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春の世界  作者: こだわりパセリ
序章.異世界の幕開け
10/19

10.ハイデの森の……猪?

『一言感想・僕の楽しいいいいい異世界ライフ』

 一日目

 オナカイタイ、ゼッタイウゴケン。婆さん待って、その量のご飯朝から口に入れないで。ダイジョウブダイジョウブ食欲ナイカラ…………!?一回出てったのになんで、あ、まっ、ヤメ――。




 記念すべき一日目は幻となった。たぶん原因は川の水。おのれ許すまじ。


 二日目の朝は窓から入る太陽で目が覚めた。昨日みたいな激しい腹痛やそこに無理やり入る朝食も無く、平穏そのものだった。自分で取りに行った朝食は丸めのパンと謎の保存食。


 バイキング形式で好きに持って行っていいらしい。もちろん他の人に迷惑をかけない程度にね。


 それで朝食の保存食が干した果物か野菜っぽかったんだけど、意外とうまい。腹に結構たまるから少ない量で済むし。ただ人気が無いのかどうだか知らないが、他の物よりは余ってた。カラカラの干しブドウみたいななつめやし。


 サリィ婆さんに挨拶を済ませて店を出る。この店のおじいさん……大将のヒルデブルク爺さんは朝修行に行っているらしい、なんでも『武器を持てん男が、どうやって大切なものを守れるか!』だそうだ。エルマンにとっては祖父母のような存在で、俺も昨日初めて会ったのに今朝は本物かと錯覚してしまった。


「さて、昨日は散々だったけど今日こそ!俺の冒険者ライフが始まるぞ!」


 ギルマスから貰った剣を腰に携えて、大通りへと俺は足を踏み出した。



===============



「――さん。――ソガミさん。聞いていますか?」


「あ、はい。聞いてますよー」


 少し嘘交じりに難しい話を左から右へと聞き流した。意気揚々と冒険者ギルドの門をくぐり仕事を探しにやってきた、だがカウンターで今日も美しいアリアさんに見とれてしまった。


「つまり、冒険者はF~Sランクまであって実績と実力によってランクが上がっていくと。それに加えて薬草や魔物の素材の買取もやっているってことで大丈夫ですか?」


「はい。その認識で構いません。ソガミさんはFランクからのスタートとなりますね」


 今の話の中でアリアさんは、今高く買い取っている薬草についての情報を教えてくれた。


 ツユナキ草という乾燥した森の中に生えているもので、なんと状態が良ければ一束銀貨一、二枚で買い取ってくれるらしい。他にも少し安めだが見つかりやすい薬草についての情報ももらった。


 それではツユナキ草が生えているというハイデの森へレッツゴー。



 ん?どうしたんだ教官。急に俺の前に立ちはだかって。「ハイデの森に行く前に駆け出し冒険者の心得を聞いていけ」だって?いいでしょう聞きましょう。



===============



 ハイデの森は聖地から南に十キロ行ったところにある森で、俺が最初に迷い込んだ森と比べると起伏が少なく樹木もまばらだ。


 街から出たんならエルマンに会ったんじゃないかって?エルマンの担当は西門だから南に行くときは通らないよ。


 ツユナキ草はこの森の木と木の間隔が少し広い場所に生えているらしい。


 すれ違った木に遭難防止用の十字の傷を付けながらツユナキ草を探す。


「お、これはキズナシ草かな?……アリアさんに言われた特徴に合ってるし間違いなさそうだな」


 キズナシ草は葉の裏の葉脈が丸みがかっていることが特徴の傷を治す力を持つ薬草だ。この薬草を傷口にそのまま当てるだけで軽い出血は止まり、傷の治りが早くなるらしい。この薬草から治癒の成分を抽出したキズ薬は冒険者ならだれでも常備して当然だそうだ。だけど一本で銀貨十枚ほどするらしいから俺には手が出せなかった。


 キズナシ草に似た毒草もあって、葉脈が丸みがかかりすぎて二重になっていることが特徴だ。そいつをキズナシ草と勘違いして傷口に当てると吐き気や頭痛、眩暈が酷いらしい。







 木に目印を付けておよそ二百本目、遂に俺はツユナキ草を見つけた。この起伏が少ない森の中で少し高さが上がっている場所にその草は生えていた。他よりも木の密度が低い影響で太陽の光が多く差し込む。周りの雑草から栄養を吸い上げ育ったその植物の足元に、慈悲は無かった。


「見事にツユナキ草しか生えてないな。ここだけ砂漠みたいだ」


 群生していたツユナキ草の半分ほどを採取し、束にしていく。全部で五束。これで銀貨七枚はするのではなかろうか。今日街を出る前に水筒やらポーチやらを買い込んだために俺の所持金はもう銀貨五枚しかない。本当ならもっと採取していきたいんだが、アリアさんに生えている半分の量までしか採取してはいけないと言われているので、今日はもうこのまま帰還することにした。


 森の中で《疾走》を使うと帰り道が分からなくなるので森を抜けてから使おう。そう考えながら帰りの目印を辿っていく途中で違和感に気付く。


「こんなところに木なんて倒れてたか?」


 しゃがんで倒れている木を観察する。木が折れた場所を重点的にみると折れ目付近に何かがぶつかったようなへこみがあった。


 自然な形で倒れたのではなく、何かが強い力を与えて折っている。


 地面が振動している。地震かと考えたけどそういう揺れではない。どちらかといえば昼休みの体育館――


「なんだよあの角。聞いてた話と違うって……」


 振動の発生源を見て思い出した。駆け出し冒険者がハイデの森に向かう時に気を付けなければいけないこと。そのうちの一つ。


 ・(ラインボア)には見つかるな。


「誰だよイノシシって言ったやつ!」


 愚痴をこぼしながら俺はラインボアを目でしっかりとらえる。

 最初の攻撃。ラインボアの突進は少しもブレ無く俺に突っ込んでくる。


 それを横っ飛びで避けて態勢を立て直す。急ブレーキをかけてこっちに振り向くラインボアと目を合わせて吐き捨てた。


ラインボア(サイ)だろお前は!」

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