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春の世界  作者: こだわりパセリ
序章.異世界の幕開け
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1.終わらない課題、迷う森

気まぐれに投稿します。

 

 夏の日差しは穏やかに、木々が紅葉する季節。俺は自分の部屋でベッドに横になっていた。


「課題が終わらねぇ」


 机の上には終わっていない課題の山と、3時間ほど課題と格闘した結果が広がっていた。


「3時間やって10分の1くらいしか終わらないっておかしくね?」


 全部終わるのに30時間もかかることになるぞコレ。

 これを三連休だけで終わらせろってのは俺にはキツイな。

 期限明日なんだけど?


「昨日買ったラノベ読みたいしゲームもやりたいけど時間が……」


 残り時間を確認するためにスマホを見る。現在時刻は15時23分。タイムリミットは明日の8時30分。スマホをベッドに置き、そっと目を閉じる。

 残り時間17時間と7分。


 もう明日の朝に提出するのは諦めるしかないな!


閉じた瞳をバッと開眼させ伸びを始める。


「散歩に行って気分転換すっか!」


 思い立ったらすぐ行動するのは良いことだよな。

 よし、現実逃避に行こう!!!

 おっと心の声が漏れてしまっ――いや、これが心の声だったか……セーフセーフ。


 どこに行くのが良いかな……まあこういうときは自然を眺めるのが一番良い。


 階段を降りながら考える。


 よし、少し遠いけど山の近くの公園まで行こう。あそこならきれいな紅葉が見れるはずだ。


 俺はリビングへと向かい、そこにいた母さんに散歩に行くことを伝える。


「母さん、ちょっと散歩行ってくる」


「あ、春晴(しゅんせい)、散歩に行くならついでに夜ご飯に使う食材買ってきてくれる?」


「いいけど、何買ってくればいいの?」


「薄切りの牛ロース肉と餅とネギ、あとは白菜と卵を買ってきて。そうだ、明日の朝ご飯用のパンも買ってきてもらおうかしら」


 今日の晩飯はすき焼き……いや、しゃぶしゃぶか。にしてもこの量、覚えてられるかな……。


「パンの種類はなんでもいいの?」


春晴(しゅんせい)の好きなパンを選んできていいわよ」


 明日の朝ご飯に食べるパンだろ?何がいいかな……無難に食パンか?トースト美味しいし……フランスパンもありだな。


「ついでにスーパーでなんかお菓子買ってきてくれよ」


 1個下の弟の秋晴(しゅうせい)が話に入ってきた。


「なんでもいいのか?」


「なんでもいいよ」


「Final answer?」


「……なんで英語なんだよ」


 それは俺にもわからん。


「まぁ、強いて言うならスナック系は嫌かな、喉乾くし」


「わかった。じゃあ行ってきます」


 やっぱり自転車でいこうかな。










  近所のスーパーで買い物を済ませた後、寄ろうと考えていた広めの公園に寄った。


 買い物終わってから気付いたけど、散歩の帰りにスーパーに寄った方が良いんだよな。


 俺は自転車を公園の駐輪場に止めながらそう思い、若干の後悔とフランスパンがはみ出たマイバッグを持ちながら広い公園の散歩を始める。


 自転車にマイバッグを置いていたら盗まれるかもしれないと思って持って来たけど、散歩するのには邪魔だなコレ。


 そんな自分の計画性のなさに呆れながら、15分程歩いているといつの間にか公園の奥の方まで来ていた。


「森の近くに来るつもりは無かったんだけどな〜」


 公園の奥にある森は木々が赤く色付き、透き通っていた。普段の暗くどんよりした森とは全く雰囲気が異なる。


 少しだけ入ってみようかな?


