンの木の棒を振る速さが更に遅くなった。
よし、そろそろ頃合いかな……。
こういうのはスピードが大事だ。
俺はゴブリンの木の棒をサッと奪いすぐに、
「そらっ!取ってこ〜い!」
川の向こう側へ投げた。
ゴブリンは木の棒が急に奪われたことからそれを目で追い、川の向こう側を見る。
そして俺はその隙に置いてあったマイバッグを回収して後ろに走り――逃げた。
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ゴブリンから逃げた俺は大きな岩の影でゴブリンについて考えていた。
ゴブリンは世界に存在していたのか?
空想上の生き物だと思っていんだが……。
世界に存在していたが、見つかっていなかった……とか?
アマゾンの奥地みたいな人類未踏!って場所ならともかく、日本にいて見つかっていないということがあるのか?
「わからん……」
俺にはゴブリンのことが全くわからなかった。だが俺はここで前提を変えれば全て納得できることに気が付く。
もしかして、ここは異世界なのか……?
異世界だとしたらゴブリンがいてもおかしくない!
川を探す途中に見た角がデカい鹿もモンスターだったのかもしれない!
異世界かもしれないって思ったらなんかテンション上がってきたッ!
俺は早速、ここが異世界かどうか調べることにした。
まず調べ易いやつから調べていこうかな。
異世界によくあるモノ……それは魔力!
俺は胡坐をかき、瞑想をする。
体の中にある不思議パワーッ!
どこにあるッ!?
俺は体の中に意識を集中させるが、それらしきものは無かった。
……見つからないな。
魔力が無い系の異世界なのか?
それとも俺が感じられないだけか
……悔しい。
まぁ、気を取り直して次に行くか。
次はステータスかな。
取り敢えず言ってみるか。
「ステータス」
……何も起こらない。
ステータスも無いのか……道具を使わないと見れないって可能性もあるな。今の所は森の中でぶつくさ言ってる危ないヤツなんだけど、誰も見てませんよーに。
他には……スキルか?
「スキル」
俺が『スキル』と言った瞬間、目の前に半透明なウィンドウが浮かび上がってきた。
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保有スキル 無し
保有可能スキル 《持久力成長》
スキル枠 3
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保有スキルは、俺が今持っているスキルってことだろ?
そんで、保有可能スキルは俺が今獲得できるスキルかな……なんかショボくね?
「こういうのはもっと、カッコよくて強そうなスキルがいいんだけど」
まぁ、保有できるならするか。
俺は《持久力成長》を保有する、と念じた。すると不思議なウィンドウに変化が起きる。
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保有スキル 《持久力成長Lv.1》
保有可能スキル 無し
スキル枠 3
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お、《持久力成長》を保有できたみたいだな。
だが身体に変化はあまり感じないな。
定期的にこの……スキルボードでいいか。
定期的にスキルボードを見るようにしようかな。
これでここが異世界であることがわかった。
さてと、ここが異世界ならそう簡単に家には帰れないな……。
俺がどうやってここに来たのかは謎だが、この森からは出ないといけないな。
森の中で生きていく自信は無いし。
「せっかくの異世界を森のサバイバルだけで終わらせるのはもったいないしな!」
この世界を楽しむため俺はこの森から出ることを決める。
……そして太陽が沈んだ。