 マイバッグを中に虫が入らないように持ちながら俺は道なき道を歩く。



 森に引き込まれるように、ゆっくりとした足取りで。



 歩いていると目に写る木の種類は少しずつ変わっていき、やがて全ての木が俺の知らない木になった。


「空気が若干変わった……?」


 さっきからナニカが俺の体の中に溜まっていっている様な感じがする。


 だが、そんな些細なことは気にしないと言わんばかりに俺の身体は森の奥へと進もうとする。


 だんだん身体は軽くなり進むペースも早くなった。

 俺は森の奥へ行きたい、いや行かなければならない。


 もっと奥へ、更に奥へ、自分の力が尽きるまで……











「あぁ、もうダメだ疲れた」


 これ以上は歩けない。そんなことを思う場所まで歩いて来た。近くにあった岩に腰掛け休憩する。


「無意識に歩いて来たけど、ここは一体どこなんだ?」


 ここまで来てようやく、自分が異常な程歩いて来たことに気付いた。どの方向から来たかも分からない。


「もしかして遭難?」


 俺の周りには紅葉した木々が立ち並んでいて、目印になりそうなものは1つもない。


 木の種類も俺が知らないモノばかりだ……まぁ、元から木の種類なんてほとんど知らないんだが。

 スマホで地図でも見れば帰れるだろ。


「スマホはどこかなーっと」


 ズボンのポケットを触りマイバッグの中を見る。

 ここで俺は自分の致命的なミスに気付いた。


「マズい……スマホが無い」


 家に忘れてきたのか……?

 こんなときどうすればいい?

 大声で叫ぶ?


「だれかー!!!誰かいませんか!!!」


 焦った俺の声だけが、この森に響いた。


 返事は……ない。


 頭の中が真っ白になり、考えることもやめてしまった。











 あれから、どれくらいの時間が経っただろうか。

 俺は休憩を始めた時から動いていない。


「このまま、飢えて死ぬのか……?」


 中身の入ったマイバッグを抱えながらそう呟いた。太陽はまだ沈んでいない……というか、太陽はあまり動いていない。


 あれ?もしかしてあんまり時間経ってなかったり……するのか?

 家を出たのが15時半くらいだったよな。

 スーパーで20分くらい買い物をしてたから……公園についたのは16時くらいか?


「だとすると、今は遅くても18時くらいか?」


 案外すぐに帰れたりするのかもしれない。


 そう思い俺は立ち上がった。ついでに下がっていたテンションも少し上がった。そこで再度周りを見渡す。


「まずは状況確認からだ」


 現在時刻が18時くらいだとすると、16時に公園に着いた俺は2時間程かけてここに来たのだろう。

 ここでどれだけボーっとしていたかはわからないが、太陽がそこまで動いてないことから大体30分くらいと仮定する。


「なら、3時間くらい歩けば帰れるんじゃないか?」


 よし、3時間くらいで帰れる距離だと思うことにしよう。

 あとは来た方向がわかれば帰れるんだが……。


「足跡は……?」


 自分の足跡を探そうと地面を見ると、落ち葉で覆われていてとても足跡が付くとは思えない。落ち葉に足跡が付いていたとしても風で飛ばされているだろう。


 どうすれば帰る方向がわかるんだ……。

 …………。

 なんだか頭がうまく回らないな…。


「水でも飲もう」


 水はどこにあったっけ?


 水を探すためにマイバッグの中を見る。


 あ、そういえばスーパーで食材を買ったんだった。


「良かった。これで食べ物には困らないな」


 先にスーパーに行っておいて良かった!


 しかし、マイバッグの中に水は無い。


 川を探すしかないか。今日中には帰れなさそうだ。

 取りあえずこの岩に戻れるように太陽の方へ歩こう、戻る時は太陽を背にして歩けばいいし。


 俺は太陽の方へ、川を探しに歩き始めた。











 体感時間で15分くらい川を探したんだが……。


「果たしてこの川の水は飲める……か?」


 川を見つけることはできた。川の中で泳いでいる魚がはっきりと見える。しかし、そのまま飲んでもいいのかわからない。


「川の水をそのまま飲むと腹を壊すって聞いたことあるんだよなぁ」


 俺の今の持ち物の中で濾過(ろか)出来そうな物はない。


 そのまま飲むのは最終手段としよう。


 俺がマイバッグを地面に置き、川の側でどうやって水を飲もうかと考えている時。俺以外には川を探す時に見た妙に角が立派な鹿くらいしか動物がいなかったこの森に、別の動物が姿を現した。


 その動物は二足歩行で歩き、身長は俺の腰くらいまでしかなく体表は緑色で、醜悪な顔を持っていた。


 その動物の名は……


「ゴブリン……?」


 そう、異世界ファンタジーの定番キャラとしてよく出てくる、あの「ゴブリン」だった。




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